第49話 ゴッド牧瀬の為に

「アンタね!男だって言ってんでしょうが!コイツは!なんて事すんのよ!」


「うっさい。んで、要件は何だ。いきなり扉ぶっ壊しやがって」


「要件!?そんな事は今は良いわ!アンタの事よ!」


喧嘩をするな。

面倒臭いなと思いつつ、苦笑いを浮かべる俺。

それから、タンクトップを着ている山手さんを見る。

すると、煙を出しながら山手さんが俺をみてきた。


「.....何コイツ、お前の彼氏?」


「違うわ。雄大よ」


「.....は?雄大?.....知り合いか。まぁ良いや。うん、良さげな性格。よし」


「はい?」


俺にタバコで指差して来て。

そして、山手さんは俺に言ってきた。

ニヤッと笑って、だ。


「お前、俺の彼氏になってもらおう」


「.....ハァ!?」


唐突だな!

ゴッド牧瀬が立ち上がる。

俺も驚愕した。


「この場に来た要件はだいたい分かるぞゴッド牧瀬。お前はどうせ、俺をお前の専属イラストレーターに戻したいんだろ?.....えっとな、コイツを俺の彼氏にする。それでお前の条件はそれで飲んでやる」


「「!!!!?」」


「嫌ならまぁ結構だけどな。お前には別のイラストレーターが就く事になるだろうな。せいぜい頑張るこった」


「.....何て事.....」


何だ何だ!まさかの展開だな!

俺はツッコミを入れながら苦笑いをして居ると。

電話が掛かってきた。

画面を見と、撫子さんだ。


「.....撫子さん?はい?お久しぶりです」


『おー。雄大。久々だな。ケホッ』


撫子さんは咳をしている。

うん?どうしたんだろうか。


「.....どうしたんすか?調子悪そうな.....」


『ああ、問題は無いけど、ケホッ。頼みがあってな』


俺はゴッド牧瀬に目配せして外に出た。

室内で掛けたら迷惑だろうし。

いくら汚い部屋でも、だ。

俺はその様に思っていると背後から物音がした。



『私事で申し訳無いんだけど、オレっちな、取り敢えず体調が悪くて。雄大、もし良かったら、そら、に宜しく言っといてくれないか。電話が繋がらないんだ。多分真剣に小説でも書いてんのか知らんが。ケホッ』


「.....マジすか?お大事に。.....そら、に言っときます」


『サンキュー。.....ん?そう言えば今何処に居るんだ?』


ガシッ


なんと突然にスマホを奪われた。

俺は驚愕する。

後ろには俺よりも身長が5センチ程、高い山手さんが立っていた。

ニヤニヤしながら、だ。


「よお。撫子。久しぶりだな」


『ん!?その声.....山手か?』


「そうです。コイツの彼女になった山手ですが何か?」


『..........ハァ!?何言ってんだテメェ!?』


何を言ってんだ!?

おいおいおい!話がややこしくなって来た!

俺はスマホを取り返そうと、暴れる。

のだが、俺よりも身長が高くて取り返せない。

クソッタレ!


「アッハッハ!まさか撫子!お前がコイツと知り合いだとはな。まぁ、それだけ伝えたかったんだ。じゃあな」


その様に話してスマホを投げ渡してくる、山手さん。

俺は驚愕しながら、受け取り。

そして直ぐに話す。


「いや、冗談っすからね!?」


『山手だと.....許さん!そら、の為にも!風邪で寝込んでいる場合じゃねぇ!』


なで.....ああ駄目だ!やる気モードになってやがる!

面倒クセェな!

思っていると、ゴッド牧瀬がやって来た。

俺はそんなゴッド牧瀬に話す。


「.....なんかややこしい事に.....」


「.....」


ゴッド牧瀬は顎に手を添えている。

悩んでいるのだろう。

俺はゴッド牧瀬を見つめる。

暫くすると、ゴッド牧瀬は、うん、と言って言い出した。


「.....アンタは渡せない。そら、の為にもね。だから、この事は無かった事にするわ」


「え?いや、でも、ちょっと待てよ。お前の作品が.....」


「.....そんな事はどうでも良いわ。今はね。後で頭でも下げるとして」


俺の様子を流し目にゴッド牧瀬は奥にいる山手に向く。

ニヤニヤしている、山手に真剣な顔付きをした。


「.....山手。コイツの事は諦めて頂戴。理由は言えないんだけど」


「ああ、其奴の事か。今諦めたよ?」


「.....は?」


アンタ、何でや。

まさかの言葉、ってか、え?

俺達は驚愕しながら思っていると、山手さんは俺を指差してきた。

タバコを咥えてから、だ。


「残念だけどな。当初は確かに面白いガキで狙ってたが、状況が変わった。ソイツの事はゴッド牧瀬。お前好きなんだろ?んで、撫子も多分。.....いや、撫子は恋をするタイプじゃ無いか。撫子の周りかな?多分」


何だコイツは。

なんでそんなに予想を当てているのだ。

俺は驚愕する。

ゴッド牧瀬はボッと赤面していた。


「私は長い間の観察力で人の僅かな様子変化も捉えるのが得意なんだ。って言うか、あの感じだと誰でも捉えられると思うけど.....ゴッド牧瀬がお前の事を好きだとは予想外だった。ゴッド牧瀬は友人だからな。絆が大事だ。だから俺は引こうとしたんだが、まさか他にもお前を好きになっている奴が居るとは。許しがたいので、バトる事にした」


この人、マジで色々と奇想天外だな!

俺はその様に思いながら居ると。

ゴッド牧瀬が赤面で慌てた。


「ちょ、ちょっと待って。本気?」


「勿論本気だが。そもそも気に食わないのは倒す主義だからな。俺は」


「.....マジか.....よ。ってか、何の勝負をする気ですか?」


「勿論、ラノベだ」


ニヤッと笑う、山手さん。

いや、ラノベ.....って、マジかよ。

なんてこった。

俺はその様に思いながら、身構えた。

何となく、だ。

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