夢の中の夢
のりまきさん
第1話 夢の中の夢で。
僕はいつも、夢の中で夢を見る。
現実では…現実の話はやめようか。
夢の中の世界はいつも幸せだ。好きな人がいて、お金もあって、人気者で。
現実とは大違い。
今日もまた、彼女とデートに向かう。
遅かったじゃん!
彼女がそう僕に怒りながら言った。
ごめん、ごめん。なんて言ってみても、彼女はプンプンしながら僕にツンツンしてきた。
僕の彼女は可愛い。可愛い。可愛い。
3回も言ってしまった。それくらい僕は彼女が好きだ。
僕は彼女を失いたくないって思った。
聞いてるの!?
おっと危ない。彼女に夢中になりすぎて話を聞いてなかった。
ごめんって言おうとした時…
僕の目の前をなにかが通った。
ドンッ!
突然の出来事に僕は何も分からなかった。
え?
彼女の顔が、体が、言葉が、そこにはなかった。
…
はっ!
目が覚めた。何が起きたか分からなかった。
夢の世界は幸せなはず、幸せな…
じゃああれはなんだったのだろうか。
死んだ…?
なんて考えが頭をよぎったが信じたくはなかった。幸せがなくなるはずない。だって夢なのだから。
夢の世界に来ると、そこには彼女がいなかった。死体すらなかった。夢は不都合なことを消してしまう幸せな場所。僕にはもう彼女を思い出すことはできない。涙を流そうにも涙は出ない。幸せな場所に悲しみなんていらないから。幸せな悲しみを感じながら僕は夢の中で寝た。
その夢もまた幸せな場所。
そこにまた思い出せなかった彼女はいた。
遅かったじゃん!
彼女はそう言った。
ごめん、ごめん。なんて謝っても彼女は許してくれなかった。
それと同時に僕はもう2度とこの幸せを失くしたくないと強く思った。
たとえこの幸せが、偽物の偽物でも。
夢の中の夢 のりまきさん @Norimaki-Gohan
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