第15話 白雪御霊
ゴッド牧瀬と、そら、の仲がそれなりに改善された。
俺との仲もそれなりに、だ。
ある意味、まぁ良かったんじゃないだろうか。
俺はその様に思いながら、学校に行く準備をしてから。
欠伸をしつつ下に徐々に降りて行く。
今日は面倒臭いが、学校である。
勿論、ラノベ入りの鞄だ。
「.....ふあ.....」
「.....あ」
俺はゆっくりと再び欠伸をして。
歩いていると、トイレから出て来たクソ妹に出会った。
クソ妹は俺に対して眉を顰める。
だが、何故か。
その次に俺に対して、笑んだ。
ちょ、何だ何だ、気色悪い。
何だよ一体。
「.....見直したよ。アンタの事」
「.....は?」
「.....いや、昨日の話。ゴッド牧瀬っつーの?アイツにすげぇ優しく接していたじゃん?なんか見直したよ。結構ああいう顔もサポートも出来るんだなって。.....何でアンタの服を着ていたか分からなかったけど」
クソ妹は、それだけだから、じゃね。
と言ってリビングに入って行く。
俺は見開いて、そしてかなり驚愕した。
妹が、素直に俺に見直したと言ってきた事に。
俺は様子に、口角を上げて。
そして鼻歌混じりにリビングに入った。
☆
今日の朝食はメザシだった。
美味しかったなと思う。
思いながら、俺は鼻歌を歌いながら玄関から出る。
いつもの様に妹、親父は先に出ているので、俺だけだ。
母さんに手を振られて、そして出た。
その次の瞬間。
「.....っ!?」
「.....?」
横を見ると。
ゴッド牧瀬が自分の家の玄関から出てくる所だった。
俺は見開いてから頭を下げて、挨拶をする。
「.....よお、おはよう」
「.....お.....おはよう.....」
ゴッド牧瀬はモジモジしている。
よく見たら可愛らしい白のセーラー服だ。
俺はそのセーラー服を見て、口角を上げた。
「.....可愛いじゃんかよ」
「.....そ、そう?有難う.....」
「.....」
でもその、何だ。
めっちゃ気まずいんだけど。
昨日の素っ裸の件があって、だ。
俺はその様に思いながら、赤面で頭を掻く。
すると、背後から殺気が。
『.....』
「うぉ!!!!?そら!」
『何イチャイチャしてるの?』
してないってばよ!?
何だか某漫画のキャラの様な喋り方になった。
ツーンとしている、そら。
俺は頭に手を添える。
すると、一歩、ゴッド牧瀬が歩み出た。
複雑な顔付きをしていて。
それから頭を下げて、しっかりと謝りの言葉を口にした。
「.....ごめんなさい。色々と.....調子乗り過ぎたわ」
『.....うん、ゴッド牧瀬ちゃん。もう大丈夫だから。気にしないで。あ、そう言えば友達にならない?私とアドレス交換しよ?』
「.....そうね.....」
唐突に差し出された、そら、の手。
その手を握る、ゴッド牧瀬。
お互いに和かな感じだ。
俺はその光景を見ながら、笑みを浮かべた。
「.....ゴッド牧瀬。良かったな」
「.....ふ、ふん!別に.....嬉しくないもん.....」
「.....そうか」
ゴッド牧瀬はその様に話しながら恥ずかしがりつつも。
本当に嬉しそうな感じをしている。
俺は多分、暫くこの光景を忘れないだろう。
思いながら、俺は空を仰いだ。
今日は良い日だ。
☆
「.....そういや、お前さ、小説は進んだのか?」
『刊行は止まった。何せ雄大がおち.....』
「外だからな!!!!!この場所は!!!!!」
俺は大慌てで猛烈なツッコミをした。
むー、と押し黙る、そら。
俺は盛大な、ため息を吐いてそして言う。
苦笑もした。
「.....もう諦めろよ.....」
『諦められない。雄大が.....下半身を見せてくれないと』
「.....」
うん、もうね。
世の中の人、申し訳無い。
俺のせいで刊行が止まっているけど、どうしようも無いねん。
いや、割とガチで。
俺が下半身見せないと刊行が進まないとか何事よ。
思っていると。
「おーい!」
「あ?ああ、真.....」
俺は唐突な挨拶に。
手を上げて、挨拶をする。
その、挨拶もそこそこに、と言わんばかりに。
真は目を輝かせて話し出した。
「あのさ、この噂、知っているか?ライトノベルの王の中の王、3000万部売れている、七色の雫の原作者が愛している人が居るって!良いよなぁ。羨ましい!」
「何で羨ましいの?」
そら、が首を傾げて不思議そうに聞く。
すると、真は興奮気味に話した。
アニメの雑誌を見せて、だ。
「だってよ、七色の雫の作者って超絶美少女だそうだぜ?それは世の男どもが黙っては居ないさ!くぅ!羨ましす!」
いやいや、また美少女かよ。
もうお腹いっぱいだわマジに。
俺はその様に思いながら、苦笑した。
だが、七色の雫か。
ある意味、クッソ面白いんだよな。
現代ファンタジーと異世界ファンタジーを織り交ぜた傑作だ。
俺ぁマジで好きだ。
もしかしたらライトノベルの中では最も好きかもな。
今も鞄の中に有るライトノベルがそれだし。
「.....確かに羨まし.....」
ゲシッ
「イテェ!」
何でだ.....。
唐突に、そら、に靴を踏んづけられた。
俺は悲鳴を上げて、思いっきり睨む。
そら、はツーンとして居た。
「.....ふん。バカ」
「お?夫婦喧嘩?」
「うるせぇ。違うわ」
そんな感じで誤解している、真を引き連れて。
学校へと向かっていると。
目の前の学校。
が.....学校に。
「何だこの女の子.....」
「凄い綺麗.....」
「絵になるだろ.....」
周りがその様に、唖然としている。
それは一つの雪の様だった。
眉毛も、髪も、和服も。
全てが真っ白の。
今にも空に溶け込みそうな、顔立の色は白キャンバスの様な。
黒子も何も無い、とても綺麗な顔立ちの。
少女が学校を見据えて立って居た。
「.....おい何だあれは.....」
「.....いや、知らん。初めて見た人だな。.....凄い真っ白だ」
「.....綺麗だね.....」
俺はその光景に唖然とする。
すると、少女は俺達の方を見てきて。
そして旅館の女将が走る様に、ススス、とやって来た。
ビクッとする、俺達。
「.....つかぬ事をお伺い致します。この学校に.....鋼雄大という方はいらっしゃいますか?」
「鋼.....雄大?」
一気に注目が俺に集まった。
俺は酷く驚愕しながら、その少女に言う。
「.....あの、鋼雄大ってのは俺の事.....」
「.....あ、そうなのですね。.....ようやっと会えましたね。私、白雪御霊(しらゆきみたま)と申します。突然で申し訳有りませんが.....私の初恋の相手に間違い有りませんか?」
「.....初恋の相手.....」
そこまで言った時。
マジマジとこの少女を見ていた、真が、ああ!!!!!、と突然に叫んで、指差して震え出した。
ちょ、何だ一体。
「.....ま.....まさか.....七色の雫の原作者.....」
「.....何!!!!?」
俺は目の前の少女を見る。
白着物の少女は柔和な表情で俺のおでこに触れて来て。
さらに、髪をたくし上げた。
俺は赤面で、鞄をうっかり落とし。
そして見開いた。
「.....やはりですね。この場所、右の上の方に十字の傷が有ります。崖に挟まった私を助けてくれたのですよ。その時に頭を打った時の傷です」
「.....って言うか.....そうだ、思い出した。白雪御霊.....ミタちゃんか!?救急車に後を任せたから.....!」
「はい。ミタちゃんです」
ニコッと微笑む、ミタちゃん。
何で人ってこんなに変わるの?
ある意味、恐怖を覚えたよ。
確かに俺は中学の時、偶然崖に挟まっていた少女を救った。
だけど、その時は白髪だったけど.....けど!
こんなに綺麗だったっけ!?
「ちょっと!」
突然に横から声がした。
そら、だ。
全く訳が分からないという感じだ。
そりゃそうだろう。
そら、が引きこもって俺に会ってない時だったからな。
一瞬だけ、横を見るミタちゃん。
だが。
「それでは、学校内に参りましょう」
「.....何処へ!?って言うか、話聞いてる!?ミタちゃん!何で突然会いに.....オイィ!?」
全く話を聞いてねぇ!
そら、が唖然として、震えているし!
真に至っては周りをかき集めてシュプレヒコールをしてるし!
お前という奴は!
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