第20話 3人

次の日の放課後の事。

俺の部屋には各それぞれの人が集まっていた。

そら、俺、ミタちゃん、その3人がである。

因みに(ゴッツマキマキは集まった途中で仕事が有ると電話があり、真は学校で用事が有ると話した。撫子さんも仕事が有ると途中で電話が有り)居ない。

そんな感じでミタちゃんと、そら、が集結である。

つーか、ゴッツマキマキと撫子さんはまだ分かるとして。

真の野郎め。

アイツ何時も暇だった感じなのにどういう事だ。

今回に限って居ないってのも酷い話だなクソッタレ。

絶対に先行きを読みやがったな。


「.....」


「.....」


「.....」


俺が提示した小説のアイデアでこの状況になっている。

正座している、ミタちゃんと、そら、と俺の3人という状態。

ライバル同士の状態であまりにも息が詰まりそうだ。

女の子が2人男の部屋に居るってのも相当なもんなのだが、この状況はあまり良い状況では無い。

お互いに相当な敵視感が溢れていた。

その事に俺は眉を顰めて溜息を吐いた途端、ミタちゃんが一言呟いた。


「.....えっと、きらきらさんでしたか?」


「私の名前は、そら、なんですけど.....」


「.....あ、そうでしたね」


なんだ、きらきらさん。

きらきらさんて。

初っ端から名前の間違いですか。

無自覚かも知れんが今ので相手をかなり威圧したぞ。

俺は頭に手を添える。

余りにも頭痛がして仕方が無い、と、思っていた次の瞬間。

ミタちゃんが、続け様に言葉を発した。

頭を下げたのである。

俺達は驚愕した。


「.....えっと、そら、さん。.....小説のヒントを雄大くんに提供して下さったそうですね。.....その.....大変でしたね」


心の底から、その様に話した様に。

それから、ミタちゃんは、そら、に真っ直ぐに向いて真剣な顔付きをした。

その言葉は、そら、にとっては予想外の言葉だったのだろう見開いた。

それから、顔を赤くしながら髪を弄って話す。

ツンツンしながら、だ。


「.....悩んでいる雄大を助けてやっただけですよ。その.....有り難う御座います」


「.....いえいえ」


いきなり。

そう、いきなりという言葉が似合っている。

本当に、いきなり穏やかな感じになった。

だが、ミタちゃんは。

ピリピリの空気を出していた。

何か、譲れないものが有るのだろう。

その光景を見ていた、そら、も冷や汗を流す。

俺も冷や汗を流した。

そして、その光景を見ながらアイデア帳に指差した。

とは言えど、汚い小学生の頃、使っていたノートに思い付いたアイデアを書き記しただけだが。

メモ帳みたいな。


「ところでよ、お前ら、それで良いか?」


プルルルル


『.....私達が私のエッセイ、御霊さんが雄大のエッセイだよね。.....うん、ハンデ的にもオーケーだし、了解だよ』


スマホで、そら、はその様に真正面を向いたまま話す。

それからミタちゃんに、そら、は向き握手する。

一応、そら、とミタちゃんがお互いに話し合って結果、その様になったのだ。

取り敢えずは決まって良かったなと思う。

だが、そら、とミタちゃんはそれでも互いにライバル同士である事に違い無い様で。

そら、が一言、口角を上げながらミタちゃんを見つめ言う。


「.....でも御霊さん。多分暫くはライバル同士だよ。覚悟してね」


「.....そうですね.....うん」


俺はその光景に、何故か笑みが溢れた。

うん、まぁ、理由は何となく分かるんだが。

そら、の事だろうから。

思って、光景を見ていると。


ピコン。


ラ○ンが入ってきた。

読むとゴッツマキマキから。

俺は驚き、開いてみる。

隣の家で仕事中じゃないのか?


(ちょっと、大丈夫かしら?)


(一応、大丈夫だぞ。ゴッツマキマキ)


(ハァ?ぶっ飛ばすわよアンタ。.....まぁ良いわ。とにかく何も無いわけね?だったら安心だわ。でも油断はしない事。ライバル同士の対決なんだからね)


何なんだコイツは。

俺の母親かよ。

その様なツッコミを入れながら口角を上げた。

そして返信を打つ。

するとミタちゃんが?を浮かべた様に聞いてきた。


「.....どうしたの?雄大くん」


「あ、ああ。何でも無い。ゴッド牧瀬からだ」


「.....ゴッド牧瀬.....?」


ますます???を浮かべる、ミタちゃん。

またゴッド牧瀬を忘れたか。

まぁ、後で覚えさせれば良いかもだけど。

しかし、今の状態。

こっから先はどうすっかなと、思っていると電話が掛かってきた。

俺は画面を見る。

え?


プルルルル


「.....ゴッツマキマキ?.....はい」


『あ、もしもし、すいません、私、電脳文庫の、そらき、と御霊の編集者、城田さく、と申しますが。此方、鋼さんの携帯で間違い無いでしょうか』


「.....え?あ、鋼ですが.....え?」


ゴッツマキマキじゃ無い、ってか。

編集者?

何か、女性の様だ。

なんで俺の携帯に掛けてきてんだ?


『突然失礼します。ゴッド牧瀬の方から貴方様の事を伺いまして、更に、そらき、と御霊の現在の小説の事をお伺いしました。もし、その原稿が完成致しましたら、是非ともに見せて頂きたいのですが。お二人方の小説は最終的には出版する事も検討中ですので.....』


「.....」


何やってんだあのゴッド牧瀬とかいうカス野郎。

ベラベラと今の状況を喋るんじゃねーよ。

事がデカくなってんぞ。

俺のアイデアが遂に出版まで至ってんぞ。

どういうこったよ。


「.....しかし、出版ですか.....」


『そうですね。この機会を逃す訳にはいきませんので』


「.....うーん」


出版ねぇ。

そこまでデカくなるとは。

取り敢えず、そら、に聞いてみようか。

俺はその様に思ってお茶を飲んでいる、そら、に向いた。


「.....そら。何か知らねーけどお前らのエッセイについて出版の話が来てんだけど」


「.....」


驚愕の目をする、そら。

それから俺を静かに見据えてくる。

手で招きながら。

あ、成る程、喋れねーのか。

俺は自由帳ノートを渡してみた。

すると、そら、はノートにシャーペンで書き記す。


(駄目に決まっている)


「.....だよな。まぁ、そうだ」


いやだって、簡単に考えれば誰だって分かる。

俺の人生と、そら、の人生(改変していても)世の中の人に晒される訳だよね?

流石の俺だって嫌だと思うわ。

さてどう答えるか、だが。

うーむ?


「もしもし」


『はい』


「.....もし、出版が駄目ってなったらどうなります?」


『その場合は.....また別の方法を取らせて頂きます事になります』


まぁ、そうなるよねぇ。

俺はその様に思いながら、顎に手を添えた。

そして考える。

すると、和菓子を行儀良く食べていたミタちゃんが言葉を発した。


「雄大くん。もしかして城田さん.....?」


「.....そうだな。編集者だ」


「.....ちょっと代わって」


「.....?」


ミタちゃんは眉を寄せて、その様に話した。

俺はその事に驚きながらスマホを渡す。

そして、スマホを受け取ってミタちゃんは言い出した。

それも相当な律儀に。


「城田さん。御霊です」


『.....あ、御霊先生』


「.....私の知り合いです。小説を発刊するのは駄目です。御免なさい」


『.....!.....ああ、そうですか。御霊先生が仰るなら、諦めましょう。少しばかり残念ですが』


驚きである。

何故なら、ミタちゃんがその様に話した事に。

ライバルだから、興味が無いから絶対に別の事を喋ると思ったのだが。

俺はミタちゃんに言葉を発した。


「.....お前.....」


「.....幾らライバルでも、駄目な事は駄目だと思うからね」


「.....そうか、ミタちゃん。有難うな」


その様に話して俺は笑みを浮かべた。

ミタちゃんも笑む。

側で、そら、も驚いていた。

それから、笑顔になる。


「......御霊さん。有難う」


「.....うん」


俺はその光景を見てから、何だか無性に嬉しくなった。

何故かって?

それはな。

イジメを受けていた、そら、に。

友人が居なかった、そら、に。

(友人)という宝物が次々に出来つつある事に、だ。

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