第28話 平凡が崩れ去る前兆

「.....うーん。そうなのか.....」


顎に手を添える、真。

って言うかコイツ。

俺達は帰還してミタちゃん各位に打ち明けたのだが、そんな中でコイツ、ミタちゃんの作品を読んでいて。

ぶっ殺したくなってしまった。


「.....まさか.....3年も会ってないお父様にそんな簡単に.....」


「俺達も偶然に見つけたんだ。それで潾二郎さんの部屋に入っただけだけど.....」


しかし、本当に若かったな。

恐ろしいぐらいに若かったぞ。

実際の所、20代と言っても過言じゃないぐらいに。

何であんなに若々しいのか気になるが。

と思う中で、ミタちゃんは困惑していた。


「.....お父様。相変わらず冷たいですね。私が小説受賞した時も、テストで100点満点を取っても、入学試験に合格しても冷たかったですから」


「.....うーん。でもこれ、愛情表現の一部なんじゃ無いかしら?」


メイド服姿のゴッド牧瀬はその様に話す。

しかし、本当にやたらメイド服が似合ってんなコイツ。


「どういう事だ?ゴッド牧瀬」


「簡単よ。ツンデレ的な?」


ツンデレって。

それはちょっと潾二郎さんには考えにくいが、そうなのだろうか?

でも、確かに一部、的を得ているかも知れない。

俺はミタちゃんを見た。


「まぁ、どっちみちにせよ、俺はお前と父親に会える様に頑張ってみるよ」


「.....え?」


「.....そうね。確かにこのままだとエロゲでシナリオがゲームオーバーになった様にしか感じないわ。後味が悪い」


「.....いや、オイ、エロゲを持ち出すな.....」


ミタちゃんは驚愕した様に俺達を見る。

俺は頷いた。

仲間が困っているのだ。

これは救うべきだと思わないか。

まぁ、策が無いんだけど。


「.....雄大くん優しいですね。そんな優しさに触れたのは久々かも知れません」


「俺だけかよ」


その様にツッコミながらも。

笑みを浮かべた俺達。

そんな中で俺は、そら、にも連絡をする。


「そら」


『何?』


「.....ミタちゃんが困っている。助けてくれないか」


『.....良いよ。協力する』


その様に即答してくれた。

有難うな、そら。

そう、言ってくれて。

嬉しく感じるよ。

すると真が、あ、と言った。


「って言うか、ちょっと待ってくれ。勉強はどうする」


「「「あ」」」


つられて、あ、と言ったが。

本当にどうする?

時計を見た。

そんな時刻は既に夕方の5時。

あれまぁ。


「.....勉強する暇も無かった.....」


「まぁ、元から勉強なんてする気も無かったけどね。私は小説が売れているから問題無いわ」


「問題有りだろ。それで食っていけるのか56万部」


「ぶっ殺すわよ。アンタ。持ち出すな」


まぁ良いや。

とにかく、だ。

ミタちゃんを父親と何ら問題無く会える様に。

調節しよう。

そして、勉強しよう。

あと、小説のバトルも。

それも考えよう。



「.....」


帰りのバスで。

俺は顎に手を添えていた。

ゴッド牧瀬は真と話している。

問題は山積みだ。


「さて、どう対応するか、だが」


俺はゴッド牧瀬を見た。

ゴッド牧瀬はこう告白したのだ。

母親が死んでいると。


「.....ゴッド牧瀬」


「.....あら?何かしら」


「お前も大変だな」


その言葉に、見開いて。

少しだけ赤くなりながら。

ニコッと笑んだ。


「.....別にそんな事は無いわよ。でも、寂しい気持ちは有るから.....」


「.....そうか」


俺はゴッド牧瀬を見ながら。

外の景色を見つめる。

まるで、みかん、が太陽に様になった様な。

そんな太陽がある。


「.....明日から大変かも知れないが、頑張るか」


その様に俺は。

小さく、小さく呟いて。

そして目を閉じて深呼吸した。



「.....」


期末考査の勉強は全く進まない。

何故なら、最新刊のエロ○ンガ先生、灰と幻○のグリム○ルがクッソおもろい。

畜生め話が進まない。

アニソン聴いてやるんじゃ無かった。

続きが気になる。


「.....」


(その電話番号を渡しておく。だが、私は滅多に出ないからな。留守電にでもしてくれ。御霊にも渡しても良いが、あまり期待はするな)


優しいのか優しく無いのかどっちか分からん。

潾二郎さんの電話番号。

勿論、ミタちゃんにも渡したが。

掛けてみるか?


「でも、本当に何故、娘に会おうとしないんだろう。大人だからって.....それは無いだろ.....」


うちの親父ですら俺を心配するのに。

会おうとしないとは。

心配に心配が重なるだろ普通は。

困ったもんだな。


バシンバシン!


「はいはい」


今時、電話を掛けずしてこんなアナログな方法でしか話が出来んとは。

俺は羊柄のカーテンレースを開けたりして電話を掛ける。

そして通話した。

目の前にジェイソンマスクの、そら、が立つ。


『御霊さん.....大丈夫だった?』


「心配か」


『.....う.....いや、別に?』


「.....否定せんでも良いだろうに」


本気でコイツは心配しているんだな。

嬉しいよ俺は。

友人が出来て、だ。

仲間も出来て。


「.....ミタちゃんは.....今の所は大丈夫だ。だけど.....そうだな。一応心配だ」


『.....そうだね』


「.....そら。お前が心配してくれるから嬉しいよ。素直に」


『.....ベ、別にアンタの為じゃ無いんだからね!』


リアルツンデレ。

俺は苦笑しながら、見る。

そして、話を変えた。


「.....話は変わるが、勉強は進んだか?」


『私、一応、頭は良いからね。大丈夫だと思われ』


「.....そうか」


それなら安心かな。

俺はその様に思いながら。

真正面を見ると、そら、が見上げていた。

星空だ。


「.....綺麗だな」


『.....そうだね。うん』


星がキラキラ光る。

流れ星も見えた。

俺は静かに目を閉じて。

そして、真正面を見つめる。


「.....明日も宜しく」


「.....うん。宜しく」


明日も平凡で有ります様に。

その様に、願って俺は笑んだ。

だが、この願いは。


悉く打ち砕かれてしまった。


その人物が現れた事によって、だ。

俺は。

神様を呪った。

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