第41目 ダイスダウン大会開催

「やってまいりました!

 特別開催!

 ダイスダウンダブルデュエルトーナメント!


 今回のダイスダウンはひと味違う!

 ふたり一組でぶつかり合う、まさに新機軸きじく

 必要なのは、特出とくしゅつした個の力ではない!

 チームとしての親和しんわ性!

 お互いを高め合うリスペクト精神!


 そしてそして!


 本大会の優勝者には!

 ななんと!

 喝采白主様への謁見えっけん

 それだけでも特別なのですが!

 さらに!

 白主様にダイスダウンを挑む権利までもが与えられます!

 これは、なんと特別な大会なんでしょうか!

 これは是が非でも勝たねばならない!


 果たして、いまだかつてこんなにも勝利に焦がれる闘いがあったでしょうか!

 さあみなさん!

 優勝目指して、パートナーとともに熱い闘いをくり広げてください!」


 ダイスダウンアリーナから、実況の畳みかけが木霊してくる。

 スピーカーを通さずとも、周辺道路や一ノ目高校まで届かせてしまいそうな、圧倒的な迫力だった。


 転人と三儀は、アリーナ前広場に大々的にかかげられたトーナメント表を見上げていた。


「大きいですね」


「上のほうが見えないな」


 なんのために置かれたのか、その大儀たいぎを見失っているそれからふたりは視線を外して、手元のA4大の用紙四枚に書かれたトーナメント表を見る。


「参加チームは、全部で百組ほどです。トーナメントは、AグループからDグループまでの、計四グループに分かれて進めるみたいですね。私たちは……Aグループです。浮梨お姉ちゃんや願石さんはBグループなので、闘うとしたら三日目ですね」


 大会は三日にかけて行われる。

 二日目までで各グループの勝利チームが決まるように対戦が組まれているため、他グループとの闘いが始まるのは三日目だった。


「できれば、闘いたくはないな」


「そうですね。でも、誰が相手でも、私たちが勝ちますよ」


「だな。優勝するには……七回勝てばいいのか」


〈我にまかせておけば楽勝だな〉


 『DOG』は、我が物顔で転人と三儀の間に鎮座していた。

 しっぽをふり、ときおり大きなあくびをしている。


「お前のその自信はどこからくるんだ?」


 そして、お前はこのまま本物の犬にでもなってしまうんじゃないのか?


「ドッグちゃんも絶好調みたいですね」


 三儀は、ふふふ、と笑いながら、『DOG』をなでている。

 なでながら、なにかを思いついた様子で、懐からダイスを取り出した。

 それは、この日のために手にしたダイス『WING』だった。


 『WING』は、『DOG』とじゃれ合うようにそのまわりを飛び回り、ときおり『DOG』に甘噛まれ、それに負けじと羽をパタパタさせている。


 もとは転人を負かした男子生徒のもので、そのあと魚井に渡り、一時的に転人を経由して、今は三儀の手の中にある。そう考えると、最も数奇な運命をたどっているダイスだと言ってもいいのかもしれない。

 そんな『WING』にとって、こうして三儀のもとへとたどり着けたのは、幸運なことなのかもしれなかった。粗雑そざつに扱われることはないだろうし、彼女の才能によってその可能性が大いに広げられるかもしれない。


「それじゃ、そろそろ行こうか」


「はい、行きましょう」


 ふたりと一匹と一個は、アリーナへと向かう。



 ◇◆◇◆◇◆



 初日は二戦。

 転人と三儀は、そのどちらにも全力で挑んだ。

 その結果、どちらも危なげなく勝利をおさめることができ、二日目へとつなげることができていた。


 一方、浮梨チームと願石チームはというと、どちらのチームも転人たちと同じく、二日目へと勝ち進んでいた。このままいけば、転人たちが想定したとおりに、どちらかのチームとぶつかり合うことになりそうだった。


 そんな一日目も終わり、太陽は一巡いちじゅんして、闘いは二日目へと進んでいく。

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