第10話 約束された結末

夜が来た、ついに俺にとって運命の時が来たという訳だ。                    


アーモンドとの協力によって天使と誠を屠る計画が今現在この部屋で行われていたが、


アーモンドに対して騙し打ちをかける役目を請け負うのはこの俺である。


俺は現実世界で嫌な思いしかしてこなかったが、


俺にだって死んでいった関わりを持つもの達に対しては死後の世界でまで傷ついて欲しくないのだ。




「全員揃ったな」




俺達四人、そして後ろに歩く護衛の天使達は進んで行く。


門の外へと、闇しかない天国と地獄を繋ぐ道へと。


俺達は音を立てずに歩いていく、闇の中とはいえ仲間の姿が見えない訳ではなかった。


それは前にいる二人の天使が松明を掲げ進んでいるからだった。


前にいる事から丁度姿が見えない位置も存在するのだ、


俺の姿やアーモンドの姿ははっきりと見えてはいたが、


左腕を力一杯斜め下に伸ばせば他の天使やアーモンドが見る事の出来ない位置にへと移動できるのである。


そこで俺は密かに左腕を悪魔の手にへと変貌させる。


見つからない様に鋭い爪を立てて、下からアッパーするように彼女を切り刻もうとイメージした。




「ぐはっ!?」




叫び声の主は当然ながらアーモンドだ、しかし俺は何も手を出していなかった。


彼女が叫び声を上げる前はっきりと聞こえたのは得物が腹部に突き刺さるような鮮やかな音である。


では一体誰が……?


先頭にある松明に照らし出された原因となる主は、


その得物を明らかに投げたようなポーズを取っていた。




「っな……なんだこれは……」


「気分はどうだよ、人間に化けた悪魔め……」




そのポーズを取った人物は今まで見てきた者の中で一番以外な人物である、


誠の姿だった。




「が……がはっ……何故……」


「何故てめえの正体がわかったって? 最初から知っていたさ、10年に一度の選ばれし者、それは閻魔が選んだ者であってその人物が俺達天使達に伝えられない訳ないだろ、お前がこの場所に来るって事は全部閻魔にばればれなんだよ」


「はは……残念だが私を倒した処で無駄な事だ、まだバエルが……」


「バエルだって? 残念ながらここにはそんな悪魔いねえよ」


「ぐっ!?」


「お前達が10年に一度ここに来る予定だった人間を捕らえてるって事はもう既にばれてるんだよ、お前達の中に魂転移を使う悪魔がバエルだったか? 残念ながらお前は死んだその子に取りつく事に成功したようだがバエルって野郎の方はうまいこと閻魔様が魂をそれよりも早く取り入れた」


「取り入れただと……」


「そうだ、それがこの時和だよ、迂闊だったな? お前はその子にアーモンドって名前を付けたようだがこいつだけ日本名の時和ってつけてる事に違和感を感じなかったのか?」


「わ、我々は名前なんてどうでもいいんだ、そんな事で気づく訳……」


「そこに意表をついたのさ」




俺のこの姿は悪魔だけど悪魔じゃないという事なのか……?


だったらこの悪魔の手の正体は一体……。




「わしの力じゃよ……」


「っは!?」




辺り一面に広がる闇は一瞬にして消え、現れたのは今まで見たことのないような巨体の身体を持つものだった。


もしかしてこいつが閻魔というやつなのか……?




「貴様閻魔か!」


「ほう、若いから私の顔が分からんか、しかしその口ぶりからして随分と悪魔の立ち位置も偉くなったもんじゃの」


「くっ……」


「お前ら悪魔の所業、全て遥か遠くから見ておった、ついにこの天界付近までこれたのじゃ、もうお前たち悪魔を容赦する事はない!」


「ど、どうする気だ……」


「決まっておる……お前ら全員皆殺しじゃ!!!」




ッパン……。




アーモンドが消えたのは一瞬だった。


風船がふくらんだ訳でもなく、あっけなく破裂した彼女。




「私を助けてくれたんですか?」


「いいえ、それは違うのう……お前さんが我々天使たちを助けたという方が正しいわい」


「閻魔様でしたっけ? 俺はこれからどうなるのでしょうか?」


「勿論お前さんは本当の天国しごのせかいに行ってもらう、善良な働きをしてきたものがこの場所に行ってもらうのは至極当然じゃからな……」


「そ、そっか……」




俺はついに死ねるんだと思った、本当にいるべき場所はここじゃなかったんだと。




「皆、短い間だったけどありがとうな」


「礼を言うのはこっちの方だ」


「そうだよ! 僕達は時和くんに一杯一杯助けてもらったんだから!」


「誠……マスティマ……」


「では時和、お前さんを天国まで案内するのはわしの務めじゃ……」




目を閉じた……。


自発的ではなく、勝手に目先は真っ暗になり、閻魔によってどこかに連れていかれたのだ・。


そして……目が開いた場所には煌びやかに光る景色が辺り一面に広がるのだった。




「そうかここが天国……ってええ!?」


「おかえり……これからもずっと僕と一緒だよ」




木にもたれかかる少女はみたことがある、だが思い出せなかった。


そもそも俺は落雷に打たれて死んだ筈だが……ここは天国なのか?

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天使さん側につくか悪魔さん側につくか悩んでいます。 コルフーニャ @dorazombi1998

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