ライバル登場!?
「ここが図書室で、その横が特別教室よ」
「はい……」
おれは、予定通りエリカに学園案内をしてもらっている。
今は一階の案内が終わり、二階を案内してもらってるところなんですけど……。
どうしましょう、実はまったく覚えられていません!!
この学園、広すぎですよ!
外装も内装もファンタジーの物語に出てくるようなヨーロピアンな感じで、まさしく外国のお城という感じです。
ああ、今にもそこのドアから王子様が出てきそうです……。
そう思った瞬間、ガラリとそのドアが開いて、中から少年が出てきた。
おれは、思わず目を見開いた。
日の光りに輝いて光る少し猫っ毛な金髪。
エメラルドのような緑色の瞳。
おれから見えるその横顔は、異常なほど整っていた。
その少年の姿を確認した瞬間、おれは叫んでいた。
「ほ、ほんとに王子様が出てきちゃいましたー!?!?」
おれの叫び声に驚いて、隣にいたエリカがビクっと体を揺らす。
廊下を歩いていた人達も、何事かとこちらを見た。
当然、王子様もおれに気付いてこちらを見た……っと思ったらこっちに歩いてきちゃいました!?
ど、どうしましょう!あ、分かった!よく時代劇でやってるやつをすればいいんですね!
おれは急いで土下座のような体制をとると、頭を下げた。
「ははーーーっ!」
よし、我ながら上手くできました!
「……………………」
あ、あれ、何故か廊下が静まりかえってる?
……ちょっと待って下さい。よく考えたらさっきのって、日本の殿様にやるやつでした!
おれ、絶対間違えましたよね!?
おそるおそる顔を上げると、エリカが戸惑ったようにこちらを見つめている。
「ユ、ユウト、……大丈夫?」
「ち、違うんですよ、エリカ!そんなかわいそうなものを見るような目でおれを見ないで下さい!」
はっ、というかさっきの王子様は!?
もしかして怒ってるんじゃ!?
急いで王子様の方を見るとーー
「……………………」
真顔でこちらを見つめていた。
「いや、せめて何かリアクションして下さいよ!!」
「いや、一体何を奇妙なことをしているのかと不思議に思ってね」
奇妙なことって……たしかにそうかもしれませんけど、この王子様酷いです!
「それと、僕は王子じゃないよ」
「え、そうなんですか!?」
こんなに美形で、キラキラオーラが溢れているというのに!
少年は驚いて口を開けたおれから視線を外すと、おれの隣に立っていたエリカに目を向けた。
「それで、エリカ。君は一体何をしているんだい?」
「…私はユウトの学園案内をしているの。レベッカ君は?」
ふむふむ。レベッカ君っていうんですね。
というか、エリカとレベッカ君知り合いだったんですね!
おれが口を挟もうとする前に、レベッカ君が口を開いた。
「僕は先生に話を聞いてきたんだよ。それで、エリカ。そんな無駄なことをしている暇があるなら、ちょっとは魔法が使えるように練習したらどうだい?」
……なんでしょう、この言い方。
「ちょっと、今のどういう意味ですか?」
おれは、思わず立ち上がってレベッカ君に詰め寄った。
「そのままの意味だよ。へっぽこな転入生なんて相手にしてる暇があるなら、少しはマシな魔法が使えるようにしたらどうだということだ」
「レベッカ君、そんな言い方ーー」
「撤回して下さい!!」
おれは、自分に視線が集まるのも気にせずに、叫んでいた。
だって、さっきの言葉は聞き逃せません!
「おれのことは何て言ってくれても構いません。へっぽこなのは事実ですから。でも、エリカへの言葉は撤回して下さい!!」
あんなに綺麗なエリカの魔法のこと、悪く言うなんて許せません!
「ユウト……」
エリカが、驚いたように口もとに手を当てる。
対してレベッカ君は、自分は何も悪くないというように、偉そうに腕をくんだ。
「僕は本当のことを言っただけだ。なぜ撤回する必要がある」
な、この人どこまでーー
「あんな役に立たない魔法を使えても意味がない。今のエリカはこの学園のお荷物だ」
「!」
エリカは、一瞬傷ついたな表情を見せた。
……もう我慢なりません。
おれは、レベッカ君に一歩近づくと、人差し指を突き付けた。
「!ユウト、私は大丈夫だから!」
エリカは何かを悟ったのか、おれを止めようとする。
だけど、友達のことをあんな風に言われて、黙ってる訳にはいきません。
おれはエリカの制止も聞かずに、レベッカ君に告げた。
「レベッカ君、あなたに決闘を申し込みます!」
ざわっ。
おれがそう言った瞬間、様子を見ていた人達が騒ぎ出した。
「決闘だってよ……」
「あの転入生、命知らずだなー、ファルーア学園一優秀なレベッカを敵に回すなんて」
「ユウト、駄目よ!私なら大丈夫だから!」
エリカが、おれを止めようと手を伸ばす。
「いえ、おれが納得できないんです」
おれはその手を掴むと、じっとエリカの瞳を見つめた。
「おれは絶対レベッカ君に勝ってみせます。だから、おれを信じてくれませんか?」
「でも……」
エリカの水色の瞳が、不安そうに揺れる。
「おいおい、当事者を置いて勝手に話を進めないでくれないか?」
振り返ると、レベッカ君は、突き付けられたままの人差し指を見つめながら、面白そうに笑っていた。
「この勝負、受けてくれますよね」
「いいだろう。僕が負けたら君とエリカに謝ってやる。ーーただし君が負けたら、僕の言うことを聞いてもらうよ」
「望む所です!」
「ユウト……」
エリカの心配そうな声を聞きながら、おれは決意する。
何としてでも、レベッカ君に勝ってみせます!
おれがじっと見つめると、レベッカ君は不敵に笑った。
それは、自分が勝つことを確信している、余裕の笑みだった。
絶対に、この表情を崩してみせます!
魔法使いはじめました! 春星 アリス @alice112
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