15話
―――痛みはいつまで続くのだろう。
無理矢理に飲み込んだ唾を抑えきれず、少しだけ口の端から垂らしてしまう。激痛のせいであまり力が入らなくてぐっと噛み締めれば、その唇から血がにじみ出た。聞こえるはずの声が少しも聞こえず、痛みととめどなく溢れてくる恐怖のせいでグレンの顔が涙に歪む。
しかしながら。この表情すらも相手にとっては愉悦以外にありえないだろう。何しろこちらをじわじわと壊しながら殺すと宣言した男だ。これはほんの余興の一部でしかないに違いない。
もはやこのグレンと言う男は精神が狂った、あるいは歪んだ危険な存在でしかないと認識するしかなかった。
そのままいくつほど時間がたったのか。いや、もしかすれば数分という短い間かもしれないが、痛みにより感覚がおかしくなったせいで時間が長く感じられる。
今となっては痛みなど麻痺して少し肌寒く感じてきた。血を流しすぎたせいか、少し意識が朦朧とする。途切れかけているのかもしれなかった。
貫かれている左の腕はほとんど感覚がない。どうにか動かそうと思えば動くだろうが―――あまり期待はできない。なぜなら神経が傷ついているかもしれないせいでうまく力が入らないと考えられるからだ。
反応が減ってきたのに気づいたのか、グレンはようやく彼女の二の腕から剣を引き抜いた。ブンと振り払ったあと元の鞘にしまいこみ、またじっとレイラを見つめてくる。どうやらまた反応を楽しんでいるようだ。
引っこ抜かれた二の腕からまた血が溢れてきた。挿入された異物感は消えたが、激痛がレイラの身体に遅いかかってくる。悲鳴が漏れそうになるも眉を寄せてこらえると、近くに身体を寄せてきたグレンに対して睨みつけた。
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