第5話 悠木そら/そらき、の秘密

脅された。

幼馴染に下半身を見せろと脅されて、そしてオネショの話を暴露するとか言い出しやがって。

こんな理不尽って有りなの?

可愛い女子の麗しき存在が消えていく。

幻滅だよ。


キーンコーンカーンコーン


丁度、昼休みが終わり午後の授業も終了した。

俺は大欠伸をして伸びをする。

そして呟いた。


「.....6時限目終了.....よし、帰るか。真」


「ん?恋人は一緒じゃなくて良いのか?」


「ちょ、お前まで!恋人じゃねぇよ!?」


あの一件。

つまり、俺の手を、そら、が引いて男子トイレに篭ったあの一件後。

教室では俺に男子から嫉妬の嵐。

そして女子はキャーキャー言っており。

悠木さんとは恋人同士だったんだ!と、全員から誤解される感じになっていた。


「.....お前まで言い出したら俺はもう.....」


「はは、冗談だって。でもさ、あんなもん見せられたら普通に考えて誤解するぞ?誰でも」


「そうなんだよなぁ」


俺は、そら、を見る。

そら、はさっさと準備して何処かに行こうとしている。

何かランニングシューズの様な物を持っている。

部活にでも入ったのか?

そんな、そら、は俺を一瞥して。


(約束忘れないでね)


そんな感じで去って行った。

周りに人を携えて、だ。

俺は盛大なため息を吐いて、そして真の肩を掴む。


「.....おい。ヒロインが主人公の下半身に興味示すアニメとか有るか?」


「無数には有るな。だけどTV放送では有り得んな。突然どうした」


「いや.....何でも無い」


とにかく今は。

家に帰って、そらき、さんの小説を読もう。

学校で読んでいたらバレてドン引きされてそれ以降、読めてないしな。

早く続きが知りたいのもある。


「.....真。早く帰ろうぜ。帰宅部の俺達は用済みだ」


「.....む、それもそうだな」


そして俺達は。

椅子から立ち上がって、学校を後にした。

通学路で真とアニメの話をしながら。

楽しい気分で帰宅した。



「.....あら。雄大くんじゃ無い!」


「.....あ、悠木さん.....」


夕焼けの下。

栗毛色の髪の毛に。

白髪混じりの、それで居ても流石は美少女の母親。

若々しい、女性が箒を持って掃除して居た。

俺は頭を下げて、挨拶をする。


「.....学校帰り?」


「.....そうっすね。悠木さんは.....」


「.....ちょっと周りが汚いから掃除ね」


そうなんだな。

そう思いながら悠木宅を見つめ。

悠木さんにふと、聞いた。


「.....そら、なんですけど、最近.....様子おかしくなったりしてませんか?」


「え?そら.....えっと、その.....いいえ?そんなには.....そら、に会ったの?」


「何かあったんですか?」


俺の問い掛けに。

悠木さんは困惑した、のだが、雄大くんなら。

と、直ぐに顔を上げて。

俺に向いてきた。


「.....雄大くん。貴方の存在は、そら、が喜ぶと思うわ。私の家の中で待って頂戴。帰って来るまで少し時間が掛かるけどね」


「.....良いんですか?ご迷惑じゃ.....」


「.....雄大くんなら大丈夫よ。ささっ。入って頂戴」


悠木さんに押されるがままに。

俺は悠木宅に入った。

お邪魔しますと、一言、言って。



「.....3年振りですね」


「.....そうね。後少しで帰って来ると思うわ。待って居てね」


古民家をイメージした内装。

木が幾つもあしらってあって、落ち着く空間。

俺はそんな中で、クッキーと飲み物を頂いていた。

時刻は午後6時。

丁度、部活が終わる頃だと思われる。


「.....何だろう。何で3年も俺に会ってくれなかったんだろう.....そら、は。嫌われてるのかな.....俺」


「.....」


3年間も一切、顔が見れなかったのは。

何故なのだろうか。

そうだな、今日ぐらいに謎が解決したら良いなぁ。

そんな淡い期待を持ったりもしているのだが。


「.....雄大くん。もし、もしよ?貴方が秘密にしてくれるなら言うわ」


「.....え?あ、秘密.....あ、はい!」


秘密には硬い主義がある。

特に知り合いなら尚更だからな。

俺はその様に思いながら、期待して返事をする。

すると、困惑しながらの様に悠木さんはポツリポツリと話した。


「.....そう。あのね......そら、はね.....その.....3年間、雄大くんに会わなかったんじゃない。会えなかったのよ。.....引き篭って外に出れなかったのよ」


まさかの言葉だった。

俺は直ぐに固まって、唖然とする。

何だ、どういう事だ。


「.....まさか.....」


「最初の方の高校で激しいイジメに遭ってね.....外に出れなかったの。そんな時、引きこもりの生活でネットを彷徨っているうちに、小説を書きたいって.....言い出して.....今の状態に何とか持ち直したのよ。あの子の掌は傷だらけ。自分で自傷していたの。今の自分が有るのは全ての自分を晒け出せる小説のお陰だって.....言っていたわ」


「.....」


3年間も引き篭っていたのか。

そんな事を何も知らないで俺は馬鹿野郎だな、本格的に。

何でそんなことに気が付かなかったんだ。


「.....あの子、実は小説家なの」


「.....え?」


「.....新人賞を受賞して、小説家になったのよ」


そんな馬鹿な。

俺は驚愕して、見開く。

クッキーを見つめながら。

見開いた。


「.....何処のレーベルか分かりますか?」


「.....それは.....電脳文庫で活動していると聞いたんだけど.....詳しくは聞いてないわ」


「.....」


俺は下唇を噛む。

そして考え込んだ。

まさか、まさか。

その様に、思っていると。


「それ以上は言わないで。ママ」


そら、の声がした。

俺を見て、そして真剣な顔付きになっている。

ベラベラ話したのが気に食わないのか?

そんな感じだ。


「.....そら!」


「そら.....」


「.....」


俺の顔は一切見ない。

そして、ジェイソンマスクを着けた。

電話を掛ける。


「.....もしもし」


『.....秘密を知ってしまったんだね』


「.....ああ。お前、大変だったな」


それでこんな感じなんだな。

俺は納得しながら。

若干に口角を上げて、話した。


「.....お前、スゲェよ。.....良く頑張ったな」


『.....べ、別に嬉しくないもん!』


そら、はその様に話す。

ツンデレかよ。

俺はその様に思いながら、そら、の様子を見つつ話した。


「.....電脳文庫で出版しているんだってな。お前、本当に頑張ってんな」


『.....別に.....嬉しくない.....』


「.....泣いても良いんだ。頑張ったな」


俺は電話口に。

その様に話した。

すると、ジェイソンマスク奥から。

ヒック、ヒックと嗚咽が漏れた。


『私.....私.....幸せが欲しかった、雄大に会いたかったのに.....』


「.....そうだな」


『でも、イジメのせいで.....外に出れなくて......久々に勇気出して雄大に電話して.....声が聞こえて.....めっちゃ嬉しかった.....』


「.....そうか」


俺は電話口から耳を離して。

そしてジェイソンマスクを着けた、そら、を。

ゆっくりと撫でた。

俺より8センチぐらい違う身長の、そら、を。

そら、は涙を隙間から見せていた。

そんな俺の後ろでは勇気さんが号泣していた。


「.....有難う、雄大くん」


「.....何もして無いっス。俺は.....」


これからは。

この子を、そら、を守っていこう。

そう決断しながら考えた。

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