現代病床雨月物語    秋山 雪舟(作)     

秋山 雪舟

第13話  「生戦(せいせん) その5 難病治療を開始する(後編)」  ~ウィリアム・テルの国の薬に救われる~  

入院17日目の血液検査の結果を最高にして、それ以降は血小板数が徐々に低下して入院27日目には、CRPは正常範囲でありますが血小板数が13万6000、白血球数1690、好中球数210となりました。再び血小板数・白血球数・好中球数ともに正常範囲より低くなってしまいました。

 今回の入院治療の目的である好中球減少症と血小板減少症の改善がかなり難しくなってしまいました。A医師からは、血小板数がこれ以上低下しても最低5万を維持できるようにしましょう。また好中球減少症の治療は難しい状況ですと言われました。

 この血液検査の結果により入院期間が3週間延長することになりました。またプレドニンの投与量を徐々に減らして行き新しいステロイド薬の投与を始めることになりました。

 入院34日目からはプレドニンは朝6錠のみになりました。そして昼食2時間半後に新しいステロイド薬の投与が始まりました。その薬は、ウィリアム・テル(ヴィルヘルム・テル)の国、スイスの製薬企業であるノバルティスが開発したレボレード(エルトロンドパグ)錠です。海外では日本よりも早く承認されていますが日本では厚生労働省が承認してまだ10年にもなっていません。この薬に希望を託すしかありません。ウィリアム・テルが息子の頭上のリンゴを射落とし悪代官を倒したように私の難病も退治してほしいと願いました。

 レボレード錠(12.5㎎)の投与前の血液検査の結果は、CRPは正常値。血小板数6万5000、白血球数2210、好中球数220になっていました。

 レボレード(12.5㎎)を毎日1錠服用した血液検査の結果は、最初は低くなりましたがそれ以降は徐々に数値が上がって行きました。私が退院する時には、CRPは正常値。血小板数9万5000、白血球数2060、好中球数240になっていました。私の入院は45日間で終わりました。

 A医師から退院1週間後に来院して下さいその時の血液検査の結果をもとに薬の量や通院の間隔等を考慮して行きましょうと言われました。

 退院して1ヶ月が経過した時の血液検査の結果は、CRPは正常値。血小板数22万6000、白血球数2560、好中球数1090になりました。レボレード錠の効果が現われ血小板数は正常値になりました。また白血球数・好中球数ともに低いとはいえ自己の最低数よりも改善はされています。「特発性血小板減少性紫斑病」の治療は成功しました。あとはなるべくこの薬の服用を少なく出来るようにしなければなりません。そして白血球と好中球の減少状態についてはこれからも粘り強く治療していきます。決してあきらめません。病気で苦しんでいる人達へ。気持ちだけは病気に負けないように日々がんばりましょう。私もがんばります。明日を信じて。

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