後編

「そーらはー、とーべないけどー」


ツインテールの彼女が歌っていたメロディーになんとなく歌詞を乗せる。

口ずさみながら舞台へと近づく。

周りのフレンズは驚いた様子で道を開ける。


「あ、あなたは…」


「ふふ、来ちゃいました」


「君は確かジェンツー…どうしてここに?」


「呼んだのはそっちじゃないですか!まったく…」


そんなやりとりを見ていた周りのフレンズのうち、先ほどガヤを飛ばしていた1人が声を上げる。


「ジェンツーさん!何やってるんですか?まさかこの人達の言う通り…」


そこまで言われて私は振り向いて笑顔で言う。


「私、アイドルやります!それに今の私はもうジェンツーではありません。ですよね?ロイヤルさん」


言われてロイヤルはふと我に帰って応える


「ほ、本当に…やってくれるの?」


「言ってるじゃないですかー!で、私の名前は?」


「へ?」


「ただの何も無い私はもう嫌なんです。だから、私に新しい名前をください」


私は無垢だ。

何も無い空っぽだ。まっさらだ。

本当に空虚でつまらない存在。


そんな私にも色があることに気が付いた。

白。

純粋の色。

何色にでもなれる色。

そしてここにピンクとオレンジの絵の具。


「じゃあ…あなたはジェーン!ジェンツーペンギンのジェーン!」


「はい!!!一生懸命頑張ります!!」


私は何色になれるのだろうか。

空虚な明日が少しだけ楽しみに感じた。

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ペンギンの憧憬〜無垢なる器〜 yAchi @yAchi_ainamikoi

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