ジャンクの園、慈母の國。

作者 ひつじ

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★★★ Excellent!!!

 『わしは酒もタバコもやらんし肉も食わん。わしはな、労働者の味方なんだ』……『アドルフに告ぐ(手塚治虫、文藝春秋、敬称略)』に、そんなヒットラーの台詞があった。第二次大戦を通じて、ナチスドイツは極端に犯罪の少ない国家だった。ちなみに同時期のファシストイタリアはマフィア根絶計画を実行し危うく成功しかけた。
 ことほど左様に『清潔な』社会は人間性を焼き潰す。戦前の話だが、アメリカ合衆国でさえ禁酒法で自ら大混乱を招いた。本作はそうした歴史的事実や昨今の極端な反非衛生嗜好への風刺でもあり、個人の自由はなにがしかの混沌に結びつかざるを得ないという諦感でもある。その意味で、肉の供給源に牛ではなく豚を使うのは実に象徴的だ。
 最後には、『清潔な』ウイルスが地上を支配するかもしれない。

★★★ Excellent!!!

世界観がまず素晴らしい。
それにぴったりな、リーダビリティの高いエッジの効いたこの文体。
いやはや、素晴らしいです。きっと作者さんにしか書けない世界観だと思います。
先入観なしで読んだほうが面白いと思いますので、詳細は割愛しますが。

これはとてもカッコよくて面白い、ステキなお話ですよ。ぜひご賞味あれ。

★★★ Excellent!!!

大戦の後。世界に蔓延したウイルス。この世は健康志向一辺倒となり、ジャンクフードは一掃された。
健康的な生活。健康的な家庭。管理された慈母の國。
それは、本当に健康的な環境と言えるのだろうか。

現実世界では、テレビをつければファーストフードのCMの後に健康食品のCMがあるような毎日。アンビバレンツ。しかし選択をするのは自分自身だ。それが管理されるようになってしまったとしたら……どれだけ息苦しいことだろう。

矛盾によって利益を得るのは誰なのか。
トクホの炭酸飲料を飲みつつ、苦笑いが漏れる。
ジャンクの園と慈母の國。どちらか一方を選ぶとしたら、どうします?