第4話

「あなた方、第一にして、女子高生という単語に反応しすぎじゃないですか? 僕達は誰に見られても健全な会合を目指しています。だから場所もこんな風にオープンな所にしているのです」

 僕は知らない二人に云った。


「大体、七海さんの気持ちを考えてくださいよ。ここに集まったメンバーは俳句がやりたくて集まっているんです。そんな色眼鏡で見るのはやめてください」


 知らない男の人と女の人は少しバツが悪そうに黙った。

 やばい、全員黙ってしまった。

 これを打破する言葉は……僕は必死で考えた。


「あの……」第一声を発したのは、七海さんだった。


「自分、男です」七海さんが云った。


「え?」状態が理解出来ない。


 七海さんは立ち上がり、学生証を取り出した。テーブルから見えたのは、制服のズボンだった。そういえばさっきは、顔しか見えなかった気がする。


「七海倫太郎といいます」


 この場に居る全員が驚いた。ハスキーボイスだとは思っていたけれど、顔を見て完全に女子だと思い込んでいた。


「男子なら、問題は無いってこと?」綾瀬さんは男の人に云った。男の人はやっぱりバツが悪そうにしていた。


「皆さん、申し訳なかったです。早とちりして失礼な事を云ってしまいました。」男の人は頭を下げた。

「私からもごめんなさい。実は会合に来るのが少し不安で……初めて会う人ばかりだったから。だからこの人に、店内で見ていてもらおうと思っていたの」綾瀬さんははっきりと、そして申し訳なさそうに云った。


 急な展開にどう反応していいか解らずにいたら、渡辺くんのお知り合いの清楚な女性も頭を下げてきた。

「私も、ごめんなさい……彼の事が気になってつい……」

「彼女を不安にさせたのは僕が悪かったんです。申し訳ないです」渡辺くんも一緒に謝った。


「誤解が解けたようで、良かったですね」七海さん、いや七海くんが静かに云った。

 誤解は同時に解けたようだね、僕は心の中でつぶやいた。


「良かったら皆さんも一緒に俳句、やりますか?」僕は微妙な空気を払拭したくてそう云った。


「いやー……遠慮しておきます」苦笑の混じった笑顔で二人が同時に答えた。


 もし今後メンバーが増えたら、カフェで席を二つ確保しないといけないなー。そう思いながら、僕も一緒に笑っておいた。

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冒頭 青山えむ @seenaemu

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