十の段 菰野の馬公子さん
ご
しかし、
晩ご飯の後、そこらへんのくわしい
(あれ? オレは、土方家に
そう
「ワシの話はこれぐらいでいいかな。それで、ここからが
「え⁉ そ、そうなのか?」
おどろいた義苗さまが南川先生を見ると、南川先生はコクリとうなずきました。
「義苗どのが大人になる前に、菰野の領地がどんなところか、民たちがどんな生活をしているのか、その目で見ておいてほしかったんだ。
子供は、空に浮かぶ雲が
だから、子供の今のうちに、自分の領地を自分の目で見て、自分はどんな殿さまになりたいかじっくりと考えてほしいとワシは願っているんだ」
馬公子さまが
「少年老い……?」
「人間は、若い
子供でいられる時間なんて、長い人生の中でほんの
「そうか……。そういうことだったのか。伯父上の言う通り、菰野で色んなことを勉強するよ」
「その
南川先生が顔を
やっぱり、
「どうして、老中さまが菰野藩みたいな小大名を
義苗さまが首をかしげると、馬公子さまが「それはな……」と
「え? 何それ、めっちゃ
「迷惑な話だが、
「どんな対策ですか?」
「それは、いずれわかることさ」
馬公子さまはそう言うと、イタズラっぽい笑みを浮かべるのでした。
翌日。義苗さまは、馬公子さまの
ボディーガードのはずのピョンピョン
「今回はお
「じゃあ、三人で見回りに行こう。義苗どの、
「はい。でも、義法伯父上……」
「ワシのことは
「ええと……馬公子さま。その
義苗さまは、馬公子さまの
馬公子さまは、昨日の
そして、裸の馬。「いや、馬はいつだって裸じゃん?」と思ったあなた。ちがいますよ、そういう意味ではありません。
馬に乗る時は、今でも馬の背中に
「この服のことか? ワシは木綿の服しか持っていないよ。ご隠居さまが
「でも、それでは菰野の
「義苗どの。自分をかっこよく見せることが、
「え?」
「とにかく、出発しよう。見回らなければいけない村がたくさんあるんだ」
「は、はあ……」
というわけで、義苗さま、馬公子さま、ミヤは領地の見回りに出かけたのでござる。
義苗さまは、馬公子さまに背中をあずけ、馬の二人乗りで
(
早くも
「馬公子さま。昨日も
義苗さまは、1メートルほどの高さの青々とした植物を
「あれはマコモだ。川の
「え⁉ そんなにでかくなるの⁉ うっとうしいから切っちゃえばいいのに……」
「村の
「へぇー、そうなんだ」
「それに、菰野は大昔からマコモがたくさん生えていた土地だから、コモノという地名になったそうだ。この土地の名前の
マコモがいっぱいの野だからコモノ、というわけですな。
(菰野の殿さまなのに、オレは菰野の名前の由来さえ知らなかったんだなぁ……)
マコモをうっとうしいと言ってしまい、義苗さまはちょっとしょんぼりしました。
「ああ、暑い。今日はすごく暑いわぁ~」
しばらく行くと、
うつむいて歩いているので、義苗さまご一行にまだ気づいていないようです。
「そこのお
ミヤが
しかし、馬公子さまは「よいよい。笠はとるな。荷物もおろすな」と止めたのでござる。
「ワシもこの暑さじゃ笠をとりたくない。暑いのは
「あっ、なんや。馬公子さんやったんか。本当に今日は暑いなぁ~」
お百姓さんは、相手が馬公子さまだったと知ると、友達と会話するように親しげな
ちょっと、ちょっと! さすがにタメ口はまずいのでは……⁉
「そうだな、暑くてかなわないな。あははは」
……馬公子さま、ぜんぜん気にしていないでござる。
どんだけ
(ご……ご隠居さまとは、ぜんぜんちがう……)
「馬公子さまのあだ名の由来がわかったです。こうやって馬に乗って領地を見て回り、お百姓さんたちからお友達みたいに親しまれているから、そう呼ばれているのですね」
ミヤがそう言うと、馬公子さまはちょっと
馬公子とは、
それに、馬公子さまも南川先生とはまたちがったイケメンですしね。
ほら、テレビで農業とかやっているあのアイドルみたいにたくましい感じの……。
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