第32話 ライトノベル
気に入った人物の全てを破壊するのが趣味な羽多野宮。
俺はそんな羽多野に立ち向かう。
今日、俺は下駄箱にメモを入れた。
羽多野を屋上に呼んで、全ての因縁を解決するのだ。
「.....4時限目終了.....」
屋上では未だ夏風が吹いている。
心臓がバクバクいっていた。
俺はそんな心臓を抑えながら。
屋上にて、待つ。
影では、ミタちゃんと、そら、真が待機していた。
そして、遂にその時がやって来る。
ガチャッ
錆びたドアが開いて。
その場に羽多野がちょい面倒くさそうに現れた。
俺は静かに羽多野を見据える。
羽多野は俺を見つけて、相変わらずの人を騙す様な笑顔で話し出した。
「.....こんな場所に呼び出して何の用かな?雄大ちゃん?」
「.....羽多野。お前との因縁を決着させる」
「.....因縁って何?そんなもん有ったっけ?」
「.....有る。お前は.....俺を虐めている。その事を止めさせる」
羽多野はその言葉に。
へぇ?と言って。
漆黒の笑みを浮かべた。
舌舐めずりをした、あの悍ましい笑みを、だ。
「.....でも私の心は変わらないよ?壊すからね。また」
「.....羽多野。お前は.....ライトノベルというものを知っているか」
「.....ライトノベル?キモい絵の入った小説の事っしょ?違うっけ?」
「.....そうだ。俺はな。そのライトノベルでその全てが変わった。.....こんな腐った根性の俺が変わる事が出来た。お前にライトノベルの素晴らしさと、何故、ライトノベルで例えたか言ってやる」
へ?と変な声を上げる、羽多野。
後ろの方でも、へ?と声が聞こえた。
そりゃそうだろうな。
予想外だったのだろう。
俺はエッチな感じに見えないライトノベルを取り出した。
そして羽多野に突き付ける。
「.....ライトノベルは確かにエッチなものが残念ながら多い。だがな。ライトノベルの全てがそうだとは限らないんだ。人生を変えるものも有るんだ。○らドラ!、とある魔○の禁○目録とかな。ライトノベルじゃ無いが、CL○NNADは最高だ」
「.....キモッ。.....そんなキモアニメとかで人が変わるなんて有り得ないんですけど.....ってか、本気でキモイんですけど?」
無論だが、本気のドン引きだった。
少し恥ずい。
だが、俺は構わず続ける。
そして言う。
全てを伝える為に。
「.....人生価値を変えるのはライトノベルだけじゃ無い。これは例えばの話だ良いか。あとな.....羽多野。昔、俺達が出会った小学校を覚えているか。朝早くに行って来たんだ」
「.....!?.....は!?」
俺は過去の羽多野の事を聞く為に小学校まで朝早く起床して行ったのだ。
そしてかつての担任に聞いてきた。
羽多野に虐められていると聞いて、快く引き受けてくれて。
元担任は泣いていたのが印象的であった。
『お前に.....お前に.....申し訳無いけど.....羽多野を変えてくれ!』
俺は目を閉じて。
その事を思い出し、ありったけの言葉を叫んだ。
まるで、青春の告白の様に。
「.....それで感じた。羽多野。俺の過去とそっくりなんだ。お前の過去は。だからな、俺はお前を助けようと決めた。俺には俺の人生を変える協力を得られるのがライトノベルだった。だから、お前に人生を変える例えばで紹介した。俺は友達だった。だがお前は親から虐められていたんだろ?それで良い子になろうと頑張って.....それで逆に全てを失ったんだろ?.....俺もそうだったからな!涙を流せなくなったんだよなぁ?だから、その空白を埋める為に人の人生を破壊していた。その人生は終わりだ!お前にライトノベルを紹介したのは、予想外、でお前の世界観を変えてやろうと思ったからだ!聞け!」
「.....テメェ!雄大の癖に.....調子に乗るな!!!」
ドンッと重い足を落とした。
その迫力はまるで。
地面をブチ破る勢いだった。
激昂した、羽多野の圧力に俺は押し黙る。
余りにも胃が痛い、腸が痛い、胸に胃液が!
だけど、止まる訳にはいかない。
「先ずはお前の心の空白を埋めたいんだよ!羽多野!その一つとして、何でも良いから心に大切を置いて、心を浄化してみろ!アニメに興味ないと思う。だけど、CLA○NADだけで良い。エン○ェルビーツと言うアニメでも良い!.....冒頭だけでも観てくれ!」
次々と掛けられる言葉に。
無言の圧力。
俺は目を瞑って、駄目か、と思ったが次に羽多野の目を見て。
俺は驚愕した。
涙を浮かべていたのだ。
余りにも驚愕した。
「.....アンタに私は何をしたか知ってるのか?.....それなのに.....テメェ。なんでそんな事が出来る.....?」
「.....別にアニメじゃ無くてもライトノベルじゃ無くても良い。お前のその心にスパイスを加えてくれる、予想外、を見つけろ。お前は変われる。絶対に変われるんだ」
「.....チッ。クソッタレ.....。.....気が狂った」
展開に呆れて。
羽多野は舌打ちしてそして去って行く。
俺はホッと安堵して、そして背後を見た。
「.....スゲェ。雄大」
「.....雄大.....」
「雄大くん.....」
逆パターンで突き進んだ。
つまり、倒す、のは倒す、のだが、そうじゃない。
羽多野と対決し、理解していく。
そう、決断した。
それが出来たのは、
ゴッド牧瀬。
ミタちゃん。
そら。
真。
潾二郎さん。
葉月。
撫子さん。
その方々が居たお陰だ。
倒すだけじゃ無く、変えてやるという方法を出来たのは。
俺は空を見上げて。
そして、考えた。
少しでも。
変わってくれたら良いのだが。
☆
「.....これで全てが解決したと思ったら大間違いだな」
5時限目、中休み。
俺はその様に思いながら。
呟いた。
徐々に変えていこう。
その様に思いながら、居ると。
横から羽多野が寄って来た。
「.....ひえ!?羽多野!??!?どうした!」
「.....アンタ.....少しだけ見直した。あんなに強い男だったなんてね」
「.....!」
それだけ言い残し。
去って行った。
俺は驚愕しながら、そら、と目を合わせて。
そして、ため息を吐いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます