木葉を探して
第12話
木葉と最後に会ってから、もう半月が過ぎようとしていた。たかが半月。だけど出会ってから今まで、これだけの間あわないことは無かった。
今日も私は木葉を探し、初めて出会った社のある山へときていた。社の奥にある森、そこが木葉の住処だ。
本当は学校なんて休んで一日中探していたかったし、日が暮れても帰りたくは無かった。だけどそんな事が出来るはずもない。
それでも、例え何をしていても、頭には常に木葉のことが浮かんでいた。学校の授業なんて聞いていなかったし、友達からの遊びの誘いも全て断り、ただひたすらに木葉を探した。
なのに、どこを探しても見つけられないでいる。
姿が見えないというのなら、前はこの山で何度も妖怪の姿を目にしていて、社の奥の森へは一人で行くのを控えていたくらいだ。だけど今は数える程度、それも輪郭が薄くなっていたりして、ぼんやりとしか見えていない。
私の中にある妖怪を見る力が弱まっているんだと、嫌でも思い知らされる。
こんな状態で仮に木葉が近くにいたとしても、果たしてちゃんと見つけられるのだろうか。いや、これだけ探して見つからないのは、既に自分が木葉の姿を分からなくなっているからじゃないだろうか。そんな不安が込み上げてきて、今にもくじけそうになる。
「木葉…」
気が付くと、もう何度目か分からないその名をまた呼びながら、右手にはめた腕輪へと目をやっていた。
まだ小学生だった頃に木葉からもらった、木のツタで作った妖怪除けの腕輪、正確にはそのリニューアル版だ。
ツタで出来た腕輪が長い間もつはずも無く、数カ月で擦り切れて使えなくなっていった。その度に木葉は新しいのを作り、それもダサいと言った私の意見を受け、新しく作るたびにあれこれ考えながらデザインを変えていた。おかげ初代はあんなにみすぼらしかった腕輪も、今は葉っぱや木の実で飾り付けられていて、それなりに見栄えのするものになっている。
「どう、これならダサくないだろ」
そう得意げに言う木葉の姿を思い出すとなんだか可笑しくて、その反面、余計に胸が苦しくなる。
一目でいいから会いたい。それができないならせめて声を聞きたい。あんなのが木葉との最後の別れだなんて、そんなの絶対に嫌だった。
ふと、ガサリと辺りの草をかき分ける音がした。近くに誰かいる。思わず顔を上げ、音のした方を見る。
「やあ、やっと気づいてくれたみたいだね」
私が目を向けた瞬間、その人は言った。紺色の着物を着た、若い風貌の男の人だった。一瞬、木葉かもしれないと思った私は、その姿を見るなり肩を落とす。
「何だかガッカリさせたみたいで悪いね。だけど、僕は君に話があるんだ。いいかな?」
「話?」
突然かけられた思いがけない言葉に警戒心が働く。いや、警戒ならそれ以前からするべきなのかもしれない。なぜならこの男は人間じゃなかった。他の妖怪たちと同じようにその体は薄っすらと透き通って見え、人の形をした頭の上には二本の鹿のような角が備わっていた。
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