第50話 以心伝心

ゴッド牧瀬(山手) VS そらき(撫子)。

そんな最大で滅茶苦茶な俺を奪い合うバトルが、ラノベを巻き込んで始まろうとしていた。

山手さんは本気で俺をゴッド牧瀬とくっ付ける気で居る様でこのバトルが万が一ゴッド牧瀬側が勝利した場合、俺は恐らくゴッド牧瀬と付き合う事になると思われる。

このバトルでは俺は一切、手出しをしてはいけないと、山手さんが話した。

脅し文句に俺は静かに見守るしか無い。

自宅に帰って来てから静かに俺はこれまでの事を考えていた。


プルルルル


「.....ゲッ」


俺はその画面を見て、眉を顰めた。

相手は、ミタちゃんの父親、潾二郎さんである。

うわ、面倒クセェ!


「.....もしもし?」


『もしもしとは?かなり落ち着いているな。君は。どれだけ重要な事になっているか分かっているのか』


「ですね.....」


『私に黙ってこの様な展開にするとはいい度胸だ。私の娘も当然、立候補したからな。覚悟するが良いぞ。最大のショーを見る事になる』


面倒クセェ!

俺は苦笑しながら、ため息を吐いた。

ミタちゃんまで参加する.....あれ?

そう言えばミタちゃんのラノベのイラストレーターって誰だ?

何時もラノベには???で書かれているよな?

俺はその様に思いながら、連絡切って考えていると。


プルルルル


ゴッド牧瀬からスマホに連絡があった。

俺は見開いて、出る。


「ゴッド牧瀬.....?はい」


『ちょっと!誰よコイツ!』


「.....誰って何だよ?」


『コイツよ!この私と同じ様な女!アンタの知り合いだって言うから連絡してるんだけど!』


何だそりゃ。

俺はゴッド牧瀬ハウスを見た。

すると、暑いから開けていた窓から人影が。

俺は驚愕して、尻餅を着いた。

コエェ!


「.....」


「.....な、何だよお前!?」


思わず窓に向かって叫んだ。

ドール人形!?

全く無表情の、黒髪のボブの女の子が立っていた。

その顔立ちは所謂、清楚。

だが、童顔混じりも有って僅かながらに幼さも有る。

中学生ぐらいか。

で、とても美しい感じだが、これまで見た女の子の中で最も表情が無い!

何と言うか、目にハイライトが無い!

所謂、ヤンデレか死神の様だ!


「.....」


「.....いや、何か言えよ!?」


「.....」


本当に人間か?コイツ。

俺は思っていると。

あ!こんな所に居た!

と言ってゴッド牧瀬がその部屋に飛び込んで来た。

その女の子を指差しながら、話す。


「コイツよ!怖いわ!いつの間にか部屋に居たし!」


いや、鍵掛けろよ。

俺はその様に思いながら、顔を引き攣らせた。

でも確かにな。

これではいつの間にか部屋に居てもおかしく無い。

マジで怖い!

思っていると、女の子の目だけが動いて。

指示する様に話した。


「.....それ貸して」


「な!?誰に命令.....」


「.....貸すの。貸さないの」


それだけ無表情で告げながら女の子はゴッド牧瀬を威圧する。

ゴッド牧瀬はしぶしぶ、スマホをその女の子に渡した。

すると、それを受け取って俺に話してくる。


『私の名前は、安岐町ノラ。ノラでいい。私は御霊のイラストレーター。.....必ず御霊の為に貴方を奪う』


必要な言葉は告げた、後は用は無い。

その様な感じで、振り返って去って行くノラという少女。

俺は見開きながら、ノラを見る。

ゴッド牧瀬も衝撃的な感じで見開いていたが、直ぐに反応した。


「ちょっとアンタ!それでいて何で私の家に来たのよ!それぐらい話しなさい!もしかして敵の領域を見にきたの!?」


「.....」


それすら無言で去って行った。

ゴッド牧瀬は電話を切って、追い掛けて行く。

成る程な、今の少女なら。

確かにミタちゃんには丁度良いかも知れないな。

その様に、思いながら俺は。

冷や汗をかいた。


「俺はあくまで、そら、守らなくちゃいけない。だから.....」


悠木そら、を守る。

それが俺の最大の使命だから。

だけど、あんな敵に立ち向かわなければいけないのか俺は?

倒せるのか?本当に。


バシンバシンバシン!


「.....」


音に、シャッと羊のカーテンを開ける。

そして窓を開けると。

目の前に、相変わらずのジェイソンマスクを着けた、そら、が。

俺はそんな、そら、を見ながら。

頭を下げた。


「.....すまん。変な勝負事になっちまった」


「.....別に気にはして無い。だけど.....勝つ様に祈って。私に」


「.....勿論だ。俺はお前が勝つ様に祈るよ」


「私は雄大が好きだから。.....大好きだから.....お願い」


そんな心の叫び。

でも、直接、そんな事を言われると小っ恥ずかしい。

だけど、俺も.....ん?俺も?

俺もってどういう事だ?

まさか、もしかして。


「.....俺はお前の事が好きなのか?」


「.....へ?」


衝撃的な言葉だったのかボッと音がした。

茹で上がったタコの様に目をパチクリする、そら。

え、俺マジ?

俺も、そら、の事が好きなのか!?


「.....」


「.....」


俺は静かに俯いた。

まさかの衝撃的な事実に対応しきれない。

って言うか、今まで気付かなかったのは.....何故に!?


「.....が、頑張る!雄大!私!」


「.....お、おう!」


その様にしか反応が出来なかった。

初々しいバカップルの様に俺達は俯く。

なんてこったい。

俺という人間は!

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