六の段 老中さまはマジメ風紀委員長
というわけで、将軍さまがいらっしゃる
義苗さまたちが江戸を
老中とは、将軍さまの政治を
この老中たちのリーダーが、松平定信さまだったのです。
定信さまは、
「老中のみなさん。今日は会議のために集まってくださり、ありがとうございます。キビキビと話し合い、キビキビと決定し、キビキビと
定信さまはキビキビとした
定信さまの
「今日は、何を
老中の一人がそうたずねると、定信さまはムッとした顔になって、「
「これは失礼しました。それで、今日は何の会議でしょうか」
「『幕府が
「やっぱり、何か禁止するんかーーーい‼」
思わずツッコミを入れてしまう老中のみなさん。息が合っていて、みなさん仲良しのようですなぁ。
「8代将軍・吉宗さまの時代のような
「定信どの。まさか
「あんな風紀が乱れる
「ぎゃー! やめてー! お願いだから、それだけはやめてーっ‼」
「うるさいでござるぞ、
定信さまはそう言って
「……では、みなさん。『幕府が認めた学問以外は勉強しちゃダメ!』という禁止令を出すことに、『いいね!』と思うかたは手を
そう言い、シュピーンと手を
老中のみなさんは、しばらくの間、ごにょごにょと話し合っていましたが、定信さまが「キビキビと決めましょう! キビキビと!」とせかすと、全員が手を挙げました。
「全員から『いいね!』をいただいたので、この禁止令は
定信さまはキビキビと会議を終わらせると、キビキビと席をたち、将軍さまがいらっしゃる部屋へとキビキビと歩いて行ったのでござる。
「……というわけで、老中たちの会議の結果、『幕府が認めた学問以外は勉強しちゃダメ!』という禁止令を出そうということになりました。来月の4月には正式発表したいと思いますので、ご
定信さまが将軍家斉さまにそう報告すると、
「だって、あと数日で4月じゃん。色々と手続きとかあってめんどーだし、5月でいいよ」
「で、ですが、
「めんどーごとは、
(チッ……。
定信さまは、相手は将軍なので
11代将軍、徳川家斉さま。今年で18歳。今の年齢でいうと16~17歳なので、高校生将軍でござる。見ての通り、政治にはあまり
「話はこれで終わり?
家斉さまがそう言って席を立ちかけると、定信さまが「お待ちくだされ!」と止めました。
「なんだよぉ~。オレは政治の話なんて嫌いなんだ。やりたいことがあるのなら、他の老中たちと話し合って勝手に決めておけよ」
「そうはいきません。あなたさまは将軍さまなのですから。
……今日は、幕府が出した
倹約令とは、お金のムダづかいをやめて
「倹約、倹約とうるさいヤツだなぁ~。倹約なんてめんどーだからしなくていいよ」
「幕府の
「……わ、わかったよ。そんなマジで怒るなってば。その不届き者とやらを叱ればいいんだろう? 早くそいつをここへ連れて来い」
家斉さまが
「上様、ご
あちゃー、やっぱり「ぜいたく
「おー、土方か。久しぶりだなぁ。……で、
「上様。将軍になってからもう3年たつのですから、そろそろ全国の大名たちの顔と名前を覚えてください。この者は、
「一万一千石ぅ? そんなザコ大名のことなんていちいち覚えていられるかよ」
ピキピキ……。ピキピキ……。
ザコ呼ばわりされた雄年さま、怒りのあまり頭の
ご、ご隠居さま! 相手は将軍さまだから、
「それで、何だっけ? こいつが倹約令を無視してぜいたくばかりしているから叱れっていう話だったよな。おい、土方。おまえ、そんなにぜーたくしているのか?」
「そんなおおげさなぜいたくはしていません。
毎日
服は金ピカの
その
「ぐ、ぐぬぬぅ~……。一万一千石のザコのくせして、なんちゅーうらやましい生活をしているのだ」
家斉さまは将軍さまですが、口やかましい定信さまが「キビキビと早起きして、キビキビとお仕事をしてください!」とうるさいので、そんなぐーたらな生活はできていないご様子です。
「上様。うらやましがっている
「え? 大相撲⁉ うわー、いいな、いいな! オレも見たい!」
「だ・か・ら‼ うらやましがらない‼」
定信さまは思わず
「かーかっかっかっかっ!」
「何がおかしいのだ、土方どの!」
「これは失礼しました、定信さま。しかし、定信さまは少しマジメすぎるのではありませんか? そのあまりにも
「何だと? 私の政治よりも、あの田沼のじじいの政治のほうが
今、江戸幕府の政治の
菰野藩の土方家は、この田沼意次さまと仲良しで、雄年さまは田沼家からお
しかし、田沼さまの政治は色々あって失敗し、老中をクビ。
菰野藩にとって最悪だったのは、そんな仲が良かった田沼さまのことを今の老中・定信さまは大っ嫌いだったのでござる。田沼さまが亡くなった後も「田沼は人からワイロをとっていた
敵の味方は、当然、敵!
という理由で、菰野藩も定信さまに目をつけられるようになりました。だから、こうやってわざわざ江戸城に呼び出して叱りつけようとしているのです。
「菰野藩は、
「そんなつもりはありません。私は、ただ、ケチケチな倹約令が
「お、おのれ! 幕府の政治に口出しするとは、不届き者め! ……上様も何か言ってやってください!」
「そうだ、そうだ~。土方の言うとおりだ~。倹約令なんてくそくらえ~」
「上様⁉ どっちの味方をしているのですか!」
うわぁ……。何だかもう、ぐだぐだでござるなぁ……。
雄年さまは、勝ち
「上様。お話はもうおしまいでしょうか。だったら、帰ってもいいですか?」
「うん。いいよぉ~」
家斉さまがかる~いノリで答えると、雄年さまは
定信さま、まんまと雄年さまに逃げられましたな。こっぴどく叱ってやろうとしていたのに……。
「くそっ! くそっ! 菰野藩は小さな大名のくせして、なぜ、私に
「なんでだろう~♪ なんでだろう~♪ なんでだなんでだろう~♪」
「上様! 変てこな歌を歌って
定信さまは、完全に激おこのご様子。菰野藩に激おこということは、お殿さまである義苗さまにもその憎しみは向けられることでしょう。
なーんにも
その日の夜。江戸城にある老中の仕事部屋。
「おのれ、菰野藩め。私の清く美しい政治を
「しかし、あの隠居は私の弱みをにぎっている。私が
「お呼びでございましょうか」
仕事部屋に、音もなく、黒い
「おまえに大事な
定信さまは
疾風の一郎は、定信さまが25歳で
「ははっ。なんなりとご命令ください。この疾風の一郎、早寝・早起き・
「うむ、
「はい」
「それで、おまえの任務だが……。やり方はおまえに
「その程度、
「あと、菰野藩に何か弱みがないかも
「ははっ! では、早速、
疾風の一郎はそう言うと、フッ……と姿を消しました。
「くっくっくっ……。菰野藩よ、わが
あ、あわわ……。やっぱり、こういうことになっちゃいましたか。
しかも、今、義苗さまたちも菰野に向かっています。疾風の一郎に、義苗さまが江戸を勝手に
義苗さま、ピーンチ‼
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます