始まりと終わり

本来ならば、サプライズは誕生日にプレゼントを相手に知られずに用意したり、急に何か相手を喜ばせるために行うものだと思ってた。


まさか、メールの中でもサプライズがあるなんて…知らなかった…。


壮一が、結婚を考えていたなんて…。まさか、両親に会いたがっているなんて…。


あのとき私は、なんて返事をしたんだっけ…。


確か、その夜は現実逃避でスマホを遠くにやって、眠くないのにベッドに横になったのは覚えている。


そういえば、数日間、仕事でミスばかりして怒られたのを覚えている。


そうだ…。あの時、私はメールを何度も打っては消してを繰り返していた。

でももやもやは消えなくて、直接会って話したような気がする。


親に壮一を会わせれば、結婚を期待するに違いない。


自分が結婚を考えていないことを正直に伝えるはずだったのに、自分にはこんなに言い訳の引き出しがあったのかと驚くほど、私は壮一に言い訳をして両親と会わない口実を口から発した。


でもなかなか壮一は納得しなくて、結局のところ、急に結婚なんて話を持ち出して親を動揺させたら印象が悪くなるからと言って納得させた。

それでも両親には一度、挨拶だけはと壮一が言うので、仕方なく会わせることにしたのだ。


壮一にが我が家に来る前日の大掃除は、今までの掃除の中で一番思い出深かった。


いつも以上に、私の部屋にある漫画やアニメのDVDを念入りに隠して、掃除機は隅から隅まで。

何度も何度も、指であちらこちらの埃を確認して、本来ならば物でごチャットしている部屋をシンプルな部屋にするまでに一日をかけた。


こんな大掛かりな掃除、あの日から一度もしていない。


そう父が来た日は、緊張して、生きた心地がしなかったのを覚えている。

うろ覚えだけれど、母は揚げ物や煮物、それに普段は絶対に作らないちらし寿司なんかを食卓に並べた。


父は、人からもらった高いお酒を壮一に何度も何度も勧めていた。


今思えば、「結婚とかじゃなく、お付き合いしている報告だから。」と私が両親に説明したのにも関わらず、両親は期待していたんだと思う。


壮一の口から、結婚という言葉が出るのを。

そのくらい、分かりやすく喜んでいた。


私はそんな両親の姿に、罪悪感を覚えたのを覚えている。


壮一が、結婚の話異を出したのは、両親の前ではなく私の部屋だった。

無理やり作ったシンプルな私の部屋を気に入った壮一は、

「那月の部屋みたいなところに、結婚したら住みたいよね。ごちゃっとしてなくて、落ち着く場所で家族を作るんだ。」


きっとこの時、彼の中で結婚生活は妄想の中で始まっていたのだろう。


でも私は、この時に、壮一との関係の終わりを想像していた。



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