一章 再開には右ストレートがつきものらしい。
「……可愛くなあったなあー」
竣は、無意識にそう呟いていた。
「……な、……なっ……」
彼女はみるみるうちに顔を
そして、右手を強く握りしめると、芸術的な直線を描く右ストレートを放った。
「……いきなりなにいうのよ––––っ‼︎」
「––––っぐほおっ‼︎」
彩乃の繰り出した
この
「……あ、ごめん。おにーさんがいきなり変なこと言うから……」
鼻から
前言撤回。可憐な少女がいきなり右ストレートをみまうはずがない。
中身はあまり昔とかわっていないようで、竣は痛みとともに良く分からない
「おにーさんごめんね。大丈夫?」
彼女は申し訳なさそうな表情で、ポケットティッシュを差し出してくる。
「ああ、大丈夫だ」
ティシュを受け取ると、血を拭い、捻って鼻に押し込んだ。その見た目はかなり残念なものになっていただろう。
この時、竣が
「それより、
「だからすぐ近くだって言ったでしょ。ていうかおにーさん、私が早く来るとまずいことがあるみたいに聞こえるんだけど」
「い、いやそんなことないぞ」
「なんか怪しい」
「き、気のせいだろ。猫なんて見てないぞ」
「ねこ??」
彩乃はそれを聞いて頭にクエッションマークを浮かべる。
一瞬まずったか、と思ったが、無論それでわかるわけもなく、
「まあ、いいや。それよりもなんで、駅から家まで一本道なのに迷うのか不思議だよ」
「うっ、悪いな」
「そー思うなら、ちゃんと道覚えてね」
そう言って公園の出口に向かって歩き出す彩乃の後を、竣は追う。
こうして二人で一緒に歩くのはいつぶりだろうか、そう思うとなんだか楽しくなってくる。
「はいはい」
「本当にわかってるの?」
「分かってる、分かってる」
「むっ」
前を行く彩乃は、足を止めて、不機嫌そうな顔で振り返った。
それをみて、竣はまた右ストレートはごめんだと
「もー、私をなんだと思ってるのよ」
一言くれると、彩乃は再び歩き出した。
遠くで、うぐいすのまだ下手な歌が、風に乗って街に響いていた。
空の境界線 華京院 あおい @yuua1
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