65話
「そして、だ。なぜリフェイル殿が触った途端にその本の鎖が壊れた? ……なにか理由があるのか?」
続けて紡がれた国王の問いにディックは鎖が壊れた本のページを捲りながら答える。
「………あるにはあります。ですが、それはあくまでも私の見解で予想に過ぎないものです。ただ、この仮説が合っているとしたら―――鎖が壊れるのも納得していただけるかと」
そうして何かを見つけたのか小さく頷くと、そのページを片手で広げながらリフェイルの目の前に見せた。
グレイがディックの前から一歩退き、リフェイルがグレイを少しだけ見たあと、その広げられたページをまじまじと見つめる。
やがて。大きく目を見開きながら、
「………っこれは本当のこと、なのか? 見間違い、ではない……のかっ!!?」
そのページから目を話さずにディックに問いかけた。表情はずっと顔が本の方を見ているためわからないが、少なくとも信じられないという気持ちだけは口調から読み取れた。
それに対してディックはというと。とあるページに広げていた本をリフェイルの前から取り上げ、近くにいたグレイに手渡す。そうしてから一つだけ、ゆっくりと頷いた。
―――『本の内容が真実である』。それを知ったリフェイルは、まだ受け入れられないのか唇をかみしめて俯いてしまった。
一方、本を受け取ったグレイは小さく感謝を述べたあとにそのページを読み始める。その背中にピッタリとジェシカが、それから右側に寄り添うようにしてエレミアがその本を一緒に読もうと近づくのを気配で感じた。グレイはそのことに気づきつつも、とりあえずは目の前のことに集中と気にせず読み続ける。
そのページには。
『グラスウォール王家に代々伝わる魔法書について』という題名の下に、精霊神であり"十柱の神"の一人である不死鳥フェニックスについてのあれこれや、王族のみに伝わる魔法の数々が書かれていた。ただ、その呪文はグレイやエレミア、はてはジェシカには理解できないものだったのだが―――それはともかく。
それよりももっと大事なものがそのページの下の方に書かれていた。ジェシカやエレミアが書かれていた呪文を読み解こうと躍起になっているのをよそに、グレイが見知った筆跡を見つけたのだ。
曰く、
―――"巻き付いた鎖を壊すのは息子のリフェイルに。そして本の呪文は娘のレイリアンヌに"
―――"これは私の血縁者でないと壊れることはなく、また壊すのは男でなくてはならない。そういう風に私が作った結界魔法である"
―――"この本が本来の役目を果たすため、私がいなくなっても息子や娘にしっかりと託されることを祈る"
―――"全ては精霊神・不死鳥フェニックスの血を絶やさぬため。いや、その前に愛する妻・フィニアとの約束のため"
―――"私達の宝物である子どもたちのために、この本は君に託す。あの日奪われた私達の息子を探し出し、無事にこの本を届けてほしい。そして子どもたちだけでなく君も共に幸せになってほしい"
―――"ダニエル・ウィルヘルム=セシュレイ"
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