北朝鮮民主主義人民共和国が勝利していたかもしれない消費期限切れのシナリオ

水嶋 穂太郎

第一話

 結論から言ってしまおう。


 北朝鮮の勝利条件だった(過去形である)のは、米国に核兵器を使わせることである。


 現在の人類において、使ってはならない不文律ができあがってしまっている核兵器。

 その基となった、『核爆弾を投下して、あってはならない脅威を人類に提示した米国』と『皮肉にも投下されたことで、核兵器において絶対的な発言権を持った日本』。


 米国は世界の王を気取っている。

 とりあえずそれに乗っているという風潮の世界。

 比較的に平和だ。


 だが、米国が二度目の核戦争を起こしたら?

 信用の一切合切がなくなる。

 そこに北朝鮮の勝機があった。


 再度言っておく。

 北朝鮮の勝利条件は、米国に核兵器を使わせることだった。


 だが、具体的にすれば、どうされたらそうなるのか、互いにわからなかった。

 敗北のビジョンだけは明確化できていた米国の高官が、これを阻止する構えをとっていた。


 しかし米国の現大統領は、ドナルド・トランプ氏。

 非常に好戦的な性格であると、子どもでもわかる。

 そしてそれは、北朝鮮の最高指導者である金正恩氏も同様である。

 互いに通じる部分はあるのに、嫌う部分はとことんまで嫌っている。

 これが俗に言う同族嫌悪だろう。


 さて、具体的にどのようにして米国……つまり、ドナルド・トランプを激高させるかである。


 日本には悪いが、とりあえず大陸間弾道ミサイルに核弾頭を乗せて飛ばす。

 当然だが、核爆発が起こる。

 ただし落下地点は太平洋上で、生活圏に核物質が届かないものとする。

 米国は、自国に向けて核兵器が撃ち込まれて『失敗した』と誤認させる。

 実際にはわざと失敗するのである。


 あとはひたすら大陸間弾道ミサイルを、今度は米国の生活圏にぶっ放し続けるのだ。

 核弾頭を抜いて、だ。

 米国には、いつもの誇張表現放送で『正義の名の下に鉄槌がくだりつづけるであろう!』とでも言っておけばいい。

 要するに、大陸間弾道ミサイルをおとりに使うのである。

 核兵器どころか、火薬すら搭載しないでもいい。とにかく怪しげな兵器をひたすらに米国の生活圏にぶっ放しつづけるのだ。


 もし、仮に核弾頭が入っていたら?


 と思わせ続けるのがミソである。

 最初の核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイルを、生活圏外の太平洋に『あえて落とした』のはこのため。不安をあおるため。


 日本が出てくる気配がしない?

 安心しろ。


 日本はな……テロリズム先進国なんだから。

 

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