第11話 大切だから

ピンポーン。


唐突にその様な音が聞こえた。

俺は見開いて、電話をそのままにしたまま歩いて行く。

そして、宅急便か?と一階の壁から覗き見た。

俺の嫌いな、クソ妹、葉月が茶髪を揺らしながら出ている所で。

ドアを開いていた。

そして次の瞬間、俺は光景に目を疑う事になる。


「はい.....って」


「.....ファ!?」


「.....」


葉月がドアを開け放つと。

そこには、腰に手を当てて黒ゴスロリを着た女の子が立っていた。

誰だ!?

銀髪の長髪、そして、その銀髪をツインテで結っている。

顔立ちは中学生ぐらいの少女。

目が大きく、それを細い銀の眉毛が覆っている。

唇も柔らかそうで。

なおかつ、スタイルも抜群の超美少女。

葉月もそれなりだが、それ以上か。

って言うか、マジで誰よ?


「.....何?アンタ」


「雄大くんの妹ね?アンタと言われる筋合いは無いんだけど。言い返すならアンタに用は無いわ。今直ぐに雄大くんを出しなさい」


葉月がケダモノを見る様な目で見つめている。

つーか!?

あれ、ゴッド牧瀬か!?

俺は電話口から試しに話しかけてみた。

相手の美少女もまだ電話を掛けたままだから、だ。

すると、腰に手を当てていた美少女もスマホを取る。


「もしもし?.....お前、銀髪のウィッグ付けてんの?」


『ウィッグじゃ無いわよ。って言うか、どっかから見てるのかしら?アンタ』


可愛らしい声で話しているのは目の前の少女。

辺りを見渡している。

間違いない。

あの美少女がゴッド牧瀬だな。

絶対的に確定だ。

って言うかちょっと待って。

何しに来たんだよ。

俺は訝しげな目で見ていると、葉月がゴッド牧瀬に突っかかった。


「.....あのさ、人の家に来て突然、電話するとか何様。そしてあのクソ野郎を出しなさいとか.....もっと何様?ガキ」


「ガキじゃ無いわ。まぁ、確かにクソ野郎ではあるわね。何せ敵陣に居たのだから。でも今日からは違うわ。私の下僕よ。良いわね?覚えなさい。類人猿?」


妹=類人猿w

ってか、クソ野郎て、下僕て。

我が妹ながら絶対に許されん事を言うね。

まぁ、それは置いておいて。

下僕って誰がだ。

俺はお前の下僕じゃねぇよ。

ああもう。


「お前ら」


「.....あ、クソ野郎」


「.....あ、雄大くん?」


俺は下僕でもクソ野郎でも無い。

と、俺はツッコミを入れようとしたのだが、その前に。

妹は俺を睨んで、そしてゴッド牧瀬を指差した。


「.....アンタロリコン?滅茶苦茶にキモいんですけど。って言うか、コイツ何?」


「出会ったばかりのやつにコイツは無いだろ仮にも我が妹よ。この女の子は牧瀬七星だ。小説家だよ」


「.....あー、クソ小説の」


このクソビッチ何でもクソクソ言うな。

俺は盛大にため息を吐く。

すると、ゴッド牧瀬が怒った様に言った。


「アンタね!ライトノベルをクソ扱いしないで!」


「ハァ?クソ小説はクソ小説でしょ。キモ小説だし」


「ハァ?何ですって?訂正しなさい!」


その様に睨みまくって文句を言いまくるゴッド牧瀬。

そして、クソ妹とゴッド牧瀬は睨み合って火花を散らした。

俺は再び盛大なため息を吐く。

そして2人を止めた。


「.....ハァ.....我が妹よ。ライトノベルをクソ小説と呼ぶのは止めろ」


「ハァ?お前、何様よ」


「お前が何様だ。俺は兄貴だ。ドアホ」


その様に呟くと。

我が妹はチッと舌打ちして、リビングに去って行った。

俺はそれを見届けてから、ゴッド牧瀬に向く。


「すまんな。俺のクソ妹が」


「まぁ.....アンタの妹だから仕方が無いわね。.....許すわ」


俺はそうか。

口角を上げて言った。

次に聞く。


「.....えっと、それはそうとまず聞かなくちゃいけない。何で俺の家の住所を知ってんだ?」


「言うなれば、とある情報筋から入手したわ!」


「.....」


満面の笑みで言うな。

俺ん家の個人情報ってどうなってんの?

いや、割とガチで。



「うーん。殺風景な部屋ね!」


「お前.....」


「何?下僕の癖に何か言いたい事でも?」


コイツ、勝手に俺の部屋に来やがった。

俺は頭に手を添える。

だが、まぁ。

これはチャンスかも知れない。

そらき、の現在の状態とかを引き出す、チャンスだ。

俺はゴッド牧瀬に向く。


「.....ゴッド牧瀬さん。.....上がるのは良いですが、お茶は出しませんよ」


「ハァ!?何だと思ってんのこの私を!」


当たり前だろ。

むしろ俺が色々とお世話になるべきだぞ。

思っているとプンスカ怒っていた、ゴッド牧瀬は。

ドカッと俺の勉強椅子に腰掛けた。


「まぁ良いわ。.....ところで、個人情報がどうとか言ってたわね」


「そうだ。お前は完全にストーカーと同じだぞマジで」


「ストーカーねぇ。ふふーん。私が貴方を探し当てたのはね、ネットサーチよ!この隣に宿敵が住んで居る事までバッチリ把握じゅみ.....」


痛がる中で赤面する、ゴッド牧瀬。

コイツ、噛んだな。

って言うか、マジかよ。

ネットサーチって。

俺はその様に思いながら、眉を顰めた。

本当に何なの?個人情報って。

しかも、宿敵って何だ。

俺は?を浮かべながら、ゴッド牧瀬を見る。


「.....この右隣は俺の幼馴染しか住んでねぇぞ。左隣は誰か引っ越して来ているし」


「アンタの幼馴染は敵なの!この隣には100万部も売れていて、しかも私の作品のアピール枠を小さく、小さくしている宿敵が住んでいるわ!男なのか女なのかは分からないけどね!だから打倒する為に私は左隣に住む事にしたのよ!」


「.....」


他にも作品は有るだろ。

2000万部という感じで売れているソード○ートオン○インとかよ。

完全な逆恨みじゃねーのか、それ。

俺は複雑な顔付きで盛大にため息を吐いた。

まだ聞きたい事があるんだが。


「.....何で俺を下僕にしたいんだ?」


「貴方を取れば宿敵を打倒出来る!将棋で言えば金将!チェスで言えば王様!トランプで言えばエース!私に勝ちが増えるわ!!!!!」


何を御託を並べている。

でも将棋って確か、飛車じゃ無かったか?強いのって。

まぁ、どうでも良いが。

その様に思っていると立ち上がって、そして手を広げる超美少女。

ヒラリと舞った時にスカート内が見えそうになった。

俺は赤面して、横を見る。

すると、ゴッド牧瀬は窓に気付いて。

窓から隣を見た。


「そう言えば、此処からは隣が見えるわね」


「.....見えねぇよ?一応言うけどな」


「そうなの?残念ね。敵のサーチをしたかったのだけど」


させるかクソバカ。

アイツはそういうのは嫌いなんだ。

俺は初めの頃、アイツが矢を撃ってきた窓から隣を見る。

やはり黒カーテンが閉まっており。

何も見えない。


「.....」


小説を書きながらでも元気なら良いんだがな。

また挨拶しよう。

その様に、思っていると。

ゴッド牧瀬がいつの間にかエロ本を読んでいた。

ha!!!!?


「.....アンタ.....ロリが好きなの?」


「何やってんだテメー!!!!!」


俺が隠していたエロ本を赤面で読んでいる、ゴッド牧瀬。

直ぐに俺は取り上げた。

ふざけるなコラァ!!!!!


「あのな!さっきからお前の自室みたいに行動すんな!ツッコミを入れるけど!」


「馬鹿ね。.....下僕の知り得る事を私が知るのは大切よ!」


何を言ってんだこの馬鹿野郎!!!!!

俺はその様に思いながら、赤面で胸元にエロ本を隠す。

そして、パンツを見られた女の子の様に睨んだ。


「.....お前な.....!」


「.....でもエッチね。アンタ」


「あのな.....」


俺はゴッド牧瀬に赤面で首を振り、眉を顰めて。

そしてエロ本を置いた。

それから、俺は再びゴッド牧瀬に向く。

真剣な顔をして、だ。

これだけは言わせてもらう。


「.....お前が敵視しているのは分かった。だがな。アイツは.....お前を敵には思ってないと思うぞ」


「.....何でよ?」


「アイツは.....そういうタイプじゃないからな。女の子だからだ」


ゴッド牧瀬はこの言葉に、見開いた。

俺は静かにゴッド牧瀬に真剣な顔付きをする。

そして静かに、龍の如く睨んだ。


「.....お前がもし、そらき、にマジで攻撃を掛けるなら、お前をボコボコにしてでも止める。容赦はしない」


「.....」


ゴッド牧瀬は。

俺の言葉に、へぇ、と言ってニヤッとした。

そして、口角を上げたまま呟く。


「.....ますます火が付きそうね。そんなに.....大切なのね.....隣の幼馴染ちゃんの事」


「.....」


俺は静かに見据え続け。

そして、ゴッド牧瀬を威圧した。

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