第12話 ゴッド牧瀬ハウス

「.....」


「そう言えば、アンタが引っ越して初めてのお客さんになるわね」


俺は家を出てから。

左隣のゴッド牧瀬の家に入り、顔を引き攣らせてから顰めていた。

何故、やって来たのか。

それは簡単に言えば敵陣の事に関して色々と知ろうと思ったのだ。

だが、ゴッド牧瀬の家の扉を開けた時から歩けない程のダンボールに入った漫画、アニメグッズ、ライトノベルの山という山の全てに阻まれた。


「引っ越して来て当初で何だこの汚さ.....流石に引っ越し業者もドン引きだっただろ」


「.....失礼ね。全て私の荷物よ!」


いや、荷物って言ってもな。

つーか、ダンボールのデザインまで美少女アニメかよ!

どんだけアニメの事が好きなんだよ!

ツッコミどころ満載すぎるだろ!

流石の俺もドン引きしかねないぐらいにあり、真を呼ぼうとしたぐらいだ。

すると、そんな汚い部屋からゴッド牧瀬が何かを引っ張り出してきた。


「あ、因みにこれ私が好きなエロゲなんだけどやる?」


「やるか!お前幾つだ!エロゲ買うなよ!」


「馬鹿ね。ライトノベルはね、研究材料が常に必要よ!」


未成年がエロゲて。

って言うか、ああ、こういう事だからコイツはエッチなラノベばかり書いているのか、と思ってしまったわ!

そら、も十分に変態だが、コイツもかなりの変態だ。

3次元変態が、そら、で。

2次元変態が、ゴッド牧瀬。

そんな感じだ、ん?


「.....つーか、お前.....台所にもラノベが積まれてんぞ。料理は作らないのか」


「全て外食ね。私、一応売れっ子だし、1人でお金使うから」


そら、には売り上げが全て負けている癖に何贅沢なことをしてんだコイツは。

って言うか、そうなるともしかして。

コイツ、家事全般が苦手なのか?

家事が出来ない女の子ってのもなぁ、と、思っていると。

床を何かが這った。


ガサガサガサ


バシィ!!!!!


「.....またGが出たわ。.....案外しぶといわね」


「.....オイ、今直ぐに片付けるぞ。おかしいだろ。引っ越してきて早速Gって!!!!!」


ヤバい、これは絶対的にヤバい。

美少女のイメージダウンだ。

そら、に引き続いてこれは絶対にアカン!

俺の中の美少女へのイメージがぁ!



「一言、言って良いかしら?下僕。これはおかしいでしょ。私はアンタの上司よ」


「黙れ。そのうちネズミまで出るぞこれは。そうなったら終わりだ」


俺はゴッド牧瀬を黒ゴスロリから汚れても良い服に着替えさせ(体操服)頭に三角巾、エプロン、ハタキをそれぞれ持たせたり、身に付けさせたりした。

この状況は許せるものではない。

Gが出る時点で汚すぎで、俺は強迫神経症者なんだ!!!!!

許せん!!!!!


「絶対に許さないわ」


「やかましい。とにかく手を動かせ。掃除しろ。とにかく」


汚れても良い服装に俺もなって、手伝う為にとにかく掃除しまくる。

廊下、窓、手すりを新聞紙などを駆使して全てを掃除していた。

つうか、何で俺が敵陣を掃除してんだ。

思っていた、その時だ。

唐突に電話が掛かってきた。


プルルルル


「.....あ?」


なんだ?と思って見るとスマホには、そら、と表示されていた。

俺はかなり驚く。

そして直ぐに電話に出てみる。

後だと繋がらない可能性があったからだ。


「もしもし?そら、大丈夫か?」


『大丈夫。ところで、今は雄大は何をやっている』


「掃除。真の家の、な」


ゴッド牧瀬に知られない様に。

スマホを隠しつつ、トイレを借りた。

取り敢えず今の状況を率直に説明したらマズい気がした。

ので、取り敢えずはその様に話したのだが。


『何でそんな嘘を吐く』


「.....は?.....な、なんでだよ」


『雄大を追跡しても八坂くんの家に辿り着かないもん』


ちょ、え?

何を言ってんだコイツは?

俺のプライバシーを何だと思ってんの?


「どうやって俺のスマホに探知機を入れた!」


『そんな事より.....』


「そんな事!?」


俺はため息を吐いた。

そんな感じで居ると、そら、がそのまま話す。

とても、冷めた様な声で、だ。


『何でお隣さんに居るの』


「.....」


『何で(お隣さん)に居るの?』


これは参った。

って言うか、なんか声のトーンがおかしくね?

ボイスレコチェンジャーってそんな事まで出来るの?

俺は眉を寄せる。

その時だ。

唐突にトイレのドアが開き、ゴッド牧瀬が現れた。

手を差し出してくる。


「下僕。電話貸しなさい」


「は?あ、ちょ!」


ガシッ


「おいコラ!」


そのままスマホを奪い取られた。

俺は驚いて取り返そうとするのだが、それから逃げる、ゴッド牧瀬。

何だこの俊敏さ!

俺は必死に追い掛ける。


「もしもし?そらき、さん。初めまして。ゴッド牧瀬よ。アンタと同じレーベルの者だけど」


『.....は?ゴッド牧瀬.....って.....なんか聞いた事がある様な』


なんかあまり知られてない様な感じですが。

俺はそう思いながら、ゴッド牧瀬を必死に追い掛ける。

すると、ゴッド牧瀬は。

とんでも無い事を話した。


「アンタの幼馴染は私のものになったわ」


『.....ハ?』


カタカナになってるから!

明らかに声のトーンがまた変わった!

何を言ってんだあのボケナス!


「おい!止めろ!ゴッド牧瀬!」


コイツ!何でもかんでも喋りやがる!

クソッタレ!

撫子さんとの約束が果たせなくなっちまう!!!!!

俺はスマホを取り上げようと必死になるが。

軽やかに動く、ゴッド牧瀬。


『.....何を言っているのか分からないんだけど.....』


「アンタを倒す為に私の下僕になったわ。雄大くんは」


『.....そう.....分かった。.....ちょっと雄大に変わってくれる?』


俺はようやっとゴッド牧瀬からスマホを取り上げた。

そして、そら、と話す。


「冗談だからな。そら。あんな奴の下僕になったわけじゃ無い。落ち着け」


『.....雄大。もう良い。よく分かったから』


「.....」


何だか理解した様に話し出した。

俺はゴッド牧瀬を睨む。

コイツ、コイツめ!!!!!

ややこしい展開にしやがって!


「.....そら」


『その娘の側で頑張ってやったら?』


「.....」


切れた。

俺は呆然として、考える。

ゴッド牧瀬はこれでよし、という感じの顔をしていたが。

俺は静かに見据えた。


「.....掃除は中止だ」


「.....え?」


「お前とは暫く口を聞かない」


え?

ゴッド牧瀬の動きが止まった。

俺は静かにその様に話してから掃除道具の全てを置いて玄関から出た。

その際に、慌てた様な声で。


「.....えっと.....え?.....ま、待って!待ってよ!」


と聞こえた気がしたが、俺は止まらなかった。

こんな奴と話したく無いと思ったからだ。

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