第1話 壁(39p)

「良いんですよ。医院長は気に入ればどんな陶器でも買っちゃうんで。少し位割ったって分かりはしないですよ。このまま行くと陶器の博物館でも作りそうなので、どんどん割って下さい」

「いやっ、流石にそれは……でも、良いですね、趣味にお金を注ぎ込めるって」

 しんみりそう言う私に、今西先生は「吉永様も大人になって稼ぐ様になればそうで来ますよ」と言った。

 そうだ、私はまだ自分の事も自分で解決出来ない、ただの子供だ。

 だから占い師のアドバイス何かでこんな所まで来てしまったのだ。

「早く大人になりたいです」

 そう呟いて、私はカップに目を落とした。

 カップの中の茶色い水面に自分の顔が映っている。

 自分の顔は見れるのに……。

「大人なんて気が付いたらなってるものですよ。所で……」

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i D @love7676-

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