ギャップ萌どころじゃない
カップルの別れというのは、別れるのが嫌で涙するものだと思ってた。
壮一は、私の実家に来てからというもの、あからさまに結婚を意識するような行動を私の前でとってみせた。
デート中に、わざと結婚式場の前を通ったり。、本屋ではブライダル雑誌を立ち読みしている姿を私に見せたりした。
でも、壮一の行動は逆に私に別れ話を想像させた。
正直、そうやって私を遠回しに結婚モードにさせようとしている壮一の行動は、私を苛々させた。
むしろ、プロポーズなどはっきりした形で言ってくれるならまだよかった。
それならば、少しは状況は変わっていたかもしれないと、今考えれば思う。
壮一が必死で、私を結婚のほうへ靡かせようとしている間に、私が必死になっていたのは転職活動をしていた。
壮一と付き合ったきっかけは同僚だというのが、私の後ろめたさだった。
だからこそ、私は壮一と別れた後に同僚に根掘り葉掘り聞かれる対策のために転職を考えたのだ。
壮一には、スキルアップをしたいから転職を考えているといった。
壮一は、私の転職活動を知って、驚き、何か言いたげだったが、私は気付かないふりをした。
私は、この時、酷い女を演じきった。
いや、演じるというより、私は酷い女だった。
転職活動をしてから、私は極端に壮一の誘いを断るようになった。
デートも食事も、すべて転職活動を理由にすれば、壮一は何も言えなくなるのを私は知っていた。
もしかしたら私も、そんな生活をしていれば壮一から別れ話を切り出してくれるというのを期待していたのかもしれない。
そんな中で、私の転職先が決まった。
内定通知が届いた日に、壮一が勤める会社の前で壮一が仕事が終るのを待っていた。
会社から出てきた壮一は、私の姿を見ても驚く様子もなく、ごく自然な形が私に近寄ってきた。
ここで、私はさらに最悪な酷いことを壮一にする。
壮一が近寄ってきた瞬間に、
「別れよう。」
その一言だけ、伝えた。
その言葉に固まる壮一に、私は、
「わかってたでしょ?そういうことだから。」
と言って、その場を去った。
そのあと、何度か壮一からメールや電話が何度かあった。
メールは読まずに削除し、電話は着信拒否にした。
知ってた。
自分がいかに嫌な女かってこと。
そんな酷い自分に絶望して、私は1週間後に一人涙した。
いがぐり 南条 華 @nanjouhana
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