第35話 エッセイバトル準備

テストは全てが終わった。

その為、俺は自宅に帰って和んで.....いない。

何故なら、この家には2人の美少女が居るのだ。

それで何というか、うん、ウルサイ。

もう一度言うけど、ちっとも休めていない。

どうなってやがるのだ。


「ちょっと!そら!私が雄大のライトノベルとかを片すんだから!」


「私がやりますから」


「お前ら.....」


俺の背後でその様な声が聞こえる。

何でこの様な状態になっているのか。

ゴッド牧瀬と、そら、2人で言い争っていた。

仲が良いのは良いけど、取り敢えず俺を休ませてくれよ。

頭に手を添えながら、その様に思った。


「あ、そうだ。雄大!私の連載小説にアドバイスをちょうだい。ちょっと行き詰まっていて困っているのよ」


「そ、それだったら私の小説にもアドバイスが欲しい.....から」


何でそうなるってか、いや、張り合うな。

張り合わんでもアドバイスはやるって。

苦笑しながら思っていると、スマホに電話が掛かってきた。


プルルルル


「.....ん?」


画面に書かれている名前にビックリしながら。

電話に出た。


『もしもし。雄大くん?』


ミタちゃんだ。

あ、もしかして、例のブツが出来たか?

俺はその様に思いつつ、窓の外を見ながらミタちゃんに聞く。


「.....もしかして、そら、のエッセイ、完成したのか?」


『うん。出来た。ゴッツマキマキから受け取って組み立てたよ』


「.....そうか」


いつの間にゴッド牧瀬が渡していたのか知らんが、凄いな。

その様に思いつつ、ゴッド牧瀬を見ると。

スマホを渡して、という感じだった。

俺はミタちゃんに断りを入れて、スマホをゴッド牧瀬に渡す。

直ぐにゴッド牧瀬は腰に手を当てて。

話し出す。


「もしもし!あ、御霊!?出来たのね.....ちょ!私はゴッツマキマキじゃないわよ!ゴッド牧瀬!」


うーむ。

まだ覚えないのな、名前を。

まぁ良いんだけどさ。

俺はその様に思いながら、そら、を見る。

そら、はエッセイが完成したという事で、自分の鞄から自ら書いたと思われる俺のエッセイを取り出すところだった。

俺は、そら、に聞く。


「.....出来たのか?」


「.....」


しかし、そら、は無言であった。

あー、そうか、話せないんだわな。

と思いつついると、そら、が原稿を渡してきた。

俺を静かに見据える目。

読んで、という事らしい。

うむ?


「え?読めば良いのか?」


「.....」


静かに頷く、そら。

勝負前だが、良いのだろうか?

俺はその様に思いながらも。

ゴッド牧瀬は話し中だし、エッセイをチラ見して面白そうだったので。

ベッドに腰掛けて、そして読み出してしまった。



「.....お前.....これは.....」


これは有る意味、攻撃的ですね、という感想しか出てこないな。

だって、マジで攻撃的だわ。

うん、何者も俺との仲に寄せ付けないって感じ。

俺は苦笑いを浮かべて冷や汗をかいた。

まるでヤンデレ。

原稿を返すと、そら、は俺を見つめて。


「.....」


感想をくれ、と、見つめてくる、そんな感じだった。

俺はため息を吐いて、感想を言おうとする。

その時だった。

ゴッド牧瀬が俺にスマホを投げて返して来たのだ。

ちょ、なんて事しやがる!

俺はゴッド牧瀬を睨む。

その、ゴッド牧瀬は腰に手を当てて、仁王立ちしていた。


「原稿を持ってくるそうよ。ふふ。そら。アンタの負けね」


「.....どういう事」


「私の小説はそう.....天下統一だわ!そう!天下が取れるわ!」


どういうこった。

まだ分からないだろうよ。

俺はその様に思いながら、ゴッド牧瀬を眉を顰めて見る。

ゴッド牧瀬は胸に手を当てた。


「.....とにかく!天下統一よ!アンタの負けよ.....フフフ」


「胸のサイズとかでは負けでは無いけどね」


「何を言い出すのッ!そら!」


胸のサイズ.....。

俺は赤面して、目を横にずらす。

ゴッド牧瀬の恥じらいにも似た様な視線を嫌に感じた。

すると、そら、が。


「.....私だって負けないから。雄大の事を誰よりも知っているのは私だから」


「勝ち負けはまだ分からないわよ。下僕と雄大に判断してもらうんだから!」


「.....」


うーんでも、だけどな。

一応、試し読みさせてもらったけど。

そら、は攻撃的すぎる気がする。

どうなんだろうか。

俺はその様に思いながら、ガヤガヤしている中で。

顎に手を添えて考える。

その様に、思っているとゴッド牧瀬が言い出した。


「ところで雄大。私は今夜は此処で寝ていいかしら?」


「ブッ!」


「.....私も此処で寝る」


「はぁ!?」


いや、ちょ、お前ら。

別にベッド用意しただろ!

なんでや!

俺はその様に思いながら、慌ててツッコミを入れる。

ゴッド牧瀬は怪しく笑みながら反応した。


「この家に居る限りは一緒に寝るわ.....クフフ.....」


「.....私は変な事をしないか見るだけだから」


「.....」


頭が痛くなってきた。

こんなに女の子に囲まれたらマジで頭がおかしくなってしまいそうなんですが。

仮にもコイツら、良い香りがするしよ。



「.....」


「.....だ、誰よアンタ」


「.....嘘.....」


俺達はやって来た制服姿のミタちゃんに玄関先で驚愕していた。

何故なら、ミタちゃんの髪型。

長い、白い髪の毛をバッサリ切っていたのだ。

少し、化粧をしている様にも見える。

首までの長さ。

これは何だろうか。

確か、ボブじゃ無かったっけ?


「.....イメチェンだよ。雄大くん。似合う?」


「.....いや、似合うというか.....いきなりだな。そんなバッサリ。この短時間でどうした?嫌な事でもあったか?」


「うん?いや。デートに向けての準備。フフッ」


少し赤くなりながら、恥じらって反応する。

いや、デートって。

よく分かるけど、嘘だろう。

ただ、それだけでバッサリ切るなんて。

うーむ。

って言うか、少し恥ずかしいな。


「.....かなりバッサリいったね.....大丈夫?」


そら、ですら。

心配する様な感じを見せる。

その事にミタちゃんはニコニコしたまま柔和に答える。


「大丈夫。気にしないで」


「.....うーん。これは予想外だわ!アンタもなかなかやるわね!」


「ありがとう。ゴッツマキマキ」


「.....アンタわざと言っているでしょう。そろそろ覚えなさい。.....さっきも言ったけど、私の名前はゴッド牧瀬よ!!」


怒る、ゴッド牧瀬を置いて。

3人の仲良くする姿を見ながら俺は笑む。

すると、ミタちゃんがゴソゴソと学生鞄を漁った。

そして何かを取り出す。


「.....ところで、雄大くん。これ何?」


「.....ん?これは.....」


一般的なSNSだな。

よく見ると.....SNSの日記の様だ。

作者はMAKIGOD。

オイ。


「.....お前.....」


ジト目で俺はゴッド牧瀬を見た。

ゴッド牧瀬は腰に手を当てたまま、俺を見つめる。


「.....何かしら?」


「何かしら?じゃねーよ!何やってんだオメーは!」


そこに書かれていたのは。

ゴッド牧瀬が何かを意識した様な、それでいて隠す様な攻め口で。

みんなに対して羨ましいでしょ?

という感じの。

お泊まり会の事が書かれていた。


「.....私も泊まる」


「.....いや、この家にはもう枠が無いですよ.....」


俺はお返しにゴッド牧瀬の頬を引っ張っていると。

唐突に電話が掛かってきた。

誰だ?


プルルルル


「.....げ」


撫子さんだ。

俺は青ざめながら、顔を引き釣らせつつ電話に出る。

その瞬間、怒号が飛んできた。


『クォラ!雄大テメェ!このSNSはなんだコラァ!』


「すいません。マジで。後でゴッド牧瀬はぶっ殺しときます」


『そういう問題でスマネェぞ!オレっちが見てないと思って油断してねぇか!?』


俺は頭に手を置いて。

そして頭を掻く。

思っていると、葉月がやって来た。


「.....兄貴。電話。潾二郎さんから」


「は?」


葉月はみんなに挨拶して、玄関先に座った。

俺は電話に出る。


「.....もしもし?」


『.....お泊まり会とは失笑だ。娘の事は放っぽり出しか』


うわー!親バカ、面倒クセェよ!

つーか、どいつもこいつも!

それから、30分間。

説明に追われてしまった。

だけど、何となく楽しいのは何故なのか。

頭では嫌なのにな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る