青電話
安良巻祐介
電話のランプが少し前からサファイヤ色に点灯するようになり、元のように赤や緑には光らなくなってしまった。
サファイヤの光は、発信者不明の、つまり僕の知らない人からの、心当たりもない着信を指すらしい。
知人友人と呼べる人たちとのやり取りを殆ど無くしてしまったせいかしらん、などと僕は独り言ちた。
今までこのように青く光るランプというのを見た覚えがないので、果たしてこれが、元から電話に備わっていた機能なのか疑わしいのである。
ともかく、帰宅した部屋の、それなりに広い暗闇の中に、ぽつりと一つ、ガスの目玉のように青く輝くものを見つけた時には、わかっていてもぎょっとする。
僕は、電灯を点けるのをためらい、その青い目へそろそろと近づいていって、じっと見つめる。
ランプが瞬いていても、電話そのものは暗闇の中に輪廓を溶かしたままで、だからその灯りは他のものを照らすのではなく、ただひたすらに、自分が青く輝いているばかりだ。
僕は、名前欄の×××となった着信ディスプレイを意識し、得体の知れない恐ろしさを感じる一方で、この不可解な光を、何となくずっと見つめたまま、それでもなぜか、ひどく美しくも感じるのである。
青電話 安良巻祐介 @aramaki88
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