水霊観察

安良巻祐介

 

 水霊を捕まえると言って雨上がりの街に出て行ったゼミ生は、色々な建物の窪みに溜まった雨水を取得調査し続けたあげく、水たまりに映り込んでいた子どもの影をアンプルの中に捕まえてしまい、持ち帰ったゼミの水槽に入れて奇形の蝦のようになったそれを飼育・観察しながら残りの学生生活を過ごした。

 卒業の日、所定の集合場所に来ない彼を呼びにゼミ仲間が部屋へ行くと、雪平鍋を出して何かを煮ようとしている格好のまま、目鼻口から水を溢れさせて死んでいた。

 以来、そのゼミでは何度水槽を変えても、小さな子供と痩せた大人の影が水の中を狂ったように追いかけ合うところが目撃されるようになったという。

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水霊観察 安良巻祐介 @aramaki88

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