第4話ダンジョンの奥へ
ダンジョン地下5階。そこにはゲームで言えばボス部屋の前にあるような扉があった。
少し緊張する。今まで俺は安全策をとってきた。階層ごとに充分な戦闘をして経験を積んできたし、ダンジョンから出た後も訓練に時間を取ってきたと自負している。
だけど、ボス部屋となると話が変わってくる気がする。
ゲームとかでもボスは格が違うのは当たり前の事だったはずだ。
ゲームだったら別にそれでも良い。だって俺はモニターに座ってコントローラー握ってるだけなんだから。
でも、今は現実だ。攻撃されるのは怖いし、されたら痛い。
つまりはあんまり行きたくない。ぶっちゃけ帰りたい。でもさ、これで帰ると多分ニーナが不機嫌になるんだ。今も若干ニーナさん不機嫌だからね。
「にゃーん」
「わかってますよ。入るって」
正直に言うとニーナが不機嫌になろうと死ぬ訳じゃないが、唯一の話し相手のニーナに嫌われるのは嫌だ。タヌキと柴犬? あいつ等は商売人と客の関係尾でしかないから。あんまり好きじゃないです。
重厚な扉に手を掛けると思ったより簡単に扉は開いていく。
扉の先には何時も戦っているゴブリンより大柄なゴブリンが1匹立っていた。
鎧を着て大ナタを肩に担ぎながらこちらを睨み付けている。
「あぁ、強そうだなぁ」
「にゃーん」
あれはゴブリンじゃないな。多分上位種ってやつだろう。
強いんだろうなぁ。俺も強くはなってるけど怖いよなぁ。ボス部屋へと一歩踏み出すとゴブリンがこちらに向かって駆けだしてきた。
「スリップ!」
急いでスリップのスキルを使う。ちょっと不安だったがボスモンスターにもスリップは効いてくれた。もしかしたらボスには無効の可能性があると思っていたので一安心だ。しかしスリップの使用回数は1日5回までなので考えて使っていかないといけない。
転んだボスゴブリンが起き上がる前にニーナがボスゴブリンに襲い掛かる。
ボスゴブリンの顔に1撃2撃、そして喉に噛みついた。ボスゴブリンから多量の血が溢れ出る。最早ボスゴブリンは瀕死の状態だ。
「ナーン」
ニーナがのんきな声を上げる。
なんか、あれだよね。俺の緊張を返せってね……
ボスゴブリンの足はガクガクと震え、顔と喉からは紫色の血がボタボタと流れている。口からはヒュー、ヒューと息がかすれ漏れていた。
「うん、これは楽勝ですわ」
俺は包丁をボスゴブリンに向けて振り下ろした。
・・・
ボスゴブリンを倒した後、奥の方に通路が出現した。
なんか壁だった場所がゴゴゴーっと開いてくのは結構ワクワクするよね。
ボスを倒したばかりだけど全然疲れてないので進むことにしよう。
ボスゴブリンからドロップした大ナタを担ぎながら奥へと進む。
「ここがダンジョンの最奥か?」
案外呆気ない感じだな。地下100階とか行くもんだと思ってたけど。
行き止まりには宝箱が設置されていて、壁には垂れ幕で【ダンジョンクリアおめでとう!】と書かれていた。
「宝箱って罠がありそうで怖いんだけどな」
「にゃーん」
恐る恐る開けた宝箱の中身には本が入っている。
中身を読んでみるとそこには衝撃の事実が書かれていた。
〇●〇
まずはダンジョンクリアおめでとう! みんなの神様だよ。
退屈はなくなったかな? これで終わりじゃないから安心してね。
このダンジョンで戦い方の基礎は充分に学べたと思う。
キミの願いは退屈を失くすことだったので、ちょっと神様考えてみたんだよね。普通はこの世界に来た人が用意されたダンジョンをクリアしたら願い事を叶えた上で転生なりなんなりの手続きに移るんだけど、ちょっと工夫してみたよ。
キミの部屋にあるダンジョンはクリアする度に難易度が上がる進化型のダンジョンにしてみたんだ。クリアする度にご褒美もあるんだ。宝箱の裏に1回だけ回せるガチャガチャがあるからやってみるといいよ。スキルやステータスが上がる薬が手に入るからね。
そうそう、玄関から行ける洞窟は探索してみたかな? あそこには別の探索者の部屋もあるから探してみるのも良いかもしれないね。
因みに別の探索者の部屋にあるダンジョンをクリアしても願いが叶うのはその部屋の探索者だから勘違いしないようにようにね。もちろんご褒美は出るけどさ。
じゃあ体に気を付けて。みんなの神様より
〇●〇
………うん、予想外だね。
何時の間にか宝箱の後ろにガチャが出現していた。
「うん、取り合えず回してみるか」
ガチャガチャと音をたてた後に出てきたカプセルには梅干しが入っていた。
梅干しが入っている袋には【スピードアップの実】って書かれてる。
「これは当たりなのかね?」
「にゃーん」
梅干しを口に放り込んで首をかしげる。
まぁ、別に良いか。まだまだ退屈はしなさそうだし、どこまで行けるか頑張ってみるか!
願ったらこうなった トカゲ @iguana
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