第2話
白いベットの上にて
電車の音がカタカタと流れていく。どうも季節が変わってきたらしい。そんな小さな変化に、つい頰が綻んでしまう。屋上での定期的な運動の最中、下を見ると紅葉がほんの少し鮮やかな赤みを帯びている所。
そうだ、こんな時に電車の音は聞こえてくるんだ。後ろで私を押す親戚のおばさんも
「榠夏ちゃんは小さな事によく気づく子だね。」
と褒めてくれる。私は幸せだ。
自分の容体は実際あまり知らされていないが優しい周りの人達の気遣いから察するにあまり良いとは言えないらしい。それでも鏡に映る私は痩せこけたとて笑顔なのだから幸せには違いないのだ。
その後、
今日も清潔な病室で外を見ている。近くで行き交う人を見る方が楽しいというのにもっと。もっとだ。
多分私はずっと遠い場所を見ていた。
曖昧だと思うかもしれないが自分の事を客観的に見る事は意外と難しいのだと、隣の机に積まれた物語達が教えてくれた。
幸せではあるのだろうけど、どこか満たされないような。これもどこか曖昧というか夢現の中というか。
「ふふっ。」
私は今日一番の笑顔を浮かべる。よくわからないものに絶対的な期待を寄せている。こんなものを<運命>とでも言うのだろうか。
胸の高鳴りを手で感じながら確かに私は生きている。
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