第22話 世界はオメーを中心に
次の日、俺は葉月と共に玄関から出た。
この行動に、両親は驚愕していたが、仲直りをしつつ有ると説明した。
そして葉月と別れ、反対方向に歩いて行く。
今日も学校だが、明日には休みだ。
嬉しく感じるものがある。
まぁ、それ以外でもだがな。
俺は鼻歌交じりに歩く。
その時だった。
「よお」
「ファ!?」
唐突に撫子さんの声がした。
俺は身体をビクッとさせて、反応する。
そして後ろを見た。
ダボダボの制服を着た、撫子さんが立っている。
「.....何だその反応。オレっちが声を掛けてそれは酷いな」
「い.....いや。って言うか、俺の住所をよく知ってますね.....」
「おう。それは色々な所から聞いたからな」
マジでどうなってんの個人情報よ。
まぁ、もうツッコミ疲れたけど。
って言うか、撫子さん?
「.....どうしたんすか?こんな朝から」
「そうだな。オメーと話がしたくてな。来たんだ。オレっちの家はここから10分ぐらいの所にあるしな。まぁ、歩こうぜ」
俺の背中を撫子さんはバンバン叩いて、そして歩く様に指示する。
その痛みに歩く、俺。
そして歩きながら、再度、同じ事を聞いた。
と言うか、聞いてしまったっというか。
「.....わざわざやって来たのには理由が有りそうですね」
「.....そら、と、そらき、の件だ」
「.....ですね」
笑む、俺。
これに対して撫子さんは俺を見ながら頭に両手を添えて鞄をブラブラさせながら。
反応した。
「雄大。オメーは良くやってくれてるな。オレっちは嬉しいぞ。そら、があんなに笑顔になったのも、そらき、があんなに頑張っている姿を見るのも、初めてなんだ。すっごくすっごく嬉しくてな。オネーさんは」
「.....俺のおかげじゃ無いっすよ。周りが良い奴だらけなだけです」
「それはどうかな」
怪しく八重歯を見せながら笑む、撫子さん。
そして、俺を見つめつつ。
その言葉を発した。
「世界はお前を中心に回っていると思うぞ」
「.....事がデカイっすね.....」
「.....雄大。マジな話だ。オメーのお陰で.....俺は段々と心配事が減ってんだ」
「.....」
かつて、友人と。
全てを失ったからきっと。
俺はこの様な性格に生まれ変わったんだ。
その様に、思いながら。
撫子さんを見る。
鼻歌を歌っている。
「オメーはな。太陽だ。オメーの周りで花が咲く。.....裏山だぜ。その性格はよ」
「.....買い被りすぎっすよ。俺は.....俺自身はそんなに良いとは思えません」
「.....それは違う。もっと自信を持て。雄大。オメーがみんなを現に今は変えている。それは誇って良いと思うぞ」
俺の肩を叩いて、笑顔を見せる撫子さん。
俺は頬を掻く。
それから、暫く歩くと。
撫子さんは北の方角を指差した。
「.....オレっちはこっちの方角に高校が有るんでな。じゃな。良い話が出来たぜ」
「.....はい」
手を上げて、小学生が去って行く様に、
笑みを浮かべて去って行った、撫子さん。
俺はその姿を見てそして前を見た。
そうか、誇って良いのか。
俺は。
「.....」
太陽か。
俺はそんな良い奴なのかな。
だけど、そうだとしても。
どうしても自信を持てないのは。
何故だろうか。
足枷が嵌まっているからか?
思っていると、声を掛けられた。
「おーい。雄大」
「.....よう。真.....あ!!!!!お前!!!!!」
真だった。
この野郎!!!!!
俺は目を三角形にして殴り掛かろうとする。
真は青ざめていた。
「ちょ!怒るな!俺はな、用事が有ったんだ」
「あのな!大変だったんだからな!!!!!テメーが居ないせいで!」
「.....だけど、その割にはお前.....何だか.....目に活気が有るぞ?死んだ魚の目に」
あ?活気が有る?
死んだ魚の目にか?
重ねてぶっ殺したい所だが、成る程な。
「.....なぁ、真。俺って.....世界を変えていると思うか?」
「何だいきなり。.....つーか、スケールが馬鹿でかいな。でも.....少なくとも、そら、さんの世界は変えていると思うぞ」
「.....うーむ」
信じられないな。
本当に世界を変えているのか。
俺は。
プルルルル
「.....もしもし?」
『雄大。おはよう』
後方を見ると。
ミタちゃんと、ゴッド牧瀬と、そら、が立っていた。
全員、俺の顔を見て、満面の笑みだ。
「.....お前ら.....」
「.....おはよう」
「おはようございます」
ゴッド牧瀬は恥じらいながら。
ミタちゃんは和かに。
挨拶をしてくる。
そうだな。
俺は世界を変えれない。
だけど、今はコイツらの世界を変えている。
それだけで良いじゃないか。
なぁ、神様。
思っていると。
とんでもない言葉が、そら、から飛び出した。
「所で雄大。没頭していて忘れてたんだけど.....御霊さんから教えてもらったんだけどね.....前期期末試験が来週の月曜に有るみたい.....」
「.....あ」
青ざめる、そら。
平然のミタちゃん。
あああああ!!!!!
すっかり忘れとったわ!!!!!
くそう!!!!!
マジでないわ!
「.....ハッハッハ!まぁ、俺は毎回の如く赤点だから心配すんな雄大!」
「呑気か!!!!!高二の期末試験だぞ!!!!!重要だっ!!!!!」
なんてこった!
最早、小説なんぞしている場合か!
俺はその様に思いながらも。
笑っていた。
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