4話

 ある程度の傷が治ってからその二日後のドミニクの葬式に、レイラたち二人は参列した。お別れの挨拶と街を離れることを報告するためだ。



 以前からこのままではよくないとディックとの話題には上っていたのだ。ずっとこのランデルに居続ければ、それだけ自分たちのことに関係のない人々を巻き込んでしまうと。

 最悪の場合、と。

 ―――そうなる前に旅立ちをしなければと。


 だがしかし。決意していざ実行するというときにこのような事態になるなど・・・誰が想像できたというのだろう。

 その前に行動すればと何度後悔したか計り知れない。


 だからこそ。これ以上被害を増やさないために・・・ランデルから、この穏やかで落ち着く日常から離れなければならなかった。




 準備は終わっている。荷物も消耗品も揃えた。あとは出発するだけ。

 まだ身体の調子はよろしくないが、スカイの背中に乗っていれば今よりは悪化しないことはわかっている。今はそれよりもこのランデルからはやく出ることだけを考えなければならない。焦りが体を急かした。


 自分自身が、隣りにいる幼馴染ディックみが。この先ここで動かなかったことを深く後悔する―――その前になんとしてでも。

 そういった決意を言葉にするため、ドミニクと最後の対話をしたのである。





           ✴ ✴ ✴ ✴ ✴






(……そうだった、大きな町に行こうって歩きながらディックとしてたっけ)

 頭の痛みと戦いながら、少しずつ少しずつこれまでの記憶を取り戻していく。


 ランデルの町を出たレイラとディックは、スカイを連れて王都へと続く街道を早足で進んだ。国の中心であれば少なくとも人混みに紛れて狙われにくくなるし、地方ではまだ出回っていない情報もたくさん仕入れることができる。また、傭兵組織ギルド本部に報告すれば一大事件として王族の耳にも入る。そういった意図を考えてのことだった。

 途中で日が落ちて危なくなったので街道沿いの宿場街で宿を取って宿泊して・・・そうやって徐々に記憶が蘇ってきたころに、ふとレイラは気づいた。



 泊まったあとのことがほとんど思い出せないことに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る