第45話 真実
その日は過ぎて。
あっという間に当日になった。
俺と真、そら、は高級マンションの前に立つ。
そして見上げていた。
「入るか」
「.....うん、でも、本当に入れるの?」
靡く髪の毛を抑えながら。
そら、は聞いてくる。
そんな横では真は緊張して、立っていた。
俺はその様子を見つつ、頷く。
「一応、白虎がなんとかしてくれた。子供の頼みって事なのか知らんが、白虎の親父にも10分間だけだが会えるそうだ。今からが勝負だ」
「.....またライトノベルで勝負すんのか?」
「いや、アホか。真。今回はマジだ。そういうのは無しだ」
「.....そうか。うーん。だとするなら腹が痛い.....」
ゴッド牧瀬。
俺達の仲間で、そして俺を好きだと言ってくれた女の子。
待ってろ、今からが勝負だ。
「.....行くぞ」
「.....うーん、トイレ.....」
「は!?」
唐突なその声に真のせいで。
コンビニのトイレに向かう羽目になった。
気がそがれるな!
☆
「.....」
「.....」
「.....」
冷や汗が出る。
沈黙に沈黙だ、圧力が凄まじい。
目の前にはカップとソーサーの紅茶。
そして、更に前には。
カップがぶち割れそうな眼光で俺達を見つめてくる、ヒタリ、会長。
白髪をオールバックで固めた、白い髭が長い、牧瀬正蔵と呼ばれる人物が鷹の様な鋭い目付きで袴を身に纏って居て。
そして左に今にも泣きそうなゴッド牧瀬が、右に青龍がニコニコして居た。
俺に対しては更に圧力を加えてやがる。
この野郎と思っていると。
正蔵さんの髭の下の口がゆっくりと開いた。
「忙しいのだが、一体、何の用かね。君達は」
「.....率直に言う。娘さんの結婚式(擬)を破棄してほしい」
「.....馬鹿な事を。帰らせてもらうぞ。今は私は忙しいのだ」
立ち上がる、正蔵さん。
俺は正蔵さんを率直に見つめる。
慌てる、そら、真は俺を見てきた。
大丈夫、きっと動きを止める。
「.....擬きとは何だ」
「.....擬きは擬きだろ」
足が止まった。
ゴッド牧瀬が驚愕しながら、俺を見てくる。
鋭い眼光で俺を見つめてくる、正蔵さん。
やはりな。
擬きだったか。
潾二郎さんからの情報は正しい様だ。
「.....アンタ、本当は娘を結婚させるつもりは無いんだろ?」
「.....何を言っているのだ小童。ふざけた事を抜かすな」
「間違ってないね。これは正解だ。擬きなんだろ?」
「.....」
静かに俺を見据えてくる、正蔵。
俺はその目を受けながら。
苦笑する。
すると、真が立ち上がろうとした。
それを俺は止める。
「真。落ち着け、大丈夫だ」
「何が大丈夫なんだ!?雄大!」
この正蔵さんの事だ。
昨日の事だが、潾二郎さんはとあるものを調べたそうだ。
それで教えてくれた。
「.....アンタ.....猛烈で強烈なゴッド牧瀬ファンだってな」
「「「は!?」」」
え?と全てが固まる。
流石に驚愕だろ?
俺だって初め聞いた時は驚愕だったよ。
だが、実際の所この人。
ゴッド牧瀬に対して、ファンレターを最初に送った張本人だそうだ。
どっから得たか知らんが相変わらず化け物みたいな情報取得だな。
「貴様が何を話しているのかまるで分からいないのだが?」
「推理するというか、これじゃ全ての暴露になっちまうけどな。アンタ、本当はゴッド牧瀬の小説でファンで、これ以上ファンが増えるのに妬いてそれで自分一人の為に大切な娘の小説を書いてほしい。その為にゴッド牧瀬を取り返したんだろ?あと、婚約の話はでっち上げだろ?娘を取り返せない様にする為のな。まぁそれで何で白虎が不憫なのか分からんが」
「お、お父様!?それって本当に!?」
「.....」
青龍が。
ゴッド牧瀬が。
白虎が驚愕する。
正蔵さんは俺を見据えて、そして威嚇してくる。
なかなか厄介だ、胃が痛い!
「.....貴様。あまり好き勝手に言っておると殺すぞ。社会的にも戻れん程にな」
「いや、好き勝手じゃ無い。良いか、一応、証拠も有る」
「.....!?」
正蔵さんの顔がその言葉で若干乱れた。
俺はその証拠とやらを取り出そうとする。
のだが、正蔵さんが駆け出して。
「.....もう良い!貴様と話していると頭がおかしくなる。殺す!」
薙刀を構えやがった。
モノホンの様で、俺は驚愕する。
そして、薙刀を振りかざそうとした次の瞬間。
「止めて!お父様!」
ゴッド牧瀬が俺の前に立ちはだかりそして思いっきりに手を広げた。
俺は驚愕する。
正蔵さんの薙刀を振り翳す手が止まった。
「わ、私は.....そんな風にお父様が考えてくれていたとは思いませんでした.....でっち上げなのですか?本当に?」
「.....」
正蔵さんは何か、大きなため息を吐いて。
俺を睨んでそして話し出した。
その事に、俺達も身構える動きを止める。
「.....証拠まで出されようとするなら仕方が無い.....不本意だが」
え?
冗談かと思ったらマジかよ?
って事はこの人、娘ラブって事だよな?
つーか、潾二郎さんの凄さを改めて知ったわ。
俺は冷や汗を拭いながらその様に思った。
「.....そうだ。七星の結婚の話はでっち上げだ。私は七星.....お前が遠くに行ってしまって私は不安だったのだ。母さんが癌で亡くなっているから、な。それだからお前の小説を私だけに書いて欲しかったのだ。受賞した時がどれだけ嬉しかったか.....」
「.....えっと、いや、マジで?」
真が呟いた。
そら、も信じられないという様な目をする。
俺もちょっと驚愕ですわ。
「お、お父様.....」
ゴッド牧瀬はその様に複雑そうに言う。
って言うか、ちょっと待てよ。
まだ問題は解決してない。
白虎の件とか。
「えっと、じゃあ、青龍と白虎の格差はどういう事だ?」
「清流と白虎の格差の件?何の話だ」
「.....え?」
その時だ。
ハッとして、青龍を正蔵さんが見た。
そして、睨む。
「青龍.....また白虎を苛めていたのか?」
「馬鹿は嫌いです。お父様」
「.....あれ程、仲良くしろと.....貴様という奴は.....」
ちょっと待って。
どういう事だ。
俺はその様に思っていると、正蔵さんが話し出した。
「.....実の所、青龍が白虎を嫌っておるのだ」
「.....何だって。.....青龍。お前.....」
「.....お姉様は私のもの。だから邪魔です。.....白虎が」
「青龍!」
正蔵さんのその声に対して、睨む、青龍。
俺は静かに話した。
「.....白虎の事を大切にしてやれよ。青龍。双子だろお前ら」
「.....私はお姉ちゃんですけど、嫌です。またお姉様の事を取り合う事になりますから。御免ですね」
「.....青龍。白虎。仲良くしてよ.....」
「.....誰がこんな奴」
面倒な事だ。
だけど、何と無く分かる気がする。
何を隠そう、俺がそうだったから、だ。
葉月と仲が悪かったから、だ。
「.....青龍。お姉ちゃんは妹を守る為に先に産まれたんだ。守ってやれ」
「.....」
「.....ふんだ!姉貴なんぞ.....!親父も親父だ!クソが!」
その様に呟いて。
白虎は荒っぽく立ち上がって駆け出して行く。
俺も立ち上がった。
「白虎!」
俺は直ぐに追った。
そして、白虎を追い掛ける。
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