第3話強くなった気がしないでもない


 ネズミを殺した後、急に体が軽くなった気がした。

 もしかしたらゲームの様にレベルの概念があるのかもしれない。スキルとかもあるくらいだから、疑いようがないけどさ。

 ゲームみたいにステータスが見れる訳じゃないので本当にレベルがあるのかは分からないけど。


 ネズミは倒した後、煙と共に10枚の硬貨と毛皮へと変化した。こういうの良いよね、自分で解体しなくて良いって大きいと思う。

 

 「これどうするかな……」


 硬貨はポケットに入れられるが、毛皮が邪魔だ。面倒だけど、まだダンジョンに入ったばかりだし鞄でも取ってくるか。

 ニーナはダンジョンの奥に行きたそうにこちらを見上げているけれど、今日はこれで引き上げる事にしよう。


 「今日はこれで帰ろう。戻るよ、ニーナ」

 「にゃー」


 ニーナは不機嫌そうに鳴いたが渋々と言った感じで部屋へと戻っていった。

 確か道具屋にペットフードがあった気がする。10zで買えるようなら買ってやる事にしようかな。


・・・


 さて、時間は進んで最初のダンジョン探索から1か月が経った。

 現在はダンジョンの方も慣れて地下4階まで進んでいる。4階まで進むとネズミ以外にもスライムや犬、ゴブリンっぽいのが出てくるようになった。

 最初こそ戸惑ってニーナ頼りのダンジョン探索だったけど、今は俺もそこそこ戦えるようになってきた。何だかんだ充実した毎日を送っていると思う。

 

 ちなみに食料とか水には今の所困っていない。

 俺の部屋は毎日この世界に来た時の状態に戻る仕様らしい。冷蔵庫の中にある食料に限って言えば常に補充されるという事だ。

 まぁ、冷蔵庫の中にある物は変化しないわけで、そればっか食べてたから飽きて最近は食べてないけども。


 最近使っている武器は包丁だ。少し前までゴブリンが落とした片手剣を使っていたんだけど錆びてボロボロだったし、そこそこ重くて疲れるから包丁に変更している。翌日には状態が元に戻るから研ぐ必要もないのも良いよね。


 そんなこんなで今の俺は両手に包丁を持った軽戦士をやっている。

 未だにスキルもレベルも分からないままだけど、身体能力は大体3~4倍くらいになっていると思う。簡単に鉄パイプを折り曲げたり握りつぶしたりできた時は人間を超えた気分がして高揚したものだ。

 俺も強くなってきたしそろそろスキルでも買ってみようかな。

 今まで買った物なんて俺とニーナのご飯くらいだからお金も溜まってるんだよね。 

 

 ・・・


 道具屋に入ってスキルの棚を見てみると色々なスキルが並んでいた。

 雑誌から巻物まで色々な種類のスキル書がある。読めばスキルが魂に刻まれるらしいんだが、どんな感じなんだろうね?


 「これとか良さそう」


 スキル書は高いので俺が買えるものは少ない。あっても初級スキルか使えないものばかりだろう。その中で使えそうな物が1つあった。


 【スリップ】 対象を転ばせる


 逃げるのにもスキを作るのにも使える。

 これなら長く使えれそうだし値段も手頃、良いんじゃないかな?


 「これください」

 「まいど。ここで読んでくか? 使い終わったスキル書を返してくれるんやったら3割引きやで」

 「じゃあそれで」


 タヌキが椅子を出してくれたのでそこに座ってスキル書を開く。

 小冊子くらいの厚さのスキル書にはびっしりと文字が書かれていた。知らない文字で全く読めそうもない。


 「読めないんだけど」

 「問題ないやろ」


 タヌキがそう言った瞬間、スキル書に書かれた文字が動き始めた。ページから文字が浮き上がり俺に向かってくる。正直気持ち悪い。


 「うわっ、こわぁ……」

 「大丈夫大丈夫」


 文字は俺の皮膚に張り付いていく。瞬間、情報が頭に流れ込んできた。

 いや、スキル覚えるのって、こんな感じなの? なんか頭を造り変えられてるみたいで気持ち悪いんですけど!


 結果を言えばスキルは使えるようになった。

 タヌキに試したので間違いない。文句を言われたがこっちだって文字に襲われると言う恐怖体験させられたんだし、これくらい良いだろう。


  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る