クリエイターの気質(せいへき)

「斎藤ちゃんも今日はとりあえずゲーム理解を含めてやってみようか」


と、鷲沢先輩に悪徳プロデューサーの

「それじゃちょっと脱いでみようか」と同じトーンで依頼され

私は男性の欲望渦巻くエロゲーを仕事としてプレイすることになった。



『ひゃあああん!! ご主人様ァ!! 助けてくださいぃぃぃ!!』



ゲーム開始早々に、暗転した画面からなまめかしいボイスが

3Dデジタルサラウンドで再生される。


クリックして先に進めると、暗転した画面から、

触手にがんじがらめにされた女の子が画面いっぱいに表示された。


ゲーム開始からここまで、ものの10秒。



後で鷲沢先輩に聞いたところ

『すぐにエロシーンに入るように改良した』

『開幕エロ入れるとアクセス数が上がった』

『触手は王道』

などと意味不明な供述を繰り返し、責任能力の有無も視野に入れた捜査が今後実施されるそう。


『らめぇぇぇ! ご主人様ぁぁぁ♥♥♥ 許してくださいぃぃ♥♥』


「ええ……」


状況的には、どうやらへまをした彼女をご主人様である私が

なんらかの不思議な力で触手を生成して辱めているというらしい。


超展開過ぎて全米が泣く。


心を無にしてゲームを進めようとしたとき、PCの画面に男の人の顔が映った。

挨拶しようと振り返ったが、その人は私の事なんて見ていなかった。


「おっ! 良いところやってるね!! このシーン!!

 見なよ、この触手たち。これって時間同期させずに1本ずつ

 異なるタイムラインで動かしてるんだよ。ほら、汁のたれ具合とか違うだろ?」


「あのっ……」


「事務的な動きにならないよう微妙にうねりを加えてんだぜ。

 見ろよ。ほら、ココ! わかる!? わかるよな!?」


「え、ええ……」


「特にここには力を入れたんだ。シーンを進めると

 ピストンを早めたときの汁の飛び具合をちょっと調整したんだぜ。

 ほら、ちょっと進めてみて。そうそう、な!? な!? なーー!?」


「わ、鷲沢せんぱぁ~~い!!」


ドラえも~~ん!と叫ぶように私は自分の魔力を消費して鷲沢先輩をサーヴァントとして召喚した。


「はいはい、斎藤ちゃん。どうしたの? ああ、こいつ?

 こいつは神崎。デザイナーよ」


「そんなことより、この乳揺れはだな……」


「いいから仕事して。次のキャラのシーンまだなんでしょ?」


「あのキャラは好きじゃない。どうして俺がメンヘラを叱りつけるシーン謎

 時間をかけて作らなければならないのだ。納得いかん」


「仕事だから」

「俺はそれ以前に職人だ」


「いい? あんたが描いたキャラを動かすのはこっちなの。

 あんたがどんなキャラを描こうと、何をしゃべらせるかの主導権はあたしにあるのよ」


「き、貴様!! うちの子に何をするつもりだ!!

 俺のキャラ設定を無視した扱いにしたら許さんぞ!!」


「だったら、早くシーンを作ってね」


「これだから女は!! 女はァァァア!!!」


デザイナーの神崎先輩はペンタブをがりがり言わせながら自分のデスクへと戻った。


「な、なんかすごい人ですね……」


「デザイナーは我が強い人が多いから。

 あたしたちみたいな企画(プランナー)がまとめないとね」


「神崎先輩は、この触手のシーンも喜んで作られたんですか?」


「ううん。最初はものすごく嫌がってた。

 だからありとあらゆる物理かつ間接的な方法で作らせたの。

 あたしが思い描く最高のスタートシーンが作れなきゃ意味ないじゃない?」



「鷲沢先輩の方がずっと我が強いですよ!!!」





【エロゲ豆知識】こだわりが強い。

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エロくてニューゲーム!! ちびまるフォイ @firestorage

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