第4話
捨てられた女は美大生で、舞子を恨んで顔がぐちゃぐちゃに潰れた舞子の絵を描き、舞子のところに押しかけ、その絵を舞子に受け取るようにと言ってきたそうです。
舞子が追い返しても、彼女は何度となくやって来たそうです。
嫌になった舞子は引越し、それ以来彼女とは会っていないそうです。
そこまで私に告げると舞子は言いました。
「お願いだから、あの絵、捨ててよ」
舞子は泣いていました。
私はいいました。
「わかった」
次の日、私はゴミとしてその絵を捨てました。
そのことを電話で舞子に告げると、彼女はとても嬉しそうでした。
ところが翌日、朝起きるとなんとあの絵が、私の枕元にあったのです。
――!
すると電話が鳴りました。
出ると舞子の妹からでした。
「おねえちゃんが、おねえちゃんが……」
妹が言うには、舞子が事故にあったそうです。
私は慌てて病院に駆けつけました。
病院に着くと舞子は手術の最中でした。
私はそのまま待ち、妹といっしょに手術をした医者の話を聞きました。
医者は困惑の表情で答えました。
「大型トラックにはねられたんですが、普通なら全身に大きなダメージを受けるはずなんです。それなのに身体は全くの無傷で、顔だけに大きなダメージがあるんですよ。右目は潰れて歯もほとんど折れています。症状としては深刻なものであり、今後きちんとした治療が必要ですが。それにしても相手はスピードを出した大型トラックと聞いています。たとえ突き出した顔だけで受けたとしても、それで全身をカバーなんて、出来るはずがないんです。とにかく不思議と言うか不可解と言うか。考えられないですね」
それを聞いた俺は、あることが頭に浮かびました。
とりあえずその場を妹にまかせて、一旦部屋に戻ったのです。
そして見ました。
先ほどまではぐちゃぐちゃになっていたはずのあの絵の顔が、綺麗な顔になっていたのです。
終
壊れた顔 ツヨシ @kunkunkonkon
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