第2話

「ねぇ、ママ。

彼と、コップの中の漣を試してみたけど

漣が立たなかったの…」

あら、どうしましょ…

「漣?あなたよく覚えていたわね」

「大人になって、大好きな人が現れたら

試してみようって決めてたの」

「彼のこと、大好きなの?」

「うん、でも…上手くいかないのかな?」

「どうかしらね。

今度、家に連れていらっしゃい」



「漣が立たなかったって?」

「ええ、すっかり落ち込んでたわ…」

「ブラボー!僕の魔法は今度もちゃんと効いている!娘を渡してたまるもんか」

「あなた!」

「だいたい、どんな男なんだい?

簡単に許すわけにはいかないよ」

「今度、連れてくるみたいよ」




「素敵な彼じゃないの!」

キッチンで娘と囁き合う

「でしょ!すごくやさしいのよ」

「そうね、じゃあ、アレを試しましょう」

「アレ?」

「ええ、後でね」


食事が済んで

娘と彼はダイニングでコーヒーを飲んで

寛いでいる。

「すごくおいしかったです。ごちそうさまでした」

「いいえ、お口に合って良かったわ」

「これなに?バラ?」

「そうよ、バラの蕾」

水の入ったグラスに蕾のバラを一輪挿して

テーブルに置いた。

「このグラスを二人で持って、蕾を見つめて。相性が良ければ、バラが開くのよ」

「ええ!本当に?」

「漣は立たなかったよね…」

「今度は出来るかもよ。さぁ、やってみて」

二人は両手でグラスを包み

蕾を見つめた。

私はキッチンの隅へ行き

口元を左右に素早く動かした。


「えぇー!すごい!」

「本当に開いた!」

「良かった。俺、結構落ち込んだんだよ。

漣が立たなくて…」

「ほんと?私もすごくショックだった…」

「でも、バラは開いたね」

「うん。良かった」

二人はバラ越しに見つめ合い、幸せそうだ。




娘にも

そろそろ使い方を教えないと。



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コップの中の漣 ぴおに @piony

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