21話 冥府を我が手に

 早朝七時。久しぶりに帰ってきた代行屋 天萬てんまの事務所。清水原が誰かに電話をする声で目が覚めた。


「あぁ、姉ちゃん? おはよう……あ、ごめんて。寝とったん?」


 静かな事務所に、小さな声がヒソヒソと聴こえるから思わず聞き耳を立てる。


「一応、こっちのこと片付いたけん、報告しようと思って。あぁ、藤磐さん家にはもう連絡したよ」


 頭の回転が悪いから、誰と話しているのか、藤磐が誰だったか上手く思い出せない。

 清水原は時折、笑いながら相手の言葉を聞いていた。相槌。また笑う。


「ま、俺はただ待っとっただけやけどな。玉城が頑張ってくれたけん、なんとかなったっていうか」


 突然、あたしの名前が飛び出すからびっくりする。思わずシーツをこすってしまった。でも、横で寝ている亜弓妹は気づいておらず、スヤスヤと寝息を立てている。


「ウカちゃんはこの消去人から返してもらった。そんで、玉城が視たところ、この消去人には恵比須の色が染み付いとうらしい。で、今はどうやら恵比須がこっちに居らんごたぁけん、八坂神社行って調べてくれん?」


 またもやあたしの名前が出てきた。

 やめてよ、知らない人にあたしのこと喋るの。恥ずかしいだろ。

 もういいや。寝よう。いちいち気にしてたら目がぱっちり覚めてしまいそうだ。


 ***


 昨夜。

 ぐすぐすと泣きべそをかく亜弓妹を保護したあたしたちは、眠っているウカちゃんを叩き起こした。


「おい、お前。散々迷惑かけとんのに、何が酒だコラ。普段の行いが悪いからこんなことになっとるんやろ」


 思ったよりも清水原の恨みが強かった。

 ウカちゃんはどうやら消えていた間の記憶がないらしい。時間が止まったままなのだそうだ。


「うぅぅ、ひどいよぉ。そういうことならもっと優しくしてくれたっていいじゃないかぁ」


 こちらも泣きべそをかいて訴えてきた。そんなウカちゃんを放置して、清水原が脅すような低い声を放つ。


「このお代はたかーくつくけんね、ひと月分の幸運と酒とその他もろもろを徴収する。いいな?」


 こうして、清水原は神様代行を終了させた。



 弁天さんへの報告は碓井くんに任せて、亜弓ちゃんと妹ちゃんとあたしは事務所に向かった。清水原は吉塚さんのところへ行くと言ってそれきりで、目を覚ますまで帰ってきたことに気が付かなかったわけだ。

 さて、亜弓ちゃんと妹の沙与里さよりちゃんは再会に喜ぶ――こともなく、なんだかよそよそしい。


「もう寝よ。疲れたし」


 そう言って亜弓ちゃんは、シャワーに入っていった。ちなみに、彼女はここに泊まるつもりらしく、ちゃんと日用品を揃えていた。

 その間、あたしは妹ちゃんを観察する。彼女は真っ赤に腫らした目を怯えさせていた。


「――ねぇ、沙与里ちゃん」


 じっと目を凝らして見ていると、なんだか違和感を覚える。

 突然話しかけられて、沙与里ちゃんは「ひっ」と肩を上げた。いやいや、さっきまで派手に黒い弾丸(清水原曰く、削除砲デリートガン)を撃ちまくってたじゃないか。

 それがこんなに縮こまってしまうなんて、清水原の欺きは恐ろしい。怖いものに化けられたらやばいな。覚えておこう。

 さて、あたしは沙与里ちゃんにまとわっている、金色のモヤみたいなもの――それは、なんだか神様のようなオーラ――に気づいていた。しかも、なんだか鳥肌が立つような悪寒まで覚える。


「あのさ、あんた、本当に大黒さんのカミゴになったの?」


 訊くと、彼女は「え?」と顔を上げた。でも、すぐに俯いてしまう。


「分かんない……だから、試したかったんだよ。ぼくは元々、大國主さまのカミゴだったから、食べる力を持ってたから。でも、大黒のカミゴになっても同じような感じだし、これが本当に大黒のカミゴになったからなのか分かんなくて」


 まさかのボクっ娘だった。目は大きいし、ポニーテールだし、小さいし、でも胸はある。くそ、負けた。うーん、普通に可愛い系。小動物みたいな可愛さ。そんでもって妹で巫女か。属性多いな。じゃなくて。


「食べる力って、あんた元喰人なの!?」

「うん」


 なるほど。だから神様を喰らうだの、力を得るだの言っていたのか。納得。


「でも、あたしはそのへん、よう分からんのやけど、ウカちゃんが返ってきたってことはやっぱり神通力が変わったってことじゃないの?」

「……かなぁ?」


 自覚がないらしい。

 しかし、彼女に纏わるオーラは強い。神様じゃないのに、深く染み付いているみたいな……


「喰人は神を喰う。だから、力が混在する。玉城ちゃんが視えてんのは、その喰らったものたちなんでしょ」


 シャワーから戻ってきた亜弓ちゃんが、さっぱり顔でタオル片手に現れた。

 いや、待って。亜弓ちゃん? じゃないぞ。どことなく違う。化粧をとったからじゃないのは分かっている。


「お姉ちゃん!」


 沙与里ちゃんが急に立ち上がる。

 あぁ、なんだか沙与里ちゃんにそっくりだ。あたしの知ってる亜弓ちゃんは、鼻が小さくて涙袋があって、目尻が上に上がっている。でも、今はタレ目だし、鼻は高いし、なんだかスッキリとした美人だ。

 目を凝らしても、亜弓ちゃんであることは間違いないと認識している。うーん?

 亜弓ちゃんは固いソファに座り、足を組んだ。そして、妹は見ずに、あたしの不思議そうな目を見た。


「あぁ、あたしは水の神通力を持ってるの。水分ならなんでも操れる。だから、毎朝化粧水で顔を変えてるんだよね」


 思わぬ情報に、あたしは「へぇ」としか言えない。すごいな、その能力。めちゃくちゃ欲しい。整形も自分でできるってことじゃん。


「お姉ちゃん……」


 沙与里ちゃんが悲しげに呼ぶ。すると、ようやく亜弓ちゃんが妹に反応した。


「ウカちゃんを消したことは許されないよ。それに、あんたが大國主のスパイじゃないっていう証拠もないし。まだ信用できないんだから」

「ちょっと、そんな言い方は」


 つい口を挟むけど、亜弓ちゃんの気迫には逆らえない。

 沙与里ちゃんもしおらしく俯いてしまう。


「ごめんなさい……」


 涙を溜めて、口をぷくぷくさせて、怯える。

 かわいそうとは思うけれど、まあ、あんだけ暴れまわってたしなぁ。

 ただただ泣きじゃくる彼女に呆れる亜弓ちゃんをなだめるのに精一杯だった。


 結果、落ち着くまで待つことにして、就寝。

 時刻は午前二時。亜弓ちゃんがソファは固くて寝られないと言って、あたしの部屋を強奪した以外は特に問題なく眠ることができた。清水原の固いソファで。


 ***


 お昼も過ぎてほとんどおやつの時間、全員が起きて身支度を適当に済ましたら、清水原がコンビニでお弁当を買ってきてくれていた。


「昨日の恵比須さんがあまりにも不評やったし、悪いとは思っとうし、そういうわけで飯でも」


 こいつなりの気遣いか。

 しかし、恵比須さんに化けるなんて悪趣味にもほどがある。あたしを含め、特に八尋姉妹は忘れないだろう。

 テーブルに乗るのはガリバタチキン弁当と幕内弁当とハンバーグ弁当とミートドリア。さすがに初夏の時期にミートドリアはない。有り得ない。

 幕内を狙ったが、あたしの手は掠めてしまった。清水原が取っていった。その隙に姉妹が弁当を取る。ミートドリアだけが残った。


「それで、落ち着いたかな。さっき、黒崎のシノさんから電話があって、確かに八坂神社でカミゴが行方不明、名前はサヨリ。元はスサノオさんのカミゴだったけど、大國主にとられたんだと。そう言っとった。間違いないね?」


 割り箸でカリカリ梅をつまんで清水原が切り出す。


「あ、はい。そーです」


 昨夜よりはあっさりとした返事で沙与里ちゃんが言う。ハンバーグを箸で割りながら。


「ふうん。もうそこまで調べがついたんだ。早いね」


 亜弓ちゃんもあっさりとした声で言った。ガリバタチキンをもごもご噛みながら。

 あたしは熱々のミートドリアを冷ますのに忙しい。


「ってことは、大國主、恵比須側も気づいとうはずよね。んで、沙与里ちゃん。君はどうして博多に来たん?」


 清水原の問いは、世間話をするような手軽さだった。なのに、内容は核心に迫っている。

 なんとなく、唾を飲み込んで答えを待った。

 やがて沙与里ちゃんは、箸を置いて呟くように口を微かに動かす。


「……を探しにきた。でも、ぼくはこれがチャンスだと思ったんだ。大國主さまから逃げるチャンスだって」


 瞬間、清水原と亜弓ちゃんがあたしを見た。ドリアを冷まそうと、おちょぼ口のままであたしは固まる。


「え、何……」

「いや、まさかそうきたかと思って」


 ごにょごにょ言う清水原。


「え? なんで? なにが?」

「……お前、自分が神好みだって忘れとるやろ」


 清水原の呆れた声。あたしは脳内を巡らせた。


「あーっ! そうやった……あたし、神様の景品じゃん……忘れとった」


 本当に忘れてた。びっくりしてドリアをひっくり返すかと思った。


「神好みを探しに派遣された、ついでに今が逃げるチャンスだと強行突破した、大黒のカミゴになって神通力を上書きした、って感じかな」


 清水原と亜弓ちゃんはため息を吐いて、もうあたしから目を逸らす。


「そういうこと、です」


 沙与里ちゃんはまだ後ろめたそうだ。それに亜弓ちゃんが眉を曲げる。


「他には? まだなんかあるやろ」

「う……うん。まだある。あります。危ないから、みんなに注意したいやつが、あります」


 その言葉はたどたどしい。


「福本に注意です。。でも、ぼくなんかよりも真っ黒でえらいやつ。超やばいやつです」


 その言葉には、あたしだけが息を飲んだ。


「福本……なんか聞いたな」


 清水原が唸る。亜弓ちゃんは首を傾げるも、不安そうに口の端を伸ばす。沙与里ちゃんはパクパクとハンバーグにありついた。

 そんな彼らにドリアをぶちまけたくなったけれど、立ち上がって抗議するだけに留めよう。


「福本だよ! 恵比須さんのカミゴの! あたしが会った黒ずくめのやばいやつ!」

「黒ずくめのやばいやつって……酒の名前のコードネーム使う連中みたいだな」


 清水原が言うけれど、今はそんな呑気な話はしていない。


「やっぱり福本はやばいやつだったんだ……あたしの目は正しかった……」

「まぁ、今回のことで玉城の力は本物だって分かったしな……了解。福本は要注意人物ってことで、」


 清水原が弁当をテーブルに置く。あたしの力を買ってくれるのはいいけれど、これから一体どうしたらいいのかは分からない。

 でも、彼の開いた口からは具体策が続かない。

 事務所のチャイムが鳴ったからだ。


「誰かいな、こんな時に……」


 苛立たしげに清水原が立ち上がる。それを見届ける。


「すみません、今は営業時間じゃないんですけど」


 ぶっきらぼうさを消し去った営業ボイスで迎える。しかし、彼はすぐに息を飲んだ。

 針金みたいに細長く、黒ずくめの男――福本勇魚が現れたから。


「あぁ、すみません。ちょっと急用がありまして、ごめんください」


 あたしはすぐさま立ち上がり、姉妹を引っつかむ。でも、その動きを封じるかのように福本が声をかけてきた。


「あぁ、あなたたちにもお話があるんですよ。そのまま居てください。お昼ご飯、まだ済んでないようですし」


 何も言えなくて悔しい。清水原を見ると、彼は腰に手を当てて息を吐いた。


「……そうですか。じゃあ、お話だけでも窺いましょ。どうぞ」


 中に入れちゃうのね……うーん、嫌だ。でも、清水原の警戒した声音を聞けば反論できない。


「失礼いたします」


 福本は軽快な足取りで中へ入ってきた。そして、清水原に促されて固いソファに座る。

 あたしたちは清水原の側で固まって座る。清水原は指を組んで前のめりに福本を見た。ニットキャップの中から。


「本日はどういったご要件でしょう」

「その前に、私はあなたのお名前が分かりません。そちらのお嬢さん方は分かるんですがね」


 あたしと沙与里ちゃんはともかく、亜弓ちゃんまで知られている。緊張感が増し、清水原も口角を引きつらせた。


「申し遅れました。代行屋 天萬所長の清水原です。まぁ、これでも化人なんで、福本さんが俺の顔をどう見ているかは分かりませんが」

「あぁ、化人ですか。どうりで分からないわけです。私のじゃなかったもので……では、本題に入りましょうか、清水原さん」


 福本の顔色は一切変わらない。ずっとにこやかで、まるで菩薩のよう。それが余計に恐れを増す。

 一方、清水原は笑わない。


「まずですね、」


 福本が細い指を一つ立てる。


「恵比須さまから頼まれているのです。うちのカミゴが一人消えたと。八尋沙与里さんです。彼女を返していただきたい」

「それは無理です」

「何故です?」

「彼女は神を消した。これはカミゴ条例二十三の違反に相当します。よって、カミゴ倶楽部に強制引渡し。博多じゃありません。黒崎です。これは、既に決定しています」


 清水原は毅然と言い放った。


「今朝、黒崎から連絡がありました。博多カミゴ倶楽部所属でない未登録の場合は、博多に引き渡さなくてもいいわけですから。調べてもらっても構いませんよ」

「……そうですか、困りましたね」


 渋るようだが、福本は笑顔を崩さない。彼はソファにもたれ、仰ぐように宙を見上げる。


「しかし、私も手ぶらで帰るわけにはいかないんです……何せ、恵比須さまは怖い。あなたもよく分かっているでしょう、清水原さん。だからね、私はもう一つあなたに提案します」


 まるで、切り札を出すような言い方だった。その滑らかさにヒヤリと首筋が冷える。

 福本は顔を真正面に戻し、清水原を見た。でも、指はまっすぐあたしを指す。


「彼女か八尋沙与里、どちらかを渡してください。でなきゃ、どうなっても知りませんよ」


 あたしはいよいよ首をすくめた。

 怖い。ただただ怖い。体の中がざわつくように、気持ちが悪い。

 姉妹も何も言えないようで、息を止めている。


「お断りします」


 寒気と緊張で凍りついた場を清水原が破った。迷いなく。きっぱりと。


「玉城はうちの従業員ですし、大黒天のカミゴですから。そうそう簡単に渡しやしませんよ。特に手土産の一つもない無礼者には」


 ん? うーん……最後のは別にいらなかったのでは。


「あぁ……それはそれは、ご無礼を。確かにその通りですね」


 福本は納得したように吹き出しながら、肩を震わせて笑いながら言った。ツボに入ったのか。嘘やろ。


「清水原さんの言う通りでした。また出直します」


 そう言って彼は立ち上がる。まっすぐに玄関へ向かい、一礼。そして、あたしを見た。


「玉城さん、でしたっけ。私に嘘をつきましたね、爽奈さん。いい友達になれると思ったのに。まさか神好みだなんて、知りませんでしたよ」


 なんとも返せない。いつもなら暴言の一つでも吐くのに。悔しい。

 そうこうしているうちに、福本は呆気なく事務所を出て行った。

 すかさず、清水原がキッチンから塩の袋を出してくる。玄関にぶちまけた。


「やかましいわ! 二度とくんな!」


 思い切り塊を投げたら、玄関のアルミがわずかにへこんだ。大変ご立腹の様子。清水原って、意外と怒りっぽいよね……。


「よし、お前ら、飯食ったら寝ろ! 今のうちに英気を養うんだ、分かったな!」

「待って、対策は?」

「考える。ちょっと待ってろ」


 そう乱暴に言って、清水原はタバコをポケットに押し込み、事務所を出て行った。



 頭を冷やして帰ってきた清水原が口を開いたのは、十八時を過ぎた夕暮れの頃だった。


「こうなりゃ、八尋姉妹と俺で玉城を守るしかない。恵比須さんに絶対渡すな。事務所に穴開けてもいいから食い止めろ。やつは必ず、なんらかの形でやってくるやろうし、それがどんな手かは分からん。今、黒崎で調べてもらいよるけど間に合わんかもしれん」

「待ってよ、あたしだけ守るのはダメやん。沙与里ちゃんは」

「沙与里ちゃんは戦えるからな。昨日ので分かってる。亜弓ちゃんもいけるやろ?」


 清水原の問いに亜弓ちゃんは慌てて頷く。


「大丈夫」

「よし。怖いとは思うけど、協力よろしくね。いざとなったら碓井くんが駆けつけてくれるから」

「うん!」


 意気投合する三人。あたしだけが蚊帳の外。

 うーん、あたしも戦えたらよかったのに。悔しい。



 しかしここで、あたしは碓井くんを呼んだという理由をもう少し真剣に考えるべきだった。



 *


 *


 *



 所かわって、黒崎――


「綾乃さま、今から鬼木さんを連れていくわ。ひどい火傷なの。祥ちゃんも暴走したから、ちょっと町が破壊されちゃって。ごめんなさいね、よろしくお願いします!」


 それをすべて一息に、霧咲が電話越しに言うものだから藤磐綾乃は合間に「待って」「ちょっと、霧ちゃん」「どういうこと?」と挟むしかなく、また一方的に通話を切られてしまったので、何も分からない。


「んもう……あの子ったら、いつもテンパったら訳が分からない」

「あなたが言えたことじゃありませんがね」


 横で明水がこっそり言うも、綾乃は聞かない。


「せっかく、慎一のとこが片付いたみたいなのに、ねぇ?」


 と不満に言っていたら、またもや電話がかかってきた。ジリリリッとけたたましい黒電話が鳴る。


「はいはいはい……え、慎一? 何よ、あなたも取り乱しちゃって、らしくないわね。え……? うん、うん……」


 何やら不穏な響きである。


「どうしました」


 明水が訊く。すると、綾乃は眼鏡の奥の目尻を弱々しく下げた。



 *


 *


 *



 事務所を燃やされることくらい、想定できたことだろう。

 それなのに。

 亜弓もいたのに、間に合わなかった。爆発を止めるなんて不可能だった。


「清水原くん!」


 呆然とビルの真上を見上げる清水原を碓井が呼ぶ。


「亜弓さんと妹さんは無事だけど……」

「あぁ、玉城がやられた」


 消防のサイレンが鳴り響く中、清水原の声は静かすぎる。

 そんな彼の背後に、人影が二つ。一方は倉稲魂命うかのみたまのみこと。そして、もう一方は――


「あーあ、やってくれたね、清水原くん。この失態、どうしてくれようか」


 苦笑を浮かべつつも、訳知り顔で炎を見つめる菅原道真が言った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る