五の段 脱出!
「それで、ミヤ。
「そんなの
「ぜんぜんこっそりしてないからな⁉」
「むぅ~。ド
「頼むから、ちゃんとした
「ぶっちゃけ、ここの屋敷の
「え? そうなのか? きっと、ご
「南川先生のおっしゃる通りです。屋敷に殿さまがいないとばれたら、ご隠居さまがすぐに
「それは
「ご心配にはおよびません。
「どんな作戦だ?」
「からくり人形の
「からくり人形ぉ~? そんなもの、どこにあるんだよ」
「もちろん、私が作るのですよ。半日ほどお待ちくださいです」
うう~む。おおざっぱな性格のミヤが、
その日の深夜。いずこかへと消えていたミヤが義苗さまの部屋に
「ちゃららっちゃらぁ~ん! からくり殿さまとからくり南川先生ぇ~!」
ミヤが部屋に持ちこんだのは、義苗さまそっくりの
「ええっ、こんな短時間で本当に作ったのか⁉ おまえ、見かけによらず
「むっ。私のことを
(このくノ一、優秀なのかそうじゃないのか、いまいちよくわからない……)
ミヤはプンプン怒りながらも、義苗さまそっくりの人形の背中にあるゼンマイを回しました。すると、筆を持った右手がカチャカチャと動き出したのござる。
おお! 遠目に見たら、机に
「
「心配ご無用です、にんにん。ちゃーんとゼンマイを回してくれる仲間を用意しておきましたです」
「仲間? 南川先生とミヤ
「人ではありませんです。動物たちです」
ミヤはニッコリ笑ってそう言うと、ぴゅうーと
すると、なんと義苗さまの部屋に猫と犬とオウムが入って来たのです。猫はとっても可愛い
「ご隠居さまたちが飼っている動物たちじゃないか! なんでここにいるんだ⁉」
「私、動物に好かれやすい
どうやって手なずけたのかは、そこらへんのことはミヤがあまりくわしく語ってくれなかったので不明でござる。
「ハナちゃん、又三郎くん、八兵衛くん。手はず通りにお願いしますです」
ミヤがそう言うと、猫のハナと犬の又三郎が前足で器用にゼンマイを回し、二体の人形はカタカタと動きだしました。
そして、オウムの八兵衛は、
『せんせー、ここがわかりません! せんせー、ここがわかりません!』
『どれどれ、せんせーにみせてください! どれどれ、せんせーにみせてください!』
と、しゃべったのです。
オウムは人間みたいにしゃべることができる鳥ですからね。え? それぐらい知ってる? スミマセン……。
「これで、ご隠居さまは、殿さまと南川先生がお部屋で勉強していると思うはずです。10日は気づかれないでしょう。えっへん」
「そうかなぁ? 半日ぐらいで気づかれないか?」
義苗さまは首をかしげましたが、南川先生が「ほんのちょっと時間
「あと
「よし……。わが
「おおーーーっ‼」
「殿さま、ミヤどの。気合いが入っているのは花まるですが、もう少し声を落としましょうね? 屋敷のみなさんが起きちゃいますよ?」
「……出立だぁー(小声)」
「……おおー(小声)」
かくして、義苗さまの初めての旅が始まったのでござる!
コケコッコー!
町のあちこちでニワトリたちが鳴き出し、新しい朝がやって来ました。
「若殿さま。朝ご飯をお持ちしました。……あれ? こんな朝早くからお勉強をなさっているのですか?」
女中が義苗さまの部屋に入ると、机に向かって勉強している義苗さまと勉強を教えている南川先生の
(あら、まあ。熱心に何かを書いていらっしゃるわ。漢字のお勉強かしら)
義苗さま(の人形)がカタカタと右手を動かしているのを見て、女中は感心しました。
部屋に近づく女中の足音を
『ごはんは、そこにおいておけ! ごはんは、そこにおいておけ!』
『うにゃーん』
『わおーん』
『メシだ、メシだ!』
女中がいなくなると、ハナと又三郎、八兵衛は屏風のかげから出てきて、朝ご飯をがつがつと食べ始めました。
なるほど。運ばれてくるご飯は動物たちが食べてくれるので、「殿さまがご飯をぜんぜん食べない!」と
『…………』
うん? オウムの八兵衛が
『そこの、物語の語り手くん。ちょっといいかい?』
え⁉ あっ、はい……。
『
そ、そうですね。幕府の最大の
『しっかりしたまえよ、物語の語り手くん。義苗さまの旅のシーンや菰野藩の
ご、ごめんなさい……。
『さあ、次のエピソードにいきたまえ。我々は、活躍シーンをカットされても、自分たちの
はい。わかりました……。
で、では、次のエピソードへゴーでござる‼
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