第6目 願石幸鉄は立ちはだかる
翌日。
転人は、ケースを持って学校へと向かっていた。
昨日の帰り道を逆にたどってはみたが、彼女には結局、会えなかった。
連絡を取らなければいけないのかと
「廻転人!」
地鳴りとともに、怒号のような声が
転人が驚いて顔をあげると、
その巨大さ
男は、転人を見下ろすようにしてたたずんでいる。
「
「ははい、そうですけど」
転人の声は震えていた。きっと、巨岩男が起こした振動のせいだ。
転人の言葉を聞いた男は、胸をなでおろすように息を吐いていた。
もしかして、登校してくる生徒全員にこれをやっていたのだろうか。
「私は、一ノ目高等学校三年、
願石幸鉄と名乗った男は、巨体に似合った
彼は、横からさっと出された紙を受け取り、
「昨日の夕暮れどき、貴様が
少女による転人へのセクシャルハラスメントだったのだが、どうも願石幸鉄は、そうは思っていないようだった。
転人は、説明するべく口を開こうとしたが、願石のふりあげた手によってさえぎられてしまった。
「
「どういうことですか。こっちの話を聞かないで、一方的に
「
「それじゃあ俺は、なにをとがめられているんですか」
「とがめられるかどうかは、これからの貴様の態度次第だ」
願石は腕を組み、息を大きく吸いこんで、身体を二、三倍にも大きくする。
「私が貴様に聞かなければならないことは、ただ一点のみ。
淫らな行為になど、決しておよぼうとしていない。
それはそれとして。
転人は、願石の狙いが自分ではなかったことを、素直によかったと思っていた。
願石幸鉄のことを知っている人間ならば、誰でもそう思うだろう。
彼ににらまれた生徒は、
それは噂なんてものじゃなく、事実として、学校中で語られていることだった。
だから、
ただ、そんな
「……なぜ、その少女を探しているんですか?」
願石はあからさまに“少女”という言葉に力をこめていた。
転人はそのことが、なぜかひっかかった。
なぜ誰もが恐れる目の前の大男は、昨日の少女を探しているのか。
この場合は「なぜ願石は、喝采三儀を探しているのか」と、言い切ってしまったほうがいいだろう。
なぜならその少女は、他の誰でもない、喝采家の三女の、喝采三儀なのだから。
「決まっているではないか。私は、株式会社NOQS
生徒管理役委員会。
それは、願石の言葉どおり、NOQSの名のもとに組織された、生徒を“管理”するための部隊である。
各学校ごとに通称が決まっているのだが、一ノ目のそれは『首絞役』という、なんともおどろおどろしい名を持っていた。
目の前の願石はその『首絞役』員長であり、花道を作っている生徒は『首絞役』員である。
彼らはNOQSという背景のもとで、
そしてその力のおよぶところは、今この場においては、生徒だけにかぎったものではなくなっていた。
「――その少女は、NOQSの研究所から
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