第39話 ゴッド牧瀬の最大の願い
「.....」
「.....ゆ、雄大くん、どうしたの?」
「.....あ?あ、い、いや!大丈夫.....!」
俺は現在、高級レストランに居た。
所謂、ホテルの中のレストランと言える感じの場所に髪の毛を固め、スーツ姿で。
目の前には白雪姫の様な、即座にエスコートしたくなる様な冬雪の真白の様な、純粋無垢の美しい女性が居る。
ミタちゃんだ。
俺の顔を心配そうに見つめてくる。
浮かない顔をしていた様だ。
情けなさ過ぎる。
前菜を食べ終えて、次の料理を待つ中で。
俺は苦笑しながらも、笑みを浮かべれる様に頑張って笑みをミタちゃんに浮かべた。
これじゃ駄目だ、ミタちゃんと楽しまなければ。
「.....そらさんも.....何か浮かばれない感じだったから.....」
「気にすんな。小説で悩んでいるんだ」
「.....じゃあ、雄大くんは」
「.....俺はその.....ちょっとな」
馬鹿野郎、エスコートしろ。
目の前の女性の事だけを考えろ。
俺は真剣にその様に考える。
ミタちゃんに向く。
『アンタ、それでも男!?』
ゴッド牧瀬なら。
きっと、その様にして。
俺のケツをぶっ叩く筈だから。
「楽しんでいるなら.....良いけど.....」
「.....ミタちゃん。ごめんな。情け無い男で.....見損なったろ」
「そんな事無いから大丈夫。雄大くんは雄大くんだよ」
考えていると。
前菜の次の料理が給仕によってやって来た。
そして目の前に、かなり美味そうな感じの煌びやかな料理が並ぶ。
俺は反射する皿を見る。
なんて醜い顔だ。
俺は。
「美味しい!」
「.....そうだな」
俺の今の原因。
ゴッド牧瀬の事を忘れられなかったから。
それでこうなっている。
そら、は泣きながら俺に訴えてきた。
『ゴッド牧瀬ちゃんが.....!』
何故、こんな事になったのだ。
隣からも既に荷物が消え。
空き部屋になっていたし、だ。
数日前から全てを見据えたとしか思えない。
だから俺の家に泊まったとしか。
思えない。
「.....雄大くん。雄大くんってば」
「.....は.....っ!すまん、ミタちゃん」
「.....相当に悩んでるね」
「.....そう見えるか。ゴメンな。馬鹿野郎だよ俺は」
首を降る、白雪姫。
そして立ち上がって、和かに俺の頬に触れてきた。
俺は赤面する。
その美しさに見惚れて。
「.....雄大くんがそんな感じで悩んでいる時は.....何かを心配している時だって。知ってるよ。昔から優しい事を知ってるから」
「.....ああ.....」
「優しいね。雄大くん」
「.....そうだな.....」
涙が出て来た。
仲間が突然と痕跡も無く。
居なくなって。
心に空洞が空いて。
悲しいしか無かった。
「私、どんな事でも聞くよ。話して。怒らないから」
「.....」
「話さないなら私、ツーンってしちゃうからね」
それは困るな。
俺は涙目で苦笑しながらも。
俯いて、そしてポツリポツリと話した。
「.....ゴッド牧瀬.....がな。居なくなった」
「うん」
「.....何の痕跡も残さないで、今までの全てを捨てやがった。引っ越したし、携帯のメールも電話も消しやがった」
「.....うん」
何でなんだ。
葉月も心配して居た。
そして、そら、の初めての友達だったのに。
簡単に切り捨てやがった。
「俺は.....どうしたら良いと思う?ミタちゃん。諦められないんだ」
「.....じゃあ、追ったら良いと思うよ」
「でもな.....相手の.....敵がデカ過ぎるかも知れないんだ.....」
「諦めるの?」
え?と俺は料理を見ていた目線を上げる。
目の前には真剣な顔をした、ミタちゃんが居た。
その顔は少し悲しげながらも真っ直ぐに見据えて居る。
「雄大くんは諦めるの?ゴッツマキマキを.....」
「ゴッド牧瀬な.....でもな.....」
「弱くなってどうするの?それは私の見ている、雄大くんじゃ無いよ」
見開く俺に。
腰掛けた、白雪姫。
「.....きっと、痕跡を残してるよ。ゴッド牧瀬は.....貴方の事が好きだったんだよね?だったら何も残さないってのはおかしいと思う。簡単に切り捨てたりしないと思うから.....」
「ミタちゃん.....」
「.....私は応援したく無いけど.....1人の女の子が諦めかけているのを見捨てる程、屑というものになった覚えは無いからね」
「.....」
考える。
ゴッド牧瀬との1ヶ月の思い出を。
そして、やはり諦められない、と思った。
それは俺を好きだから、じゃ無い。
仲間として、見捨てれない。
俺は顔をゆっくり上げてミタちゃんを静かに、真剣な顔付きで見据えた。
「.....帰ったら探すよ。手掛かりを」
「.....それこそ.....雄大くんだよ」
「.....有難う。ミタちゃん」
俺は静かに笑む。
そして俺はデートに集中した。
それから、帰宅をして。
ゴッド牧瀬ハウスに向かった。
☆
「.....ゴッド牧瀬ハウスには何も無しか.....」
ゴッド牧瀬ハウスには。
一切の手掛かりの様な物は残されて無かった。
その為、俺は自室に帰って来る。
因みに、そら、は帰った。
ゴッド牧瀬が居なくなってショックを受けて、だ。
「.....なんでこんな事に.....」
小説を辞めさせる訳にはいかない。
だが、だからと言って。
俺達から離れるのも気に食わない。
絶対に追ってやる。
俺はその決意で部屋中を探しまくった。
ヒントが残されてないか、どうか。
この部屋にはゴッド牧瀬が多く居たからだ。
「頼むぞオイ.....」
捜索をする。
部屋が汚くなっていくが、そんな事はどうだって良い。
ラノベの山に埋もれた。
「.....無い.....」
だが、無い。
簡単に言えば、無いのだ。
本棚も、棚も、机も、どこもかしこも。
本当に何も残ってないし、残されてない。
何でだよ。
「.....マジか.....くそう.....」
そこで。
俺の脳内に、言葉が過った。
その言葉が、だ。
『アンタ、ロリのエロ本好きなの?』
「.....!!!」
ハッとして。
まだ漁って無い場所を思い出した。
それは、床下だ。
初めて、ゴッド牧瀬がこの部屋に来た時。
エロ本を勝手に見られたのを思い出したのだ。
まだ漁る価値はある!
「.....頼む.....」
捜索しまくって、もう埃まみれのスーツだが。
俺は気にせずに、床下の埃まみれをカッターシャツが灰色に染まりながらも、漁る。
そして、エロ本のケースを勢い良く出した。
乱暴に中を開ける。
そこには。
(雄大へ)
その様な、タイトルの手紙らしきものが。
俺のエロコレクションの上に乗っかっていた。
盛大にため息と。
安堵の息を吐いて。
俺は涙の雫を拭った。
「.....隠し場所を選べよな。ボケナスが.....」
俺は真面目に日頃、どうでも良いと思っている神に。
感謝する様にしてから、手紙を広げる。
そこに書かれていた文章は。
☆
(雄大へ。こんな事になって済まないわね。私はお父さん。つまり、私の父に呼び出されました。なので全てを辞めて東京に帰ります。父は秘密にしていた簡単に言えば私のアニオタ趣味、みんなの事が判明して激しく激昂していました。なので東京に帰るしか無くなったのです。ですが、心配しないで。この日本から、地球から居なくなる訳じゃ無いわ。いつでもアンタが願っていれば、また、日本に居れば私とアンタと、そら、下僕、撫子、御霊、葉月、はまた東京に来ればいつかは巡り会う事が出来るわ。また運命の巡り合わせが起きるわよ。だって、私達はそんな縁で今までやって来たじゃ無い?だから大丈夫よ。例え、離れ離れでも私達の絆は硬くて切れない、鎖の様なもの。だから、安心して。別れてもきっとまた巡り会えるわ。雄大お願い、みんなに謝っておいて。それから、私は助けを求めたりはしてないからね。追って来ない事。アンタはきっと私の事も、仲間の事も、必死になるタイプだから直ぐに追って来ると思うけど止めてね。とても心配だから。因みにみんなにも言っておいてね。この手紙は見た後、捨ててね。お願い。それから、雄大。アンタの事はお気に入りだった。これ、覚えておいて。じゃあね。 ゴッド牧瀬より最後のラブレター)
「.....くそう.....!」
俺はグシャッと手紙を握り締めた。
涙が出て来る。
ゴッド牧瀬の事が心配だし.....!
俺はどうしたら!
「.....?」
よく見ると。
俺の涙で、手紙の文字が滲んでいるのだが。
手紙では無く、手紙の中。
つまり、紙の中に何か書かれている。
「.....まさか!」
最新鋭の文房具でこういうの有るって聞いた事が有る。
まさか、まさか!
俺は直ぐにトイレに駆け込んだ。
そして、洗面所の水を手紙に掛ける。
次の瞬間、手紙の中央辺りに。
(本当は別れたく無い!!こんなに楽しい日々を.....私だって.....もっと.....!)
書き殴った様な、手紙の全てはここに有る。
という様な、文章が書かれており。
住所も書き記されてあった。
俺は見開いてそして顔を上げる。
「.....また面倒臭い事になりそうだな.....」
デカいカバンを用意した。
そして俺は。
修学旅行で使った洗面用具やらを詰め込んでいく。
すると。
バシバシバシ!
窓に向かって矢が飛んで来た様だ。
俺は見開いて、羊のカーテンを開ける。
そこには、ジェイソンマスクに弓矢という感じの相変わらずの、そら、が居た。
背後に何かを用意して、だ。
所謂、赤い旅行鞄みたいなのを。
俺は目を大きく開ける。
察したのか?
「.....雄大だけを行かせない」
「.....お前.....」
「.....私だって.....!」
電話の通話を使ってない。
そのまま、そら、は喋っている。
俺に宣言する様に、話した。
涙声で、だ。
仮面を外した先は号泣していた。
「.....仕事なんかどうでも良い。ゴッド牧瀬ちゃんを追う!」
「.....本当に良いんだな?お前.....」
「.....当たり前!」
グスッと言いながら。
鼻水と涙を拭って。
そして俺を見据えてくるのを俺は静かに頷いて答えた。
ここからどれぐらい掛かるのか知らんが。
やっぱり見捨てて置けないよな。
「.....明日の朝9時に集合だ」
「.....うん!」
硬く頷く、そら。
こうして、ゴッド牧瀬に再び会う為に。
俺達のゴッド牧瀬の父親に会う為の戦争が始まった。
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