ダクリア(仮題)

播臨(はりのぞむ)

第1話

 今朝も7月の強い日差しが降り注いできた。それでも学生ゆえ登校しなければならない。

 この街は2XXX年の地球をモデルとした太陽系外にある新太陽系の比較的新しい惑星アイサンにある。俺の住んでいる創成地区はその中でも特に最新の技術が採用されている。その為かこの地区に来る観光客達は大抵驚く。

 どういう技術なのかというと、例えばすべて自分の携帯内臓端末(スマートフォンよりも進化した仮想機能付き内臓デバイス)で何でもできてしまう。この携帯内臓端末はVSP(Virtual Smart Phone)という。VSP法というのがあり、この地区で生まれた人間にすべて等しく埋め込まれる。ただVSPが正式に稼働したのはほんの2年前からで、それまでの埋め込まれていない人達には簡単な手術で埋め込まれた。小さいICチップみたいなものなので痛みもほぼなく一瞬で済むので、俺自身は抵抗はなかった。ちょうど中等部在籍の時だ。埋め込まれてからは本当に便利になった。一方でVSP、VSP法に否定的な人達もいた。反対運動を繰り広げ、最終的に地区から強制退去。今も地区の外で反対運動を続けている。

 そして更にもう1つ交通機関もすべて1人1台のタクシーみたいなシェア小型車がある。このシェアタクシーはVSPの操作でワンアクションで現在地まで要請できる。VSPは内臓されているので空中に拡張される簡易ノートパソコンみたいなものを操作する。ちなみに学生は登下校での使用は原則禁止だ。

 長々と説明したが、暑さは変わらない。

「お~い!朋希~!」

と俺のことを呼びながら走ってきたのが、親友の小川晶斗おがわあきと。イケメンのくせに彼女がいるわけでもなく、かといって告白されまくっているのに作るわけでもなく、俺とずっとつるんでくれるやつだ。あ、一つ断っておくがこいつはホモではないし俺もいたってノーマルだ。

「おはよう晶斗」

「おっは~朋希」

おっと、自己紹介がまだだったな。俺の名前は真田朋希さなだともき。なんのとりえもない学生だ。学年は高等部1年。もちろん晶斗もだ。

「今日で前期終わるね~。」

「あぁ。」

「暑くない?」

「暑い。」

「機嫌悪いの?」

「いや、普通だ。」

大体いつもこんな会話になってしまう。なのに晶斗は飽きないのか、よく一緒に行動してくれる。感謝しかない。

 俺達が通う清爽せいそう学園の門が見えてきた。

「やっと着いた~。」

「あぁ。」

相槌しか打っていないが普段からこんななのだ。清爽学園までの会話でもそうだったように。

 この清爽学園は中等部から大学まである。高等部の場所が学園でも少し遠いところにあるのが少し残念だが3か月も通っていると慣れてきた。一応大学は外部に進学できるが、おそらく俺も晶斗も大学まで一緒になりそうだ。ただ俺はあまり成績が良くないので大学進学無事できる保証は……。

 さすがに勉強する分野は違って、あまりつるまなくなるかもしれないが、まだまだ先のことだろう、わからない。ただ、今はこの気の置けない仲が心地よく享受していたい。

「ずっとこんな感じでいられたらなぁ……。」

「どうしたの急に?珍しいじゃない、そんなこと朋希が言うなんて。」

「たまにはこういうこともあるのさ。」

下駄箱で高等部の内履きに履き替え、教室に向かう。

「朋希が普段と違うこと言ったから今日はなにかある気がする。」

「そんなわけないだろう。楽しい楽しい夏休みが始まるのさ。」

「たしか高等部1年の夏休みって課題がいっぱいあるんじゃなかったっけ?」

「フッ。課題なんぞ知ったこっちゃない。」

そう、俺は提出期限ギリギリまでできないし、学業の方は高等部進学に当たってもギリギリラインだった。

「もう、だめだよ。一緒にやろうよ。夏休みも会いたいし。」

やっぱりこいつホモなのではと考えたくなってきたが、親切心からだろう。

「今はその気持ちだけ受け取っておくよ。」

「提出期限ギリギリになってから泣きついてきても知らないからね?中等部時代みたいなのはなしにしてよね。」

そう、中等部時代はかなり無茶を言ったもんだ。でも最後までなんだかんだ言って付き合ってくれる親友トモ

「わかってるわかってる。高等部になったし噂の課題の量がきたら早々に手をつける。」

「信じていいんだね?」

「あぁ。」

と話しているうちに高等部校舎3Fの1-D教室についた。あえて触れなかったがもちろん晶斗と同じクラス《1-D》だ。この後終業式を挟んで、正午前には夏休みの開始だ。

晶斗が心配しているようなことなんで起こらないだろう。課題に泣くかもしれないが。



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ダクリア(仮題) 播臨(はりのぞむ) @RukiRinHaRi

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