第7話 イラストレーター、撫子

俺の幼馴染、悠木そら。

現ラノベ小説家で、そらき、と言うペンネームでラブコメ分野で大活躍している。

推定発行部数累計100万部。

そして、シリーズは5作品。

全てラブコメで、アニメ化もされ、グッズも多く有り、ゲーム化もされている。

何故そういう事を知っているのかと言えば、簡単に言えば俺が電脳文庫だけだが、人気作の事に関しては抜かり無く調べているからである。

とある、 SA○のノーベルで、そらき、さんの人気作は本当に人気だという事を知っているのだ。

だがまさかそんな、そらき、の小説を。

俺の横に住んでいる幼馴染の、そら、が書いているとは思わなかった。

まさかの展開である。

そんな俺と、そら、は、そら、の部屋で対面して座り話していた。

昔の話とかしたりして。

今の話になる。


「.....ラブコメを書き始めたのは.....イジメが原因か?」


電話にその様に話す。

そら、は頷いて、ジェイソンマスクのまま言う。


『.....そうだね。イジメが原因だと思う。それでヤケクソになって書き始めたら.....カクヨムで電脳文庫に目を留められて.....拾ってもらって.....そのまま.....出版したって感じかな』


「.....まさか中学校でリア充謳歌していたお前が.....イジメを受けて本を出版しているとは思って無かった。本当に.....可哀想にな」


その様に呟き、俺は俯く。

本当に何もしてやれ無かった。

3年間、平凡と暮らしていた間に引きこもっていた事実を知らなかったのだ。

俺は馬鹿野郎だな本当に。

でも俺が立ち上がった所で何か出来たと言えば、出来ないだろう。

それを考える。

だが、それでも、と思っていると。

そら、が俺を見てきた。


『.....でも、考え込まないで。雄大は何も悪くないんだから』


「.....あのさ、そのボイスレコチェンジャーとマスクはかつてはずっと付けていたのか?」


『.....うん......そうだね.....その.....本当に人が苦手だったから.....でも本当に変な目で見られていたりしたね.....』


そうなんだな。

俺はその様に思って、そら、を複雑な思いで見る。

そら、はジェイソンマスクのまま、横を見る。

同じく横を見ると、そこには殴った様な、引っかいた様な、物を投げた様な、そんな形跡があった。

つまり、そら、が暴れた証拠なのだろう。

本当に思い悩んでいた証拠だ。


『.....今は精神科から出た薬を飲んでる。それで落ち着いてきたけどね』


「.....そうか」


俺は静かに、そら、を見続ける。

その時だった。

何か、そら、のスマホから音が。


ピンコーン


「.....何の音だ?」


『.....ん?.....ああ、出版社からのメールだね。.....早く続きを書いて下さい.....だって。あはは」


「.....」


いや、あはは、じゃねー!!!!!

続きって確か、出版物ってデッドラインとかあんだろ!?

ここまでは良いけど、あとは良くない的な!

それはいかん!


「続きを書けよ!?直ぐに!」


『だって雄大がお○んち○を見せてくれないから話を書けない。どんなものなのか見ないと.....』


「ちょ、何ぃ!?」


まさか。

いやまさかだろう。

俺のせいで刊行が止まっているのか!?

しかも、そんな理由で!?

冗談じゃねぇ!!!!!

ってか、マジで俺のせい!?


プルルルル


突然と掛かってきた電話に。

そら、は平然と対応する。

が、電話主は相当に慌てている様子で。

大声が聞こえた。

ここまで声が聞こえる。


「はい。そらきで.....」


『先生!もう直ぐ〆切です!!!!!原稿は完成しました!?送って下さい!!!!!』


「ちょ、思った以上にヤバいだろ!」


そらァ!!!!!

続きを書けぇ!!!!!


「まだ原稿完成してないです。あと40ページぐらい」


『いやいや、嘘でしょ!?みんな怒ってますよ!急いで下さい!』


「.....はい」


40Pも完成してないとかwww

俺は普通に頭を抱える。

その際、電話を切った、そら、に一言提案してみた。


「.....ネットで調べたらどうなんだ?その.....下半身の事を、よ」


『.....雄大のが良いの』


「何でこだわる!」


『雄大だからだよ』


意味が分からん事を話す、そら。

それから、横を見た。

俺はクエスチョンマークを浮かべる。

そのまま、そら、はトイレと言って立ち上がって。

それから、この部屋から去って行った。


「どういう事なんだ.....?」


その疑問だけが残され。

うーん、と唸っていると。

またもや、そら、のスマホが鳴った。

画面上にイラストレーター、撫子と表示されている。

何!?撫子さん!?

俺は驚愕しながらも、ハッとして。

直ぐに携帯を、そら、の元へ持って行った。


「おい、そら。イラストレーターさんから電話だぞ」


「.....」


「おい。そら」


「.....」


返事が無いってか、喋れないのか。

でもこのままってのもな。

俺はその様に思いながら、鳴るスマホを見つつ。

代わりにその電話に取り敢えず、出た。

ため息を吐いて、だ。


「.....もしもし?」


『おー。オレだオレ。撫子ですよー』


何だコイツは!?

噂によれば、確か、そらき、のイラストレーターって撫子と言いつつもおっさんだったと俺は聞いた筈だ。

かなり幼い幼女の声が聞こえる。

幼女だったのか?そらき、のイラストレーターって。

キリンさんはもっと好きですってかそのぐらいの声だ。

って言うか、古すぎか。

俺は眉を顰めて、話そうとする。

のだが、相手が真っ先に謎めいた声で話してきた。


『.....お前、何か男の声になってねーか?ボイスレコチェンジャー変えたのか?』


「あ、すいません。俺の名前は鋼雄大。あいつの知り合いです。撫子さん」


『うん?お前、彼氏か何か?』


何でや。

直球だな、オイ。

俺はその様に思いながらも撫子さんに赤面で首を振りながら答える。


「.....違います。.....あ、えっと、すいません。僕、撫子さんのファンの1人で.....凄い絵お上手ですよね?」


『ん?あ、おー。ファンか。見てくれてるのか。そらき、の作品。いやー照れるな』


「そうですね。感情表現が苦手なんすけど、コレでもかなり緊張してます」


『そうか。あ、えっとそうだった。そらき、居る?ちょっと打ち合わせたいんだけど』


ジャー、ガチャッとトイレの扉が開き。

そら、が出て来た。

俺を見つめ、そしてスマホ貸してとアピールしてくる。

直ぐに俺は渡した。


「もしもし」


『おー。そらき、えっとな。187ページの挿絵の件なんだけど.....』


「.....うん、うん。はい」


こう見るとマジで、そら、は小説家なんだな。

その様に見れる。

そして、そら、は俺の方を見てから。

ノーパソに向いた。

うむ、関心だ。

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