11話

 この男は一体何を言っているのだろうか?



 言葉の意味がわからず混乱する。

 けれどもゆっくり考察できる状態ではない。引っ張られた頭皮とぶつけた身体のあちこちが痛むせいで考えがまとまらないのだ。縛られているせいで腕を下敷きにするし、縄が食い込んでさらに痛い。

 あとがつきそうで嫌だなと思いながら動ける身体と足で上半身を起こした。それからまたグレンの方を見ようと顔を上げて―――まだ距離が近いことに気づき驚きながらも睨み付ける。

 自分はまだお前に屈していないぞと言わんばかりに。




 対するグレンはというと。

 起き上がってすぐ睨み付けてくるレイラに対し、

「……ハハ」

 心底楽しそうな表情をした。

 怯える、あるいは恐怖で泣き始めると勝手に思っていたグレン。

 それもそうだろう。女というものは恐怖や怒りに敏感で負の感情をさらけ出すのが早い。だからこの小娘も別の女と同様、泣くか震えるかするのだろうと思っていた。


 だがそのどちらでもなく、この自分を真っ直ぐに睨み付けてくるとは。

 さすが『』、こうも面白くさせてくれるとは思わなんだと感心する。それと同時にそうでないと殺しがいのないとでもいうかのように冷たい笑みを浮かべた。




 一通りすれば笑うのに満足したらしく、グレンはようやく段差の上の玉座に戻った。座り直し、また片方の肘を肘掛けにたててこちらを見やる。そして睨みつけてくるレイラにを見て、

「勿論今すぐに殺す、とは言っていない。この城に永遠と留置し、じわじわと至るところを壊しながら殺すつもりだ。そうでなくては楽しめないだろう?」

 ニタリと笑いながら言葉を続けた。



「あぁ……貴女の絶望する顔、恐怖に歪む顔をワタシにたくさん見せるがいい。その美しくも穢らわしい顔をぐちゃぐちゃにさせながらな。そしてワタシを貴女の悲鳴で楽しませるのだ」

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