第40話 東京へ
俺は人助けが嫌いだ。
何故なら、人助けをしたら全てを失う事を知ったから、だ。
だから俺は決して、人助けをしないと決めていた。
だが、俺の周りの女の子、友人と触れ合ってからその気持ちが変化した気がする。
そして、ゴッド牧瀬。
とても大切な仲間が、好きな事を捨てて。
それから、仲間も全てを捨てて、行ってしまった。
俺は絶対になんの相談も無しに行ってしまったゴッド牧瀬を許さない。
だけど、その、許さない前にやるべき事がある筈だ。
そう。
ゴッド牧瀬は関係無い。
一端の少女が俺に対して助けを求めている。
それだけで充分だ。
助けを求めているのに、救う手を指し伸ばすには、だ。
「本当に良いんだな?、そら。多分、相当な困難が待ち受けてるぞ」
「こんな最後は認めないよ。ゴッド牧瀬ちゃんから全ての理由を聞くまで諦めない!」
電車を乗り継ぎ、少し都会へ。
新幹線乗り場を走って切符を購入してから。
俺達は東京行きの新幹線の乗り場までやって来た。
待っている間のそら、の目は。
全てに立ち向かう、その様な絶対的な決意の目をしていた。
俺は前を見据え。静かに頷いた。
そら、も頷いて、それから、新幹線がやって来て。
車両清掃が始まった時に声が聞こえた。
まさかの人物の声だ。
「誰かを忘れてないか?」
「.....お前!?」
八坂真が目の前にニヤケ顔で腰に手を当て、旅行鞄を持ち立っていた。
俺の友達である、小太りオタク。
強い時は強く、俺を励ましてくれる、良き相手であり、有能なバカ。
のだが、そんな馬鹿な!?
この、ゴッド牧瀬を奪い返す為の場所は真には伝えてない。
一体、どういう事だ。
「お前らだけで行かせないぜ!俺だってゴッド牧瀬ちゃんの下僕だからな」
真は鈍いウインクをしながら、親指を立てて話す。
様にならない、などと言っている場合では無い。
いくら何でも今回は無理がある気がする。
ゴッド牧瀬を取り戻すという、難関ミッションだしな。
俺は真に向いて、そして、話し出した。
「お前がどういう手段で情報を手に入れたかは知らん。だけど、今回は本気でマズイからな。遊びは終わりだぞ。逃げられないかも知れないしな。お前を連れて行けない」
「そんなこたぁ分かってる。今回は俺は真剣だからな。本当に.....真剣だ。出来なかったら仕方が無い。だけど、出来ないで諦めるならもがきたいから、な。何よりもお前が苦しんでいる。それは事実だ。だから俺は助ける。サポートするよ」
「八坂君.....」
心配する、そら。
いや、本当に大丈夫なのか。
此奴まで妙な事に巻き込んで、だ
『お前はまた犠牲にするのか。人を』
そうだ。
俺はまた人を犠牲にして。
上に立つつもりか俺は。
絶対に駄目だ。
.....やっぱり真を連れてはいけない。
その様に、思っている時だった。
真がデコピンして。
そして真剣な顔付きで話し出した。
「イテェな!」
「.....雄大。お前が今、考えているお前の元友人の様にはならん。俺はお前を本当に本気で愛している」
「ちょ、は?.....何言ってんだキモイ」
ああ!?俺の精一杯の愛情表現を何だと思ってやがる!
真はその様に慌てた。
そんな真に俺達は笑って、俺は真剣な柔和な顔付きになる。
真に拳を突き立てる。
「後悔すんなよ」
「あたぼうよ」
「じゃあ、行こうか」
そして、激戦地には。
俺と、真、そら、が赴く事になった。
待ってろ、ゴッド牧瀬。
絶対にお前を救ってそして。
連れ帰る!
「待ってろ.....」
俺はその様に呟いて新幹線に乗った。
東京まで約2時間。
早く着く事を祈りながら、だ。
☆
本当にあっという間の事で直ぐに東京に着いてしまった。
所謂、屋根がドーム型の100年は経っているあの、レンガ造りの駅に、だ。
東京駅から外に出た俺は空を見上げる。
この東京の、何処かに。
ゴッド牧瀬が居る。
助けを求めている、ゴッド牧瀬が。
「雄大。住所は」
「お前.....電話越しじゃ無くなったな」
「そんな事してる暇は無いよ。友達が苦しんでいるかも知れないのに」
俺は真剣な顔付きで頷く。
そして、真を見て。
同じく頷いた。
「行くぞ」
「「おお!」」
ゴッド牧瀬。
あと少しでお前に会える。
待っていてくれよ。
もう一度お前に会う!
「銀座に住んでいるらしいからな.....」
「銀座って.....あの銀座か!?」
「嘘.....」
俺も正直、驚いたよ。
そんな金持ちだったなんてな。
ミタちゃんも相当だけど、ゴッド牧瀬の方は怪物級だ。
父親も某有名な電気会社、会長らしいし。
財閥の令嬢なら確かに一軒家はワンキャッシュで買えるわな。
納得だよ。
「銀座なんかどうだって良い。苦しんでいる女の子が居る。それを見過ごす事は出来ない」
「全くだな。本当に。趣味否定して苦しめる父親もどうかと思うわ。頭にくる」
「ゴッド牧瀬ちゃんが可哀想だから」
バス乗り場に行って。
俺達はバスに乗り込む。
そして某有名電気会社のビルまで急いだ。
☆
「まさにブランド祭りだな」
「そ、そうだな.....」
「アニメの方が良い」
まさに有名ブランドが軒並み揃った銀座だ。
後戻り出来ないよ?
とも言いかけているように感じる。
「銀座一丁目だったな」
俺達は周りを見渡して歩き出す。
人混みを歩いていたその時だ。
何かにぶつかり俺の前に女の子が倒れた。
道のど真ん中からやって来たもんで、気が付かなかった俺は驚愕して。
直ぐに慌てて少女に手を伸ばす。
「大丈夫?」
「.....触るな!」
まさかの手を弾いた否定。
かなりの整った顔立ちの小学生ぐらいの美少女は俺を睨んで、そして周りの真、そら、も睨んで、敵対心を見せた。
それから。
「.....ふざけやがって」
茶色の髪の少女はその様に吐き捨てて。
人混みを無理矢理かき分け、走り去って行った。
クソッ、気分悪い。
物凄い失礼な奴だな、と。
俺は思って居ると。
「あの子.....」
ポツリ、と。
そら、が呟く様に話した。
そして複雑な顔付きで俺を見てくる。
なんだ?
「多分、私と同じ様にいじめられてる。昔の私と同じ目をしてた.....」
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