7F:夢のはじまり

 話したいことがある。チーム小箕灘がクリスの召集に応じ、顔を揃えたのはジャパンカップの二日後だった。

 会議と言えばマルッコの馬房前でパイプ椅子を並べて、というのが定番だったが、今日に限っては事務所で机を挟んでの開催となっている。


「お時間をとらせてシマい、すみません」

「いや、いい。それで改まって話ってのはなんだ?」


 切り出したクリスに小箕灘が促す。クリスはタブレットを取り出し、クニオ、横田、小箕灘に見えるように置いた。


「ジャパンカップでの、マルッコの走りについてでス。横田サン。直線でクエスフォールヴに抜かれたトキ、何か違いませんでしたカ?」


 タブレットにはストリーム再生の途中で止められている動画が映っている。乾いた西日を浴びて走るサラブレッドの群。内ラチ沿い先頭付近を走る馬の額には白い丸型の星。言われなくともすぐに分かる。ジャパンカップの直線であった。

 クリスは何度か画面をタップし、映像をコマ送りにした。マルッコの足の動きがパラパラと進んでいく。

 ここです。ある時になって、クリスが口を開いた。


「どうですカ?」

「……うん。そうだ。この瞬間、足の使い方が一瞬変になった」


 横田は反芻する。残り200mを過ぎたあの一瞬。あの一完歩。故障を疑い、そうではなかったあの瞬間。


「レース後も話してたが、それはどういう具合に?」

「妙な、としかお話できません。手前を変えるのに失敗した、というのが一番近い表現だと思うんですが、それともまた何か違うような気がしていて」


 馬のギャロップとは人間に置き換えると片足飛びに近い。もっと正確に表現するなら一歩で上れない奥行きのある階段を上る時だろう。(山道とかに多い)

 最初の段を左足で上った場合、次の右足は同じ段を踏むため負荷がかからない。

 それを続けるうちいつか左足だけが疲労してくるはずだ。

 馬もこれに似ており、常からギャロップする時、足が接地する順番は固定されている。

当然人間と同じようにそのままではやがてどちらかだけが疲れる。

 そこで足を出す順番を変える。これを手前を変える、と表現する。競馬においては直線での追い込み時に手前を変える馬が殆どだ。

 直線で追い出したときに手前は変えたはずだが、それに似た何かが起きた、と横田は語った。

 小箕灘は唸る。


「何かに躓いたって線が一番納得できそうだが、そういう話ではないんだろう、クリス?」

「ハイ。私はこれに覚えがあります」


 ネジュセルクル、という馬をご存知でしょうか。

 沈痛な面持ちでその名を告げたクリスに、クニオが答える。


「ヨーロッパで活躍してた馬だよね。凱旋門賞で予後不良になった」

「ハイ。彼は私のパートナーでした。そして彼との生活の中で、一度だけ、このマルッコと似た事がありました。とてもよく覚えています。もしも原因が同じなら、解決したいと思い、今日お話しました」


 クリスが騎手生活を休んだ直接の原因である競走中止だ。その事件自体は横田も小箕灘も知っているし、そこから立ち直るために厩舎で働いているという事情も本人から聞いている。


「それはつまり何だ?」

「セルクルには特別な走りがありましタ。ギャロップよりも更に速く走る足運びが」


 言葉が難しいですが、と言語の壁に苦しみながらクリスがたどたどしく説明した内容は纏めるとこのような物だった。

 通常の馬は手前を変えてラストスパートをする。しかしネジュセルクルはそこから更に足の運び方を変えてもう一段階加速する事が出来た。その走りをやろうとして失敗した時、それにマルッコの状態は酷似している。


「つまり、直線で回転襲歩に切り替えようとしたってことか。言われて見れば、スタートの時と感じは似ていたかもしれない」


 横田はそのように理解し、それが正しい認識だった。

 馬が襲歩(ギャロップ)する場合の常の歩方は交叉襲歩と呼ばれ、後ろ肢から前肢にかけて順に右左右左と肢を繰り出すが、回転襲歩の場合右左左右と繰り出す。

 回転襲歩は馬が自然に走る場合、停止状態から加速する時に用いられる。競馬で言えばスタート直後の足運びだ。急加速、急旋回に有利な歩方で、短距離を得意とする肉食獣などはこの足運びで走る。実に理に適っている。


「それが本当ならすげぇ事だが、本当にそんな事出来るのか?」

「マルッコがそれをするのかは、分かりまセン。ただ、事実としてセルクルはそれを行い、レースを征していました。そしてこの走法には問題がありマス。背中から腰にかけての負担がトテモ増える事です」


 腰椎断裂骨折。そうか、それで、と横田と小箕灘の脳裏に閃くものがあった。


「セルクルと同じ丸い星を持って生まれたからなのカ、きっとこの走りがマルッコの持つ本来の走りなのではないでしょうカ。だからあの時、負けまいと足運びを変えようとして、失敗した……と私は考えまス」


 ネジュセルクルの額の斑白とマルッコのそれは良く似ている。それがクリスの心を癒した話も聞いていた。しかし、星の形が似ているからと言って安易に関連付けて連想してしまってよいものなのだろうか。何か別の理由があるのではないか?


「まあ、よく分かんないですけど、試してみたらいいんじゃないですか?」


 途中から理解する旨を放棄したきらいのあるクニオがあっけらかんとそう言った。


「……それもそうだな。明日のトレーニングで少し追ってみよう。何か変化があるのかもしれない。横田さん、明日乗ってもらっていいか?」

「はい。任せてください」

「今日はお話を聞いてくれて、ありがとうございました」

「いや、よく聞かせてくれたよクリス」


 いえ、俺は……。母国語で出た否定の言葉は誰にも伝わる事は無かった。

 翌日に持ち越しということでその場は解散となった。



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 マルッコの試走は利用者の多い朝の時間帯でなく、比較的人馬のはける昼下がりに施行された。


「それじゃあ一周回って直線で追ってみてくれ」


 敗北から明けたマルッコはふんすふんすとやる気十分に鼻息を荒げながら前足で砂を掻いている。その背に跨りながら、横田は頷いた。コース脇ではクニオとクリスも見守っている。

 いつものように滑らかな発進から加速。強くは追わず緩めのギャロップでコーナーを回る。あのジャパンカップの直線のようなおかしな手応えは今のところ無い。

 向こう正面に到達し、少し速いか、と横田がペースを落とそうとした時、それは起こった。


(なんだ……?)


 背中から伝わるやる気。気分任せに走っている時の追い出し合図のようなふわふわした物では無く、走らせてくれという鋭く強い意志。

 分かった。やってみろ。

 クリスの予想は正しかったのかもしれないと認識しつつ、コーナーを曲がる。

 さあ直線。何をやるのか見せてみろ。


 股下から膨れ上がった生命の躍動、力の波動、或いは生命そのものが爆発したかのような存在感。

 ぐんっ、と沈み込む馬体。伸びきった首と連動した前足が力強く砂を噛む。


(あ……)


 そこで横田の身体は宙を舞った。


 まずい、と思った次の瞬間、身体を丸め落下の衝撃に備えたのは長年の騎手生活の賜物であろう。背中から落馬した横田は何度か地面を転がり衝撃を逃がした。とはいえ痛いものは痛い。地面が砂で助かった等と考えながら顔を顰め膝立ちすると、何かが日の光を遮った。


「ひーん……」


 そのまま放馬してしまったかと思っていたマルッコだった。背中の相棒を放り出してしまい、慌てて戻ってきたのだ。

 めずらしく心底すまなそうな表情をしている僚馬に、横田は堪らず笑みを浮かべた。


「心配するな。どうってことない。むしろ俺の方こそ悪かったな。落ちちゃって。お前の方こそ大丈夫か?」


 鼻先を首元に押し付けるマルッコをあやしていると、クリス達が異変に駆けつけた。


「怪我はありませんかトモさん!」

「わかんないけど、骨とかは大丈夫そう。立てる……うん。立てるから平気かなたぶん」

「アトで病院に行きまショウ」

「ああ。それよりもクリストフ。君はあの状態の馬に乗れてたのか?」


 あの状態、とは落馬する直前のことだった。昨今主流のモンキー乗りは不安定な騎乗法だ。左右は言わずもがな、特に前後の動きに弱い。あれほど急激にバランスを変えられては、身体ごと吹っ飛ぶのも道理といえた。


「まさかマルッコがいきなり全力で走ると思いませんでシタ。注意しておくべきでした……スミマセン」

「いや、いい。それよりあれは……いや、やっぱりいい。こういうのは人に聞くより自分で感覚を作った方がいいな」

「横田サンがそれでいいのなら……ただ、今日はもう病院へ行きまショウ」

「そうしようか。小箕灘先生があわあわしちゃってるし」

「ほんとだ。センセイって気が小さいから、損害保険がーとか考えてそう」


 そういうのも含めて調教手当てがあるのに、と三人は笑いながら、マルッコを伴ってトラックを出た。

 こういう気分は久しぶりだった。落とされる心配など、横田は新人のころでさえ殆どしなかった。傍らでしゅんとしているマルッコの首を叩く。


「遠慮なんかするんじゃないぞマルッコ。勝つためだ。俺とお前で」


 ひんっ。分かったような、分からないような、そんな嘶きが師走も近い秋空に響いた。

 次走は年末の祭典、GⅠ有馬記念。

 そこには、先のジャパンカップ覇者クエスフォールヴも出走する。

 二度は負けない。人馬の瞳に炎が宿る。



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 須田から声を取ったら一人前。そんな格言が取材記者の間で囁かれるほど須田光圀という男は突飛なイキモノだと認識されている。

 須田は報道記者からの取材を基本的に断る事が無い。しかしそれと望みの情報を引き出せるかはまた別の話で、終始馬の愛らしさや普段の様子など、知りたい情報とはかけ離れたトークを繰り返すことも多い。

 曰く、話したいことを話すとああなる、との事で、取材を受けていただいている取材記者はありがたくその話を聞くべきなのだと。懐に入れるところまでは認めてやってるんだから、あとはそっちが何とか聞き出してみろよ、プロなんだろ、というスタンス。

 しかし情報を出し渋っているのかと言えばそうではなく、必要最低限のところはきっちり提示するのもまた須田光圀という男の頓狂なところ。

 その日も唐突に話は始まった。


「ああそうそう。ダイスケの次走なんだけどね、有馬記念になったから」

「は?」


 それまで日本競馬事情と海外競馬競馬事情について質問していた中で、突然ぶち込まれた話題だった。当然取材記者はついていけず頭が真っ白になる。

 それには構わず、須田は続ける。


「オーナーは説得済みでね。変則系だけど、ダイスケとマルッコ君でうちからは二頭出しって感じになるのかな?」

「あ、え? いや、その、ダイスケというのは、あの、ダイランドウのことで?」

「そうだよ。ダイスケって人間が有馬記念を走れるわけないじゃない」

「あの、ですがダイランドウ号は春のクラシックから短距離に転向していましたよね?」

「別に馬が2500m程度の距離を走れないわけじゃないでしょう。馬から言わせりゃ2400だろうが3000だろうが短距離だよ。中山の右回りだって皐月や弥生で経験しているし、問題ないね。今となってはクラシック走っておいてよかったとすら思うよ」

「え、えぇ……?」

「俺は勝つ気マンマンだよ。オーナーもノリノリだしね。それにね、俺は思うんだよ。年

末のドリームレースって言っといて、昨今じゃ勝てないと見るやすぐ回避じゃん。昔はマイルの馬だって有馬にガンガン使ってたよ。他に、例えば香港とかドバイにも優秀なレースプログラムは出来たけどさぁ、やっぱ日本で一番決めた方が盛り上がるじゃん。

 ダイランドウは強いよ。秋に古馬と戦わせて改めて思ったけど、こいつはすげぇ物もってるよ。

 日本の競馬と海外の競馬事情って話だったよな。日本でも海外でもスペシャリストが得意の距離走って強いのなんか当たり前じゃん。なら、そこから違う距離に、違う物に挑戦してこそ明日の競馬が、延いては日本の競馬が盛り上がるんじゃないのか。

 だってあのダイスケが有馬に出走だぞ? あんた、そんなの面白いに決まっているぜ」


 いつの間にやら自論を展開していた須田に記者はなんとか取り付いて取材の体を取り繕った。

 とにもかくにも、安田記念二着、スプリンターズS一着、マイルCS一着。稀代の短距離暴走馬ダイランドウの有馬記念参戦その第一報は、このような形で世にもたらされた。


 短距離三歳王ダイランドウ、有馬記念参戦!



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「えっ、ダイスケを有馬に使うんですか?」


 おうよ。と自身有り気に頷く須田に小箕灘は口をあんぐり開けて驚かされた。

 師走も中旬。時折襲い掛かる猛烈な寒気が、冬の寒さを無理やり思い出させにかかっている。外仕事を終えた小箕灘がストーブの点いた事務所へ戻ってきてみれば、須田からダイランドウの有馬記念を伝えられたのだ。


「あいつに有馬は長くないかい須田さん」

「俺の見立てじゃイケるね。ダイスケは夏頃から、つーかマルッコ君と併せてから息の入れ方っつーもんを覚えてくれてねぇ。中山は知らない道じゃない。十分チャンスあると見るね」


 傍らの大河原を見やる。目を見開いて驚いている。どうやらこの様子では聞かされていないらしい。


「センセイ! ダイスケを有馬にってどういうことですか!?」

「今言ったとおりだよ。別にいいじゃん。どうせ冬の間はレースないんだし」

「え、いや、え、いや、え? いやそうかも知れませんけど、逆に無理でしょ!」


 普通に無理だろと訂正しつつ小箕灘も内心同意する。


「オグリだって本質的にはマイルの馬だったのに有馬に勝ったじゃねえか。ダイスケが有馬勝ったっておかしくねぇだろ。同じマイルCS勝ち馬だぞ」

「え、えぇ……? それは無理やりすぎやしませんか? ダイスケはどちらかといえばスプリンターよりの馬だと思うんですが」

「ガワラよぉ。ダイスケがそう言ったってのかよ」

「そりゃ言いませんよ馬ですから」

「じゃあイケるんだよ。それに調子も悪くねぇ。今日だってマルッコ君と元気に駆けっこしてたじゃねぇか」


 仲良し二頭は今日の予定(キャンター)を芝コースで終えている。加減というものを覚えた両雄は程ほどにじゃれあいながらトラックを駆けた。以前から比べれば、確かにそういう様子を見て成長したと言えなくもない。それにしたって思い切ったな、と小箕灘は思わずにいられなかったが。


「とはいえレースじゃどうなるか分からないな。距離の違いはあれど、基本的にマルッコとダイスケは脚質が似てるから、お互い潰しあいなんて事にならなきゃいいが」

「あー、それは不毛だなコミさん。折角2頭出しなんだし、お互いに利益があるように上手くやろうぜ」

「こういう形でも2頭出しになるのかな」

「しらねぇや」

「まぁスタートからビッチリ併せにならなきゃなんとかなるんじゃない。内枠で隣同士とかになると、夏の悪夢が蘇るわ」

「2頭で暴走、仲良く撃沈なんて笑えねぇもんな」

「案外それで逃げ切れるか?」

「そこまでクエスは甘くはねーだろ」

「いやいや案外ああいう馬って逃げ馬に負けるんだって」

「それいったら今年は後ろからでもキャリオンナイトがいるだろ。あれだってハマれば大したタマだぜ?」

「府中で差し損ねてんだから中山じゃ無理でしょ」


 そうした会話は全国津々浦々で競馬ファンが繰り広げる内容となんら変わったところはなかった。

 調教師と言えど、競馬は好きだ。競馬が好きだから人生を捧げているとも言える。

 勝ちに行くのは当たり前。

 勝ちに行くのは当たり前。しかし、誰であろうとも、ドリームレースはワクワクするものだ。

 今年も有馬がやってくる。


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有馬記念 part3



443 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxi3u0

今年のメンバーは古馬中心にまずまず充実か?



446 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxccI0

ジャパンカップと別路線だといまんとこ

エリ女から

スピーシーハイ(一着

ワンダースピン(三着

秋華賞から

コトブキツカサ(桜花賞と二冠

アルゼンチン共和国杯から

グリムガムジョー

ステイヤーS

ロバーツ


これにJC組と三歳牡馬組み



447 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxvBu0

今年は牝馬が多めか?



450 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxijX0

最終的にどうだかわからんが3頭なら例年並みかね



456 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx/0j0

どっちかというとロバーツが有馬に来たのが意外といえば意外



458 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx1zA0

コトブキが有馬出る←まぁわかる

ワンダースピンが有馬出る←よくわからない



461 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxyTr0

別にでたってええやろ

ドバイ行けとかそういう話?



462 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx90X0

出走表明追加

JC組

クエスフォールヴ◎

サタンマルッコ◎

キャリオンナイト◎

モデラート◎

ヴェルトーチカ△


秋天組

ラスリテイク○

オリジナルランク○

ホーンバンガード◎


三歳牡馬

サタンマルッコ◎

ストームライダー×

スティールソード×



464 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxKJ30

本音言うとライダーにでてほしかったが、結果見ると香港カップで正解だったな。

5馬身差だぞ。やっぱあの馬つええよ。



477 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxbkr0

ライダーは本質的に中距離馬だったってことなんかな

そう考えると皐月の圧勝も納得がいく

春の大阪杯とかS氏に逆襲あるで



483 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxdmn0

三歳世代の覇者サタンマルッコ……うう~んこの不安感

俺達はこれからこの世代をサタン世代と呼ぶのか


ええやん(中二感



489 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx/jo0

しかしS氏もJCで底が見えた感じがあった

ああなると負けるみたいなビジョンが出来た



499 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx2uu0

あれクエスフォールヴが楽々差してるように思えるけど時計すげー速いからな

勝ちタイム2:22.7だぞ

他の馬ぜんぜんだったじゃねぇか



506 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxdyU0

うっかりキャリオンナイトに差されそうになってたのはちょっと草



509 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx3sQ0

他が潰されてたの見ると世代で抜けてるってのは間違いなかろうぜ

大正義クエスに叩き潰されたけど

てかこいつで勝てない凱旋門ってなんだよほんと



515 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxdyU0

宝塚から比較すればモデラートには差されなくなった訳だしな

ただなんか、正体のしれたパニック物のモンスター的なガッカリ感はある



516 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxbbJ0

これからの馬だろサタンは



520 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxolm0

父系考えたら晩成説あるくらいだしな








577 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxwRr0

【速報】ダイランドウまさかの有馬参戦



578 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxndN0

は?



583 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxwqp0

ソース



584 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxwRr0

ほらよ(URL***)



589 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxffv0

まじだwwwwwwwwwww



597 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxSdh0

盛wwwりwww上wwwがwwっwwてwwwまいりましたwwww



600 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxvce0

まさかすぎるぞwww



601 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx4460

いやむりだろ(真顔



602 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxErd0

さすが須田っち! 俺達には出来ないことを平然とry



603 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxwxd0

さすがにダイランドウに有馬は長いだろwwww



611 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxg7i0

内枠に入ったら面白いぞこれ



614 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxfgd0

悲報、有馬記念、ハイペースが宿命付けられる



616 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxx09y0

1000m57秒とかで通過しそう



620 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxwqz0

サタンマルッコとダイランドウ、安田記念前……うっ頭が



622 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxja50

あれ結果的にS氏だけがガレてダイランドウは元気一杯なのクソ笑う



627 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxna00

いやおまえ折り合いつける調教した(キリッとかいって2000でダメやったやろ



628 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxfgh0

記事曰く春とは比べ物にならない程成長した(ドヤァ らしいぞ



629 名無しさん@競馬板 20NN/12/18 ID:xxxxxkjy0

短距離路線からの有馬参戦は嬉しいけど、コイツは正直どうなんだw





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 ばっちゃばっちゃ。

 栗東トレーニングセンタープール調教施設の水面には不気味な三角形が浮かんでいた。

 しっとり濡れて黄土色に染まったその三角はすぴすぴと音を鳴らし、時折赤い割れ目を覗かせている。


「マルッコ、そろそろ上がるぞ」

「ぶふぉー」


 菊花賞馬、サタンマルッコその馬である。

 厩務員クニオに連れられ、マルッコは今日もプールでのトレーニングに励んでいた。

 競走馬の水泳設備は一周約50mの円形コースで存在する。

 心肺機能の向上、調教のクールダウン、或いは単純に遊びとしてのストレス解消などを目的として選択される調教だが、最大の利点は浮力により地面に足を付けず運動が可能、つまり足元への負担が無い事であり、足を故障した馬のリハビリとして使用されることが多い。トウカイテイオーが骨折後ブランク一年で有馬記念を征した際に使用された調教として有名だ。


「にしても、毎日毎日よくそんだけ泳げるねー丸いの」


 施設の監視員の男が呆れたように言った。


「地元じゃ毎日海を泳いでましたからね」

「どーりで堂に入った泳ぎをすると思ったわ」

「たぶん200m水泳のレースがあったら世界一ですよ」

「んなもんまず馬用の水泳コースがねーべよ」

「仰るとおりで」


 スロープを通って陸に上がったマルッコが体を震わして水滴を飛ばす。後でしっかり洗いなおすとしても、水の滴る状態でうろうろする訳にもいかないのでタオルで拭ってやる。マルッコは「世界を縮めたはー」と成し遂げた顔でされるがままだ。


 有馬記念はいよいよ週末に……5日後に控えている。そんな中小箕灘陣営より出走するサタンマルッコはトラックでは殆ど走らず、調教の殆どをプールでの水泳でこなしていた。

 プール単走3時間。それで身体が作れるのかと当事者以外の見守る誰もが考えていたが、不思議な事に馬体の仕上がりは良好であるように映る。羽賀時代の調教での不真面目さと自主トレでの勤勉さを知るクニオが居なければ成されなかった調教プランではある。


「丸いの、足元悪いんか?」

「いいえ? ただちょっと有馬に勝つための秘策というか、そんな感じです」

「ほー。そら楽しみにしとくわ。有馬頑張ってな」

「はい。ありがとうございます。それじゃあ今日は戻りますね」



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 サタンマルッコ故障説。ジャパンカップのゴール後、鞍上横田友則がすぐに足元を気にして下馬した事、有馬記念へ向けての調教で一切時計を出さなくなった事から囁かれ始めた噂だ。

 そんな中であったので、12月21日、有馬記念に対するサタンマルッコの最終追い切りの公開調教には大勢の報道陣が詰め掛けていた。

 コースはお約束のEダートコース。6ハロンの軽めの調教が予定されていた。

 果たしてサタンマルッコは元気な姿を見せた。滑らかなスタート、回転が速く力強い前脚の掻き込みで向こう正面からコーナーを回り、そして宣言通り終始軽い足取りで記者達の前を横切ってわった。

 タイムは6F-80.7秒ラスト1F12.4秒。元より追い切りで走るタイプの馬ではなかったが、GⅠを勝った馬にしては反応に困る数字だった。


「調子? 絶好調とはまた違うけど、いいと思いますよ。ジャパンカップ並みの走りは期待していただいて結構です」


 サタンマルッコの調子はどうか? という質問に対する小箕灘調教師の回答だった。


「サタンマルッコ号は今回中山競馬場で初めてのレースですが、その辺りはどのようにお考えでしょうか」

「特に問題ないでしょう。小回りで言ったら阪神競馬場で散々やってますしね。それにこの馬のフットワークで走れない競馬場なんてないと思ってます」

「目下一番人気とされるクエスフォールヴですが、勝算はいかがでしょう」

「もちろん出走する以上は勝ちに行きますよ。前回のジャパンカップでは完敗でしたからね。負けたままでは終われません。人馬ともにやる気十分なので、ここで雪辱を晴らします」


 常にない強気な発言に報道陣がどよめく。


「横田騎手。本日が最終追い切りでしたが、背中に跨ってみてどのような感触を得られましたか」

「今日は軽めだったので、いつも通りですね。ただ、ここまで三週間、ずっと気持ちが切れずに続いているというのは感じていたので、本番でも良い結果を残せると思っています」

「それは勝利宣言ということでしょうか?」

「いや、僕が強気なこというと負けちゃうので、そこまでではありません」


 そう告げた横田の顔には、確かな自信が浮かんでいるよう報道陣には映った。



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 有馬記念は競馬の祭典としての側面を強く持つ。

 世代を越えた名馬が激突するその年の競馬を締めくくるレース。そうした理念の下にあるドリームレースであるからで、これまでも数々のドラマを生み出してきた。


 ともあれ、お祭りであるからに。そこには普段のレースでは見ることが出来ない特別な催しがいくつかある。暮れの中山は地域を上げてのお祭り騒ぎであるし、中山競馬場はダービーもかくやの出店の数々。

 そうした盛り上がりの一つとして近年催されるようになった物。それがテレビ番組での公開枠順抽選会だ。



▼▼▼



「12月25日。クリスマスに彩を添える有馬記念の公開枠順抽選会が間もなく始まります。今年で第N回目となるこの抽選会、今年からはウェブでの同時生中継も行われており、只今、この会場の模様は各種衛星放送、さらにニマニマ動画などでご覧頂いております」


『見てるニキ~www』『すみかたんぺろぺろ』『大本営発表視聴者100万人』『うおおおおお』『ようお前ら』『有馬の生中継が見れるとはニマニマも偉くなったもんだ』


 画面に流れる文字列の数々。視聴者によるリアルタイムでのコメントが表示されているのだ。その様子は、司会者の傍らに設置されたモニタでも確認する事ができるようになっている。

 女性アナウンサーから言葉を引き継ぎ、男性アナウンサーが口を開く。


「今年も出走する"全"陣営から調教師、騎手、その他関係者の皆様にお集まりいただく事が出来ました。誠にありがとうございます」


 カメラが会場を映す。厳粛な空気の中、600人は詰め込める広大なホールに沢山の競馬関係者、そして壁際には中継の撮影機材やスタッフがずらりと並んでいた。


 スクリーンに映像が映し出される。

 それはルドルフが、ブライアンが、グラスが、クリスエスが、ハーツが、フリートが、中山の直線ターフを一着で駆け抜けるシーンだ。


「強いものが勝つのか、大駆けが起こるのか、暮れの中山大一番。有馬記念はここから始まります! 第NN回有馬記念、公開枠順抽選会ですッ!」


 盛大な拍手と共に開催が宣言された。


『わー』『8888888』『海老名激怒』『服wwww』『おー』『切れんのはええよ

ww』『さっきちらっと映ったけどもう切れてた』


「改めまして競馬ファンの皆様。今年はウェブ中継も始まりまして、ウェブを通してご覧になっているファンの皆様も多いことかと思われますが、有馬記念の公開抽選会でございます。もうすでに、沢山のコメントを頂いていて、その盛り上がり足るやまさに競馬の祭典の名を冠するに相応しいものであるように思います」

「ちょっと盛り上がりすぎてる感もありますよ! そんな調子だと抽選まで持たないので少しクールダウンしていきましょう」


『はーい』『はーい』『おk』『はいすみかせんせー』『はーい』『うんわかったー』


「今年も全陣営の関係者の方々が一堂に会す有馬記念抽選会。各陣営、くじ引きに対する気合の入りようも一入でございましょう。特にね、コトブキツカサ陣営の……なんでしょうね、もう絶対にいい枠引いてやるぞ、という意気込みが先程からヒシヒシと感じられましてね、それが会場に伝播して緊張感に満ち溢れておりますね」


『コトブキ海老名』『海老名ァ!』『8枠の男海老名』『海老名8枠』『名前がもう外枠だもんな』『海老名の服wwww』『真っ赤なスーツとかなんなのw』


「さて、ここでゲストのご紹介です。JRA元騎手の岡田順平(おかだ じゅんぺい)さんと、競馬中継でもお馴染み、今年ようやくダービー解説家になった竹中正平さんです。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

「やぁよろしくお願いしますねぇ」


『ダービー竹中』『皇帝岡田』『岡田爺また髪薄くなったな』『また髪の話してる……』


「今年もフルゲート16頭の出走馬にて開催されます有馬記念。持ち味を生かすための枠順はそれぞれ異なりますが、それでもねぇ、竹中さん。やっぱり外枠なんかは引きたくないものですか」

「えぇ。有馬記念の外枠なんかはねぇ、もうはっきりデータ出ちゃってますからねぇ。平等にならないのはおかしいっていう意見も御座いますがね、まぁなるモンはなるで仕方ないものですから。今日の関係者の皆さんの顔つき見てくださいよ。レース走る前より緊張してますよ」

「特に、海老名ジョッキーなんかね、警戒色かってくらいすごい色のスーツ着てますよ」

「ん? あぁ今マイクが海老名騎手に手渡されます」

「あ、どうも海老名外志男(えびな としお)です。でもね、今日は私海老名外志男じゃないんです」

「と、申しますと?」

「このね、何の因果か過去5回この抽選会に参加させて頂きましたが、全部8枠だったという結果を受けましてね。特に前回の抽選会では1枠か8枠かの二択で8枠を引いてしまったという事でね。このたび、今日に限って改名いたしました。

 昨日までは外を志す男でトシオでしたが、今日は内を志す男でウシオです。

 ラッキカラーは赤。海老名内志男です。本日はどうぞよろしくお願いいたします」


『wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww』『名前ごといったwwwwwwwww』『そこまで気合入ってんのwwwwwwwww』『8枠海老名』『\ウシオ

ァ!/』


 会場も笑いに包まれ、フラッシュが焚かれる。


「凄まじい気合を見せていただきました。海老名ジョッキー。

 さぁ、それでは、第NN回を迎えます有馬記念、出走馬並びに各陣営をご紹介してまいります」

「黄島さん、よろしくお願いします」

「はい。それでは出走馬、各陣営、順にご紹介してまいります。

 ファン投票一位。クエスフォールヴ。道行重文調教師。ダミアンロペス騎手。佐々岡忠オーナーです」


『佐々岡だ』『エース佐々岡』『佐々岡ほんとふけねーな』


「ファン投票二位。サタンマルッコ。小箕灘健調教師。横田友則騎手。中川貞晴オーナー

です」


『オーナー緊張しすぎだろww』『人間の方のS氏』『馬の方がこの場でも落ち着いてそう』『横田お前なにわろてんねん』『人間の方のS氏死にそうな顔してる』


「続きまして――……




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 各陣営の紹介が続く中、気の短いじっとしてられないウェブの住人達は速攻で飽きてそれぞれ競馬談義を始めていた。


『今年の忖度枠はどれかな』

『やっぱクエスじゃねえの』

『別に逃げ馬でもねーし内枠いらなくね?』

『内がいらないというか外枠じゃなきゃどこでもいい』

『難易度低いな』

『先行勢が多いから半端に内側とかだと挟まれてそのまま包まれるかもしれん』

『そういう話始めると1枠も結構ヤバイ』

『出の悪い馬だと逆に4枠くらいがいいとかあるしな』

『すまん競馬初心者で枠とか気にするの今回が初めてなんだがなんで内だといいの?』

『たぶん後で司会から解説ある毎年やってるし』

『すげー簡単にいうとスタート直後にコーナーがあって、その上曲がる回数が多いから』

『ふーんじゃあ解説待っとくわ』

『おうそうしろ』

『改めて出走馬見ると逃げ馬多いな』

『そいつら的には内枠がいいだろうな』

『S氏とかスタートいいし1枠引いたら勝ったようなもんだろ』

『劇場型競走馬サタンマルッコが無難に1枠引くわけないだろいい加減にしろ』

『雪は降らないだろ→ふった 雨はどうかな→当日大雨 出遅れんやろ→出遅れた 何故なのか』

『むしろまた出遅れる説』

『忖度民ウキウキ』



「……――以上、出走16頭各陣営のご紹介でした」


『お、やっと終わった』

『やっと抽選か』

『待ってた』

『今年も抽選順→馬番か?』

『いつだかのスポーツ選手に引いてもらうやつ結構好きだった』


「有馬記念は中山競馬場、内回り2500mを舞台に繰り広げられます。

 この中山2500m内回り、かなり癖の強いコース設計になっており、スタート直後150mに最初のコーナー。そこから数えて合計6回コーナーを曲がり最後の直線ゴール前では急激な上り坂が待ち構えるテクニカルなコースとなっています。

 大雑把に言って内々を進めた馬の走行距離が2500mとして、外々を回らされる馬は2520m程を走る事となります。日本の競馬場では4回曲がるレースが基本とされていますが、この有馬記念では6回曲がるため、コーナーリングでの位置取りが他のレースよりも結果に影響しやすいのです」


 スクリーンに投影される中山コースの走路。一般的なオーバルトラックからはみ出した位置からスタートし、すぐさま3コーナー。そこから内側を走る青い矢印とその外を走る赤い矢印がぐるっとトラックを一周して最後の直線までを駆け抜けた。


「当然各馬内々を目指す訳ですが、ここで問題となるのがスタート直後150m地点にある最初のコーナー。ここまでの距離が非常に短いため、コーナーの内側に近い内枠の馬がコーナー侵入までの距離で大きなアドバンテージを得ます。故に各陣営がこうして気合を入れて有馬記念の枠順抽選会に挑み、我々はそれを面白がっているというわけです。

 さてここで、肝心要、抽選方法のご説明にまいります。ステージ中央をご覧ください」


 ステージ中央には半球状のボウルに入れられたカプセル、それが収まった台座が二つ鎮座していた。


「すっかりお馴染みとなりつつありますが、片方のカプセルには出走登録馬の名前が。もう片方のカプセルには馬番号が。手順といたしましては、この後お呼び致しますスペシャルゲストに出走登録馬の名前が入っている方のカプセルを引いていただき、その後各陣営の皆様をステージにお呼びして、馬番号の入ったカプセルを引いていただきます」


『お、いつものやな』

『変に凝ったやつはめんどくせーからな』

『射的じゃだめなん』

『狙いつける系は忖度が疑われるからNG』

『まあ引く順番くらいは別にいいと思うけどな。実際三年前そういうアレだったしw』


「さあそれでは最初のカプセルを引いていただくゲストをお呼びしたいと思います。

 昨年騎手生活を引退したこの方! 竹田幸四郎さんです! どうぞー!」


『コウシローwwwwwww』

『お前かよwwwwwwwwwwww』

『竹田弟wwwwwwwwwww』

『コウフォローさんwwwwwwwwww』


「幸四郎さん、この有馬記念にプロモーターとして参加。どんなお気持ちですか」

「いやぁ、騎手引退した時はまさかこっち側に来る事になろうとは思っても居なかったんでね。皆さんお前かよって思ってませんでした? 僕だってそう思いますよ」


『エスパー幸四郎』

『貴様見ているな』


「うーんこっちから見るといい眺めですね。特にね、兄ちゃん(竹田豊)の命運握ってるのかと思うとこう、ワクワクしますね!」

「大変お兄さん想いな幸四郎さんな訳ですが、さて。それではそろそろ運命のお時間にま

いりたいと思います。幸四郎さん、ステージの中央へ。

 さて、ここで改めて出走登録馬のご紹介をいたします。すみかさんお願いします」

「はい。ただいまスクリーンにも表示されていますが、こちらは現在五十音順で並んでいます。これらがこの後抽選された馬番ごとに並び替えられていくことになります。

 では出走各馬をご紹介します。

 ヴェルトーチカ

 オリジナルランク

 キャリオンナイト

 クエスフォールヴ

 グリムガムジョー

 グレーターミューズ

 コトブキツカサ

 サタンマルッコ

 スピーシーハイ

 ダイランドウ

 ボーンバンガード

 マネルハネルミノル

 モデラート

 ラスリテイク

 ロバーツ

 ワンダースピン

 以上の16頭でもって有馬記念の出場馬でございます」


『緊張してきた』

『S氏1枠引いたら全財産ぶっこむ』

『実際1枠引いたらサタン負ける要素なくね』

『パンツ突っ込む』

『突っ込まれるのはパンツの中なんだよなぁ』

『くさい』

『すみかたん可愛い』

『マルッコ君のほうが可愛い』

『お写奴』


「絶好枠1枠を引くのはどの陣営か! それでは幸四郎さん。まず一次抽選をお願いいたします!」


『引くぞ』

『こういうくじって先と後どっちがいいんかね』

『さんすうニキおしえて』

『俺は後。理由は席替えでクラスの好きな子の隣になったから』

『すきあらば自分語り』

『どうせその子泣いて再抽選だろ』

『確率的には同じだが、相手に決められるのと自分で決められるのの差があるわなw』


「はい……キャリオンナイトです!」

「でましたキャリオンナイト! それではキャリオンナイト陣営の皆様ステージへお越しください」


――キャリオンナイト。時々炸裂する豪脚で世代を賑わせた7歳馬。あわやと思わせたジ

ャパンカップの再現なるか!?


『お、キャリオンか』

『こいつは後ろからだから枠とかどうでもよさそうだが』

『出が悪いから内側すぎるのも考え物だな』


「さて、くじを引くのは和田泉(わだいずみ)調教師か、八源太(はち げんた)騎手か」

「あ、八騎手が引くようですね」

「八騎手。トップバッターですが今のお気持ちは」

「あう、き、緊張しています」

「16番、全て空いていますが、狙う枠は、何番でしょうか」

「えと、あの、この馬、は、出があまりよくありませんから、包まれないような枠がいい

です。はい」


『八君有馬初騎乗か』

『というかGⅠもこの間のジャパンカップが初騎乗』

『もじもじしてムカツクが自分が22の時もこんなもんだったわ』

『普通に緊張するだろこんなんww』

『緊張しててもくじは引けるべ』


「それではどうぞ!」


 ごそごそとカプセルを掻き混ぜて一つを取り出した八。


「…………ひっ」

「あーッ! 16番ッ! キャリオンナイト16番ーッ!」


『しろめをむいたはちげんたぁーッ!』

『wwwwwwwwww』

『1/16引くくじ引きの天才wwwwwwwwwww』

『才能才能&才能wwwwwwwwwwwwwwww』

『これは一生の思い出wwwwwwwwww』

『海老名の後継現るwwwwwwwwwwwwwwwwww』


「テーブル席で待つ各陣営もこれにはニッコリ。特に海老名騎手の笑顔が眩しい!」

「これで8枠が一つ減りましたもんね」


『そういう時に仕事をするのが海老名という男だ』

『トシオじゃだめだがウシオとなった海老名は無敵だ』

『まだ引いてすら居ないのにw』


「さあまさかの立ち上がりとなりましたが、続いてまいりましょう。幸四郎さん、お願いします!」

「はい……次は、この馬です!」

「サタンマルッコ! サタンマルッコの文字! 陣営の皆様ステージまでお越しください」


『S氏キター!』

『サタンきた』

『劇場型の本領みせてくれ』

『ここで15番埋めて海老名を助けて』

『テーブルで待ってるオーナーが緊張しすぎて顔白いんだが大丈夫なのか』

『いいか内だぞ内、いらんことするなよ内でいいからな絶対内だぞフリじゃねえぞ』

『ノルマは3枠以内1枠で確勝』


「サタンマルッコ陣営にお越しいただきました。さて、引くのは小箕灘調教師か、横田騎手どちらでしょうか」

「んーやっぱセンセイ引きませんか?」

「え? いや横田さん引くって話にしてただろ」

「オーナーの奥さんがなんかその方がいいって仰ってたので」

「あーじゃあ、引きます」

「おっと謎の信頼感があるオーナー中川氏の夫人。小箕灘調教師、狙うはずばりどの番号でしょうか」

「外じゃなければ、といったところなんですが、まあ外なら外でマルッコと横田さんがダービーの時みたいに何とかしてくれると信じます」

「いやぁ、有馬はちょっときついかなぁ……」

「と、横田騎手も苦い表情ですが、それでは引いていただきましょう。どうぞ!」


 くじに手を突っ込む小箕灘。無造作に掴んだカプセルを開く。


「……1番ッ! 逃げ馬サタンマルッコ1枠1番の絶好枠!」


『勝ったwwwwwwwwwwwww通帳とってくるwwwwwwwwwwwww』

『勝ったわwwwwwwwwwwwwwww』

『金かりてくるわwwwwwwwwwwwwwwwwww』

『サタンマルッコ銀行開店ーーーーーー!』

『気分いいから今日は焼肉いこ前祝いだ』

『ツエwwwwwwwwwwwww』

『勝利確定wwwwwwwwwwwwwwwwww』

『預言者中川夫人wwwwwwwww』

『考えておくか、払戻金の使い道……!』

『このざまでPSプロぽちったわ』

『法則不発wwwwwwwwwwwwww』

『やっぱいくらなんでも毎度なんかやらかすわけねーべ』


「いや、凄いところを引き当てました小箕灘調教師。むしろ中川夫人の慧眼ズバリといったところなのでしょうか」

「あ、センセイ、オーナーが喜びすぎて気絶してますよ」


『S氏wwwwwwwwwwww』

『人間の方のwwwwwwwwww』

『完全にアヘ顔ダブルピース』

『ほぼいきかけてる』

『いやこれ意識いってますわ』


「絶好枠を掴み取り、本番へ向けて弾みをつけましたサタンマルッコ! それでは次の抽

選へ行きます。幸四郎さんお願いします」


『いやーこりゃサタン勝ったな』

『どうせ5~6枠とか微妙なとこだろうと思ってたけど1枠サタンはさすがに逆らえない』

『府中ならとにかく中山なら負ける要素ねえだろこんなんw』


「ダイランドウです! 陣営の皆様ステージへおあがりください」


『ダイランドウか』


「須田調教師としてはどの番号を希望しますか」

「ンーそうだなぁ、内側が良かったけど、マルッコ君が1番に入ったからそことは少し離れたいね」

「立場上は同厩舎となっている馬ですが、それはまたどういった理由からでしょうか」

「ダイランドウとマルッコ君は普段から仲がいいんですがね、競走するとなるとなんといいますか張り合うようなところがあってね。それがレースだとどうでるか分からないもんで。まあ最悪2500m逃げ切ればいいんでどこでもいいはいいんですけどね」


『さすが須田っちいうことが潔い』

『さすすだ』

『さすっち』

『今思い出したがサタンマルッコとダイランドウって宝塚の前に放馬した事あったな』

『張り合うってそういう』

『いうてあと14枠あんだからそんな近いとこあたらないだろ』


「引くのはどちらが……?」

「そらもう国分寺騎手ですよ。頼んだよ」

「アッ、ハイ」


『アッ、ハイ』

『国分寺なんなのその返事ww』

『面からは窺えないが実は緊張している説』

『国分寺メカ説』


「国分寺騎手がカプセルを取り出し、中から番号が書かれた紙を……!

 1枠2番! 1枠2番にダイランドウが入りました!」


『おっ、ええやんダイランドウ』

『走りきれるかどうかはおいとくとして逃げ馬にいいとこ引いたな』

『ええやん』

『あるんじゃね?』

『隣サタンだけどいいのか』

『隣S氏だぞww』

『ダイランドウもスタートいいからな。スタートから併せ馬みたいなことになるのでは』


「いやーやっちまったな恭介(きょうすけ)まあ本番なんとかしてくれ」

「いや、あの、え……う……あの、引きなおしたい、んですけど……」

「皆さんそう思ってくじを引くんですねぇ。それでは席にお戻りください」


『須田wwwwwwwwwww』

『須田の反応からするとこれは結構ヤバイやつかwwww』

『国分寺涙目wwwwwww』

『オロオロ寺wwwwwwwwww』

『劇場型競走馬サタンマルッコは健在だった』

『かぁーっ上げて落とすタイプだったかぁーっ! おれもなーっ!』

『てことはなに、サタンかダイランドウはどっちか下げて競馬すんの?』

『内枠なのに?』

『じゃあもう2頭で逃げろよ』

『なんかやな予感してきた』

『いやさすがにレースでそんな引っかかるようにはならんだろ』

『ダイランドウの大乱闘がまたみれるんです?』

『金借りるのやめるわ』

『PSプロキャンセルした』

『焼肉やめてカップ麺にするわ寒いし』

『(なんとかなる)はずだった…………』


「さて、続いては――……







……――クエスフォールヴ4枠7番!」


『クエス7番か』

『まあいんじゃね。内に入ると乱闘に巻き込まれる可能性あるし』

『つーか内枠二頭が前に吹っ飛んでいくから後ろの馬が二番手集団先頭で楽に競馬できる説』

『十分勝負できる枠だろ』


「続きましては……コトブキツカサ!」

「ついにやってまいりましたコトブキツカサ海老名とし……ウシオ!

 コトブキツカサ陣営はステージまでお越しください」


『山場きたwwww』

『海老名さん、8枠空いてますよ』

『残り6枠で2、4、5、6、7、8枠に空きか』

『とても8枠引きそうな流れ』


「さて、海老名さん。ついに来てしまいましたね」

「感無量です」


『いやそのコメントはおかしい』

『なにが感無量だよw』


「当然くじを引くのは?」

「あ、私が引きます」

「海老名騎手と。それではどうぞ、引いてください」


 コンセントレーションを高めて勢いよくくじに手を突っ込む海老名。掴み取ったカプセルを高々と突き上げそのまま中身を取り出す。

 そしてゆっくりと中の紙を広げて行き――


 アッ、シャオラアアアアアアァァッ!!!!!


「雄たけびを上げた海老名ァ! 掴み取った番号は7枠14番ッ! 江田調教師苦笑いッ!」

「でも海老名騎手、ようやく8枠の呪いから解放されて嬉しそうです」


『すげーこえでてたぞwwwwwwwwwwww』

『海老名wwwwwwwwwwww』

『wwwwwwwwwwwwwwwwwww』

『これは名手海老名ウシオwwwwwwwwwwww』

『改名効果あったwwwwwwwww』

『7枠で喜ぶ奴はじめてみたぞ』

『調教師苦笑いで草』

『すまん今年一番爆笑した』

『7枠を取る海老名くんUCはよ』


「さて、抽選会はまだまだ続きます。幸四郎さんお願いします――……




▲▲▲



 抽選会翌日。新聞各紙にて有馬記念の枠順が掲載された。


 1-①サタンマルッコ

 1-②ダイランドウ

 2-③グリムガムジョー

 2-④ラスリテイク

 3-⑤スピーシーハイ

 3-⑥オリジナルランク

 4-⑦クエスフォールヴ

 4-⑧モデラート

 5-⑨マネルハネルミノル

 5-⑩ボーンバンガード

 6-⑪ヴェルトーチカ

 6-⑫ワンダースピン

 7-⑬ロバーツ

 7-⑭コトブキツカサ

 8-⑮グレーターミューズ

 8-⑯キャリオンナイト


 決戦の日は近い。



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 中山競馬場は大多数が想像する賭場としての競馬場そのものの場所だ。

 他の競馬場と比べて野次が多いし内容も下品であることが多い。そんな彼ら彼女らが障害レースの時だけは飛越の成功に拍手するのだから面白い。

 汚さ、煩さはあるが、同じだけ競馬に熱く本気になる場所。中山はそんな場所だ。


 有馬記念の日の中山競馬場一帯は大変な騒ぎになる。最寄の駅から競馬場までの間に直通通路が無いため、競馬場を目指す客が地域を練り歩くことになる。キャパシティを軽々と越える人数が当然のように訪れるので、まずそれで混乱する。

 次に中山競馬場そのものの施設。これは東京競馬場よりも全体的に狭い。特にスタンド前の広さに大きな差がある。

 ダービーデーの東京競馬場は控えめに言って地獄のような人口密度となるが、それと同等の人数がより狭い中山競馬場へ押しかければどうなるか。想像に難くないだろう。

 それでも生観戦に訪れる人間が毎年10万人以上は現れるあたり、どれだけ混み合おうとも、それらの苦痛を上回るお祭り感、ライブ感が得られるのだろう。馬券を買ってレースを見たいだけならば場外馬券発売所(WINS)での観戦やテレビ観戦した方が良いというのは、現地に行った人間行かなかった人間共通の認識だ。


 そんな中山競馬場のパドックに、日本競馬、並びに世界の競馬を戦い抜いた16頭が集まる。

 儲けたい。今日こそは。頑張ってほしい。可愛い。いい所を見せたい。負かしてほしい。様々な情念渦巻く中、万の視線をその身に受けて優駿達はパドックを周回していた。




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『……――といったところでパドックの紹介を終わります。スタジオにお返しいたします』


「はい。ということでパドックの様子を黄島さんにお伝えいただきましたが、竹中さん。どうでしたかご覧になっていて」

「えぇ。今年の有馬はどの馬も気合が入っていてイイですねぇ。出走各馬ね、十分に勝つ気のある仕上がり方をしていましたよ。回ってくるだけというかねぇ、そういう記念参加めいた馬は見受けられませんでした。熱い戦いになりますよこれは」

「ではそんな出走馬の中から、まぁまだホープフルステークスは御座いますが、年内の竹中さんのパドック解説は今日で最後ということですのでね。今年一年間最後のパドックまとめをお願いいたします」

「はい、じゃあちょっと今日は気合を入れていきましょうかねぇ。

 まずね、これまでも新聞雑誌やテレビ番組なんかでも散々話題にされていましたけどね、有馬記念の大まかな展開。ここからお話しましょうか。

 今年の有馬記念の予想の軸は、サタンマルッコがどこまで逃げるのか、そしてその馬を差すとするならば誰なのか。このね、二点が論点となっていますねぇ。


 サタンマルッコは体調不良の宝塚記念を除けば、ジャパンカップまでは後ろから差しきられた事が無い訳でしてね、これはまぁそれだけで大変凄い事なのですけれども。

 だってつまりこの馬が走るレースはこの馬が作るペースよりも速いタイムでゴールしなくちゃいけない訳ですので。直線勝負だけの馬では絶対に勝てない、ということですねぇ。


 じゃあどんな馬が差し切れるのか、と申しますと、これはまず単純に絶対的なスピードとスタミナの総合力が高い馬。ハイペースの道中でも射程圏内に捉えておいて、そこからしっかり終いの脚を使っていけるクエスフォールヴのような馬ですね。こういった馬。

 或いは切れる足は無いけれども、ハイペースでもいい脚を長く使えるタイプ。これはオリジナルランクなんかがそうですね。いつでもどこでも脚を余して惜敗していますから。逆に言うと今回はハイペース必至ですのでねぇ、チャンスが増えますよ。

 そして最後に挙がるのがサタンマルッコよりも先行できる馬。これは非常に考え難い要素なのですが、今回はダイランドウというスプリンターが居ますのでねぇ、道中で先を譲る展開もあるかもしれません。別距離を走っていた同型のダイランドウのような馬が最後まで持った場合、これもサタンマルッコが敗れるパターンですねぇ。

 それらを踏まえて予想を立てるのですがねぇ、これがまた難しい!」

「竹中さん、そういいつつも嬉しそうですね」

「予想家冥利に尽きますよ本当にねぇ。馬券ファンの皆さんも今年の有馬は予想が楽しかったのではないですかねぇ? やっぱりね、強い逃げ馬がいると競馬は盛り上がりますよ。

 さてそういう中でどう予想を立てるか。

 まずサタンマルッコ。1枠①番の絶好枠でスタートさえ失敗しなければ完璧な枠。望みどおりの展開へ持ち込む事が出来ると思われますが、懸念点はやはり隣の②番ダイランドウとの先頭争いでしょうねぇ。

 しかし私はね、これに関しては問題ないと判断していますよ」

「ほう、それはまたどういった理由ででしょうか」

「サタンマルッコのね、ここまでの中間。時計も出さずになんとも不気味でしょう。怪我してるんじゃないかなんて噂になったくらいですので。こういう時のねぇこの馬は怖いですよ。ダービーの前なんかも似たような感じだったのでね。我々の懸念や不安材料なんか吹き飛ばしてくれるんじゃないかと。具体的要素は無いのですが、そういう期待感からですね」

「私の愛馬はやれるんだ! というご主張ですね」

「ははは、まあ贔屓が入ってしまいますがそういう事ですね。有馬記念だし許してくださいよ。

 それじゃあ次にいって……。

 次に⑦番クエスフォールヴ。枠順は可も無く不可も無くでしょうねぇ。

 前二頭が後続を引き離す形での道中となるでしょうから。枠順的にも前目の競馬で進めればいつもの流れに持ち込めるのではないでしょうか。

 危険な流れは外から被せられる場合ですが、その場合は一端下げて外から抜きなおすくらいしそうですねぇ。それをやっても十分足りる実力であるので、軸や本命にするならこの馬、という評価に落ち着きそうです。

 それから今日のパドックで一際輝いていたのが⑭番のコトブキツカサですかねぇ。

 このお馬さん、秋華賞を勝った後は有馬記念を目標に仕上げてきているのでね。時間があった分ピカピカの凄い身体つきしていますよ。海老名騎手も念願の8枠以外を手に入れたってことでね、縁起もよろしいこの馬にも注目しておきたいですねぇ」

「はい、ありがとうございました。

 現在のところ単勝一番人気はクエスフォールヴ2.3倍。二番人気サタンマルッコ4.3倍。三番人気モデラート7.1倍。こうした中で竹中さんのコメントはどうなるのか。

 そういったところも含めて有馬記念、間もなく本馬場入場。実況はラジオNK河本哲也さ

んです」



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《今年はクリスマスと重なりました有馬記念。

 中山競馬場には既に13万人のお客さんが詰め掛け、今年一年の競馬を締めくくる戦いを今か今かと待ち望んでおります。

 春。世代を制したクエスフォールヴ。そしてクエスフォールヴが海外遠征へ旅立つ中、国内で存在感を発揮したモデラート。羽賀競馬出身でありながら日本ダービーを征した稀代の怪馬サタンマルッコ。樫の女王を退け、二冠に輝いたコトブキツカサ。二年連続の戴冠となった女王スピーシーハイ。誰もが驚く短距離路線からの有馬参戦ダイランドウ。

 魅力的な各馬が集まりました今年の有馬記念。

 それでは、出走16頭、本馬場入場とご紹介に移ってまいります。






 強敵を打ち倒したダービー。

 実力を示した菊花賞。

 もはや疑う余地は無し。実力十分。気炎万丈。

 栗毛の馬体が怪しく揺らめく。

 額の星に情念乗せて。

 なるか逆襲。西から来た丸(アイツ)。


 1枠①番サタンマルッコ、横田友則!(よこた とものり)




 まさかまさかの有馬参戦。

 皐月で見せた大暴走。

 見せたスケール誰より大きく。

 距離を征した大乱童。


 1枠②番ダイランドウ、国分寺恭介!(こくぶんじ きょうすけ)





 雌伏の時は長くとも、咲かせた花は誰より大きく。

 アッといわせたアルゼンチン共和国杯。

 二度目が無いとは言わせない。


 2枠③番グリムガムジョー、本田義弘!(ほんだ よしひろ)





 コース巧者と言えばやはりこの馬。

 勝ち鞍4戦全て中山。ついに手に入れたるは有馬の好枠。

 やり直しは必要ない。今年がラストラン!


 2枠④番ラスリテイク、海馬英俊!(かいば ひでとし)





 守り抜いた女王の座。

 楽な戦いは一つもなかった。

 流した汗が頭上の冠を輝かせる。

 女王のティアラは輝きを増して。


 3枠⑤番スピーシーハイ、川澄翼!(かわすみ つばさ)






 惜敗惜敗また惜敗。

 迫りはすれども勝てはせず。

 流した冷や汗数知れず。

 誰よりも自由に。


 3枠⑥番オリジナルランク、アンドリュー・クワセント!






 日本の悲願を背に載せ駆けた凱旋門。

 開けた視界に夢を見た、夢幻に消えた戴冠の道筋。

 消えずに残った実力携え、違いを見せたジャパンカップ。

 国内最強文句なし。日本が誇る世界の翼。


 4枠⑦番クエスフォールヴ、ダミアン・ロペス!






 世代王者を奪取され、苦渋を飲んだ春一番。

 不在の間の存在証明。その結晶はこの日のために。

 嵐を呼ぶ男を背に乗せて、暮れの中山一本勝負。

 中庸と呼ぶには速すぎる。


 4枠⑧番モデラート、竹田豊!(たけだ ゆたか)






 今年もこの日がやってきた。

 今年もお前に会いに来た。

 三年連続出場。三年お馴染み。


 5枠⑨番マネルハネルミノル、熊田敏也!(くまだ としや)






 鞍上福岡祐一は誕生日。

 スペシャルバースデーを自ら祝えるか。

 今日は勝利を奪いに来た。


 5枠⑩番ボーンバンガード、福岡祐一!(ふくおか ゆういち)







 逆襲の元女王。

 並み居る男を掻き分けて、狙うは栄冠唯一つ。

 女帝未だ健在。


 6枠⑪番ヴェルトーチカ、後藤正輝!(ごとう まさき)







 男勝りの勇み足。

 年上相手も一歩も引かず。

 捩れた根性一本通して、咲かせて見せるは女道。


 6枠⑫番ワンダースピン、池園勇美!(いけぞの いさみ)







 名優の仔もまた名優。

 長距離の覇者が有馬記念に初参戦。

 いぶし銀の名手をその背に乗せて。


 7枠⑬番ロバーツ、イデラート・ホックマン!






 さあ拍手と笑いに迎えられて!

 今年は橙色の帽子を被って!

 ついに引き当てた念願の7枠!

 二冠の少女をエスコート。

 お前の帽子は何色だ!


 7枠⑭番コトブキツカサ、海老名外志男!(えびな としお)






 中山巧者と呼ぶのなら、この馬、この人もまたそうなのでしょう。

 馬混み急カーブもなんのその。

 華麗なステップは6歳になっても衰えず。

 今年も有馬にやってきた!


 8枠⑮番グレーターミューズ、大平健一!(おおだいら けんいち)






 さあこちらも拍手と笑いに迎えられて。

 一生物の思い出となりそうだった抽選会。

 有馬記念初騎乗の俊英、八源太騎手。

 夜を切り裂く僚馬と友に、ジャパンカップの再来なるか。


 8枠⑯番キャリオンナイト、八源太!(はち げんた)






 以上、第NN回有馬記念出走16頭のご紹介でした》




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 有馬記念のスタンドを遠くに見る発走地点が横田は好きだった。

 響くファンファーレと手拍子をスタートゲート前で輪乗りしながらどこか遠くで聴いている。もう間もなく枠入りが始まり、そしてレースが始まる。

 ふいに、手元に収まる乗馬鞭が気になった。


(鞭を使うな、一番最初に言われたな)


 マルッコに乗るようになってから、全く使わなくなった仕事道具。

 鞭を振るわない事、それは築き上げた信頼の証であり、横田自身の己が騎乗技術に対す

る誇りでもあった。

 もしも乗り始めの頃に使っていたら、落とされていただろう。そういう馬だ。気性はよく知っている。

 それが今では口にせずとも繋がっている間柄。まさに戦友とも呼べる仲になった。これだけ深い絆を結んだ馬は多く無かった。


 いよいよ枠入りが始まる。1枠①番の枠入りは一番最初。枠の中に居る時間が最も長いためそれを嫌う陣営もある程だ。


「調子はどうだいマルッコくん」


 短くて長い待機時間中、横田はゲートに収まった相棒に声をかけた。

 相棒は、愚問だ、と言わんばかりに鼻息で応える。

 相変わらず分かったような反応をする馬だ、と口元に笑みを浮かべた。


 相手は強い。だが、果たして絶対に勝てないというほど強いだろうか?

 絶対の皇帝ルドルフの子供がテイオーで、その娘とフウジンの間に生まれた生き残りの

娘。それを見初めた暴君との間に生まれた、この魔王。血統書を読み解けばそんな筋書きが思い浮かぶ。


「悪いことするのは魔王の特権らしいからな」


 せいぜい首を洗って待っていろ、一番人気(クエスフォールヴ)。




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《……――さあいよいよ、いよいよ、今年の有馬記念が始まろうとしています。

 出走16馬のドリームホースたちが繰り広げる激闘。しかとその目に焼き付けましょう!

 最後、⑯番キャリオンナイトがゲートに収まりました!




 第NN回有馬記念…………スターァトしましたぁ!





 さあまず何がいく、俺が行くと①番サタンマルッコと②番ダイランドウがあっと言う間に3コーナーへ飛び込んでいく!

 他は出遅れなどもなく順調に出たようです!


 先行争い①番サタンマルッコ②番ダイランドウ身体半分ダイランドウが前に出て一周目の直線に身体が向きます。

 ダイランドウはやる気十分。諦めすら感じさせる鞍上国分寺騎手の長手綱! 今日も元気に行きっぱなしでかぁなりぃ飛ばしております!

 2馬身ほど切れて①番サタンマルッコ。さあ折り合いはどうだ。なんだか上手く行っているように見えるぞ? サタンマルッコ、ダイランドウとは競り合わず落ち着いている。今のところは上手く行っているのではないでしょうか。さあそこのところはどうなのか横田友則。


 先頭が直線の坂に差し掛かろうとしています。

 サタンマルッコから離れて5、6馬身に③番グリムガムジョー。おっと位置を上げて直線で①番サタンマルッコに並びかける構え。

 その後ろ内に入れたのは④番ラスリテイク、それから⑦番クエスフォールヴがこの位置。

前目に番手集団の先頭を併走、遮るもののない良い位置に入りましたクエスフォールヴ。

 外から⑫番ワンダースピンさらには⑧番モデラートなどが追走、⑬番ロバーツが内にいて⑭番コトブキツカサ、⑤番スピーシーハイと続いて最内⑥番オリジナルランク包まれていますが今日は落ち着いて見えます。切れて1馬身⑮番グレーターミューズ、最後方⑯番キャリオンナイトが内ラチ沿いを走って正面スタンド前を通過していきます。

 スタンドからは割れんばかりの大きな拍手が送られます中山競馬場。


 今1コーナーにダイランドウが入ったところで1000m通過が57秒3。57秒3!?

 速い! 過去最速の通過タイムなのでは無いかと疑うばかりのタイム!


 猛烈な勢いでダイランドウが1000m通過!

 これで2500m走りきる事が出来るのかダイランドウ!

 あれよあれよと後続を引き離し、二番手集団を7、8馬身程離しているぞ!


 その二番手集団もかなり速い! 内に①番サタンマルッコ、外に並びかけて③番グリムガムジョーだがグリムガムジョーはどうだ、鞍上本田騎手は手綱を抑えているが行きたがっているようにも見える。折り合いが怪しい!


 そこから切れて5馬身内に④番ラスリテイク、⑦番クエスフォールヴがやや下げて追走、2コーナーの終わり際、外の⑫番ワンダースピン、⑧番モデラートら後続が一気に位置を上げ始めている。後ろでは届かないと見るや竹田騎手が位置を上げたか。


 向こう正面に各馬流れてゆきます。

 さあ後続が速くもペースを上げてきた。⑭番コトブキツカサ、⑪番ヴェルトーチカ、それらを追うように⑩番ボーンバンガードと⑨番ハネルマネルミノルも差をつめにかかる。

先頭ダイランドウとはまだ10馬身以上差がある!

 それら見る形で内ラチ沿い⑬番ロバーツ、一つ切れて⑥番オリジナルランク、並んで⑮番グレーターミューズ、最後方変わらず⑯番キャリオンナイトといった体勢です。


 さあ二番手サタンマルッコとグリムガムジョーと後続の差が縮まってきたリードは5馬身。この差をどの辺りで詰めるのかクエスフォールヴ、今残り1000mの標識を、


 おぉぉっとぉ! ここでクエスフォールヴが動いた!

 今日も馬なりで行く!

 スーッと位置を上げてサタンマルッコに並びかけようかといった動き、だがサタンマルッコもスピードを上げてリードを保っている!

 後ろの方からはモデラートがクエスフォールヴの後ろに付いた!

 スピードとスタミナの極点! 会場のボルテージは最高にあがってきた!


 どよめきを怒号に変えて残り800mの標識を通過、各馬3コーナーへ差し掛かります!

 先頭変わらず②番ダイランドウ、気配はどうだまだ残せるのか、少なくともまだ歩いてはいない!

 二番手①番のサタンマルッコとの差は7馬身、後続を引き連れていっきに詰めていくサ

タンマルッコ、③番グリムガムジョーはちょっとついていけないか、入れ替わり⑦番クエスフォールヴがサタンマルッコの後ろ3馬身にピタリとつけている!

 4コーナー! モデラートは外へ出す! 内で⑥番オリジナルランク、⑯番キャリオンナイトが位置を上げた!


 さあ中山の急カーブを曲がりきって、第NN回有馬記念最後の直線に入った!


 先頭はダイランドウが頑張っている!

 しかしサタンマルッコがこれを交わした! サタンマルッコ先頭!

 しかしピタリとつけるクエスフォールヴ、ダミアンロペス! モデラートも付いてきている!

 外の方ではコトブキツカサが突っ込んでくる!


 残り200m! サタンマルッコ先頭! クエスフォールヴ脚色がいい、クエスフォールヴ脚色がいい!

 ジャパンカップと同じになるのか!

 ダミアン右鞭!

 交わした! 1馬身! 2馬身!

 モデラートは伸びてこない!

 サタンマルッコまだ頑張っている! 頑張っている!

 後ろの方から馬群を抜けてキャリオンナイトとオリジナルランクが突っ込んでくる!

 しかし先頭は抜けた抜けた抜けたクエスフォールヴ!



 坂を駆け上がって先頭クエウフォールヴ! ゴールまであと100m!――……





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 彼ら全てが道中の駆け引きを理解している訳ではない。

 だが、勝負を仕掛けたのだとは誰しもが理解できた。

 故に、3コーナーの直前、位置を上げたクエスフォールヴに対して群衆はどよめきで応えた。


 はええよ!

 がんばれー!

 よしいけ!

 てめぇそれで負けたら承知しねぇぞ!

 いいぞ!

 つかまえろ!

 それでいい抜いちまえ!

 いけー!


 あんなに前を走ってる馬に追いつくかもしれない。

 あれだけ飛ばしているんだから当然差せるはずだ。

 なにをしてるのか分からないけどなんか凄そう。


 理由なんか人それぞれで。超満員の観客は各々が反射的な歓声を上げていた。


 道中あれだけ縦長だった隊列があんなにも詰まっている。

 4コーナーを回った競走馬たちが最後の力を振り絞る。

 観衆の声色が再び変わる。


 先頭を走っている黒い馬を栗色の馬が抜き去った。

 一番人気といわれていたクエスフォールヴとかいう馬がそれと一緒にあがっていった。

 その外側にはなんだか分からないけど途中からずっと前に行こうとしていた馬がピッタリくっついてる。

 何となく分かったのは今前に居ない馬は勝ち目が薄いということ。

 誰かが何かを空に投げた。ひらひら舞うそれは馬券の束。目当ての馬がそこに居なかったに違いない。


 させぇぇ!

 やれえええ

 竹田ァァァ!

 やめろぉ!

 そのままぁ!

 ああああ!


 意味のある言葉もあれば意味の無い叫びもある。

 金や見栄や名誉や意地。

 着飾った若い女が。髪の薄いおじさんが。高い時計を腕に巻いた男が。老人が、連れられた子供が、おばさんが。

 出す心算のない声が腹の底から喉を伝って音の波になる。

 原始的な興奮と熱狂が十万超の濁流となって緑のターフへ流れ込む。


 それは、クエスフォールヴという馬が先頭に立った瞬間、最高潮に達した。



-----




 またこの馬かッ!


 横田は別次元の末脚を見せ付ける黒い凶星を左手前に見ながら毒づいた。

 あれだけのハイペースで追走させてこの末脚。一体何をどうしろというのか!

 懸命に走る己が相棒にはまだ余力がある。だがその余力は加速の鋭さではなく速度の維持だ。サタンマルッコの持つ唯一の弱点、それは決定的な切れる末脚を持たない事だ。こうして相手に余力が残った状態で突き放されると巻き返しが出来ない。

 チクショウ、今年はダメなのか。

 諦めかけたその時。かすかな物音が耳朶を打った。


――クレ


 なんだ、なんだこの音は。


――ムチヲ、クレ


 大地を蹴り飛ばす四肢。全力で稼動する心臓の鼓動。燃料を補給すべく大きく膨らむ鼻と胸。

 だとすればこの音はなんだというのか。


――ムチヲ、クレ、オレハマダヤレル!


 言葉ではない。しかしそれは彼らの間にだけ通じる共通言語だった。


――オレガ、カツ!


 熱い鼓動の背中が語る。手綱を通してハミが語る。

 負けられない。ただそれだけに命を燃やす。

 それは勝利への渇望。

 俺が勝たせて、お前が勝たせろ。

 そうか。お前がそう言うのならば!


 結論は封印だった。

 "あの"走りを再現するには今の筋肉では耐え切れない。

 それがどうした。

 相棒が勝つと言っている。それに応えるお前はどうだ。


 横田は鞭を抜いた。

 揺れる視界。開けて望むは坂の頂上ゴール板。

 身体を一杯に捻った。腕を振り上げて、下ろした。


「勝てマルッコッ! いったれおらあああああぁぁッ!」


 栗毛の魔王が躍動する。




-----




 ……――クエスフォールヴ先頭!


 クエスフォールヴ先頭! リード2馬身!

 後ろは来ない! 届きそうに無い!

 大勢決したか!

 世界の翼がありまをあぁッ!

 うちからもう一度サタンマルッコ! すごい脚!

 なんということだ伸びてきている!


 ゴールまであと僅か!

 サタンマルッコ追ってくる!


 追ってくる!



 行く!




 迫る!




 並ぶか!?




 並んだ!




 内外二頭ッ!

 どっちだ! 差すか! 残すか!




 横田の鞭ッ! ダミアンの腕ッ!





 抜けた! 頭一つ!





 サタンマルッコだ、サタンマルッコだ!





 サタンマルッコだあああぁぁッ!





 差しきったァァァァッ!

 サタンマルッコ横田友則、間違いなく差しきったァッ!

 ジャパンカップの雪辱晴らす大激闘ッ! 征しましたッ!

 鞭を握った右手を上げる横田友則ィッ!

 場内は割れんばかりの大歓声です!

 直線残り200mで交わされ、一時は完全に大勢決したかに思われましたが、坂の頂上残り70m地点から再びの猛追。2馬身の差を見事に巻き返しましたサタンマルッコ!


 もはや疑う余地は無し! これは本物だ! 一段上の能力を示して見せました!

 西から来た魔王、サタンマルッコ! クリスマスの有馬記念で産声を上げましたッ!

 二着に敗れはしたものの、クエスフォールヴ。ハイペースに付き合った上での高い位置からのロングスパート。その能力の高さを遺憾なく我々に見せてくれました。

 三着は接戦、ビデオ判定が待たれますが――今サテライトビジョンでゴール時のスロー再生が映されております。これは、どうでしょう。⑥番オリジナルランク、⑧番モデラート、⑯番キャリオンナイト、⑭番コトブキツカサ、そして②番ダイランドウが一団となっていますが、三着は……これは⑯番のキャリオンナイトでしょうか。キャリオンナイト優勢であるように見えます。ジャパンカップに続いてキャリオンナイトが健闘か。


 2コーナーからサタンマルッコと横田騎手がスタンドへ戻ってきました。

 横田騎手は笑顔で相棒を称えます。首をテシテシと、サタンマルッコもくすぐったそうに身を捩っています。

 さあ今、サタンマルッコが正面スタンドに帰って、


『ヒィィィィンッ!』


 わあ、勝ち鬨を上げました! なんという馬だ!

 あれだけの激走をして尚、褒めてくれと言わんばかりの大音声!


『……ォォイ』

『オオイ』

『……オオォイッ!』

『ヒィィィンッ!』『オオオオォォイッ!』『フィィィンッ!』『オォイッ!』

『ヒイインッ!』『オォォオオイッ!』『ヒイイィィィンッ!』『ドオォイッ!』


 ……神秘的な、これはある意味神秘的な出来事であるのかもしれません。

 今、この瞬間、我々と彼との間に言語が成立しているのです。 或いはこれは、競馬の神様がくれたクリスマスプレゼントなのでしょうか。

 第NN回有馬記念。勝ち馬はサタンマルッコ。

 この名とこの光景を、我々は深く刻み込む事でしょう》



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12ハロンのチクショー道 野井ぷら @noipura

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