14話
「……そのようなこと、すでに答えは得ているだろう。よもやワタシの話を聞いていなかったのか?」
座っているグレンの表情が呆れと蔑みに変わる。やれやれとため息をこれ見よがしにしてみせ、それから無駄話だったかといわんばかりに嘲笑した。今の質問でどうやら心底こちらを軽視している模様だ。
それでもレイラは問う。意味を知るまで、合点がいくまで、納得するまで。
「もちろん聞いていました、最後まできっちりと。だけど意味がわからないのです! 狙われる理由がはっきりとっ―――」
「興が削がれた。最初はやはりこちらの方がいいようだな?」
しかしグレンはばっさりと切り捨て、立ち上がってまた近づいてきた。
今度は逃げるほどの体力もない。腕は後ろに縛られたまま、打ち付けた上半身もズキズキと痛み、どこかで挫いたのか右足に違和感がある。痛い。身体中どこも痛い。
逃げたとしてもすぐに捕まるだろう。
だから大人しくじっと同じ場所に居続けた。まっすぐ前を向いて、負けじとグレンを睨みつけた。
グレンは目の前まで来て立ち止まるとおもむろに腰に装備していた剣を抜いた。抜刀した姿に恐怖を覚えて思わず目を背ける。
しかし―――それが良くなかったらしい。
グレンが次の行動に出た。レイラの髪を引っ張って立ち上がらせ同時に剣を逆手に持ち帰ると、切っ先を真っすぐ彼女の左の二の腕に突き立てたのだ。
異物感が身体を駆け巡る。そのあとに―――感じたこともないほどの激痛が一瞬で走った。
「っあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
どうしようもないほど痛くて痛くて仕方がない。我慢できずに悲鳴をこれでもかと上げた。
貫かれた二の腕のところから温かいモノが身体の熱とともに溢れ出る。筋肉を貫通し骨のすぐ横を通っているらしく、敏感なそこがジクジクと熱を帯びたように痛んだ。腕の血管のいくつかが途切れているようで、そこから血がどくどくと溢れてきている。
抑えていた吐き気がまた襲ってくる。悲鳴の声をグッと押さえつけ、出しそうになるそれは唇を噛み締めて無理矢理に飲み込んだ。おかげで口の中はすごいことになっているが、それよりも痛みのほうが勝ってそこまで辛くはない。
それだけが一縷の望みだった。
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