ガーディアンズ・ストーリー

九の字

守護者

第1話 噂話

 リリリリリリリ♪

 目覚まし時計が僕の部屋に鳴り響く。現在午前6時30分、作り置きしておいた焼きそばを温め、パンを挟む。これが僕の朝食で、弁当だ。

 僕は都会からこの田舎の町、視守みもり町に一人引っ越してきた。そして町の学校である視守高等学校に入学した。ここに来た理由は至極簡単。僕がコミュ症で人の多いところが苦手だった。そして将来の夢がなかった。今まで憧れた職業どころか、憧れた架空の存在すらいなかった。いや、いたな。なんていう名前だったっけ?まぁそんなのどうでもいいや。今日は入学式だ。遅刻しないように登校しよう。こちらの電車は、乗り遅れてもすぐに来ない。


 入学式は一人貧血で倒れたくらいで何事もなく終わった。そして下校途中に、ちょっとした問題が起きた。

「どこ見て歩いてやがんだ!?てめぇ、あぁ!?」

「ご、めんなさい!ごめんなさい!!」

 見るからにガラの悪い生徒が、先輩と思われる生徒を殴ったり蹴ったりしてる。こういう奴はどこにでもいる。だから見なかったことにする。そんなときだった。

「何をしてるの!?やめなさいよ!」

 不意に後ろから声が聞こえた。見ると顔の整った女生徒が不良生徒を睨んでいる。

「あ!?んだてめぇは!!」

「それ以上暴力を振うのなら、先生に言うわ。」

「チッ!白けさせやがって…」

 そういうと不良生徒は去った。

「大丈夫ですか?」

 女生徒が殴られてた生徒を起こす。そして僕を睨んだ。…僕が何をしたっていうだ。気を取り直して駅に行こう。あ、電車行っちゃった。あんな奴らがいざこざを起こしてなければ間に合ってたのに。


 20分待ってようやく電車が来た。隣にはなぜか先ほど睨みつけてきた女生徒がいた。気まずい。早く離れよう…。

「知ってる?学校の1階と2階の間にある鏡の噂。」

「あ、それ今日先輩から聞いた~。怖いよねーw」

 同じ学校の女子高生たちの噂話がふと聞こえた。学校の鏡?そんな噂があるのか。僕は結構不可解なことが好きだから少し気になるな。電車に入りながらそんなことを考える。と、女子高生はヒソヒソと噂話を再開している。

「午前2時にその鏡に立つと、自分じゃない何かが写るんだってw。どう思うw?」

 マジか!そんなに情報を聞くと行きたくなってしまう!僕は借りてる部屋に一人。いつでも行ける。今日行こう。電車に揺られながら、僕は帰宅する。


 現在、午前1時40分。深夜では電車は走らない事を思い出し、走ってここまで来たからもうヘトヘトだ。それにしても田舎って暗くて静かなんだな。。すると僕に光が照らされる!

「はぁ、やっぱり来ちゃったんだ。」

「君は、つけて来たの?!」

 僕を照らしていたのは、昼間の下校まで一緒になってしまったあの女生徒だった。

「君じゃない。私は風谷かざたに 里音りおんってちゃんと名前があるわ。同じクラスなのに知らない?」

 心底から呆れたといった顔で言われた。クラスメイトだったのか。

「まぁそれはいいわ。あなたが噂話を興味深そうな目で見てたからもしやと来てみたら、居たからなんていうか・・・。」

 顔を俯いてなんかブツブツ言っている。成程、風谷さんも噂話を聞いていたのか。だけど、

「ひょっとして夜の学校が怖い?」

 風谷さんの肩が跳ね上がる。図星か。

「…いないのを確認して帰るつもりだったから。それに、上手く説明できないけど、なんか変なの。周りの空気?みたいのが。だから尚のこと怖いわ。」

「変な空気??…っ!誰か来る…!」

 後ろから光が照らされる。光は遠い。まだ気づかれてないはず…。風谷さんも息をひそめている。校門に隠れて様子を見よう・・・。

「…あれ?誰かの気配があったはずなのに・・・あれぇ???」

 女の子の声?彼女も噂を聞いて来たのか?

「コラッ!女の子がこんな時間に外を出歩いちゃ危ないでしょ!」

「キャッ!?え、人!?」

 おまいうなんだが。風谷さんが懐中電灯を照らしてくれたおかげで女の子の容姿が分かる。僕よりも歳は下だろう、そして控えめに言っても可愛い顔をしている。確かにこんな時間にこんなとこいたら不審者に狙われかねない。いや、この子なんでこんな時間に出歩けてる?それと今気が付いたけど、この子、左腕が・・・!

「えっと、ごめんなさい。人に会うのははじめてだったから驚いちゃった。私、琴早矢ことはや 蒼華あおか。お姉さんたちは?」

 ここでってなんだよ!コワッ!来るんじゃなかった!

「私は風谷里音よ。あなたも自己紹介する!」

「はぁ、僕のことなんてどうでもいいよ。それよりって言ってたけどさ、なんかあるのか?ここ。」

 明らかに風谷さんがキレてるが後だ。嫌な予感がする。

「え!?まさか知らないでここに着いたんですか!?」

 嫌な予感的中。風谷さんの顔も青ざめだした。

「…ここ、学校の前よね?」

「…そうといえばそうなりますけど。でも、里音お姉ちゃんたちの知ってる学校じゃないんです。ごめんなさい。少し危険ですが、学校にあるを使って帰ります。私から離れないでください。」

 なんだこの頼もしい少女は。

「さ、さぁ、早く出口へ行きましょ?ここがどこかわからない以上・・・」

「・・・っ!伏せてっ!!」

 僕らの目の前に轟音と共に、真っ黒い、化け物が現れた。こんな非現実的なことが…!

「…ここは私がなんとかしますから、里音お姉ちゃんたちは早く出口へ。」

「っ!!…大丈夫なんだね?」

「うん…。正直怖いけど。なんとかできるのは私だけだから。」

「これはっ…!?」

 蒼華から青白いオーラのようなものが噴出す。

「私を、私たちを…守って。イクツヒコネ!」

 青白いオーラがほとばしり、を召喚した。

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